表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/63

今後のことを話し合う

 武器のテスト以来の訪問であった。

 ネオ・ファンタジアの本社へ入り、冒険者カードを見せると事務員に2階の会議室へと通された。

 円卓の長机。整然と並ぶオフィスチェア。

 普段なら落ち着いた空間のはずなのに、胸の奥がざわついて仕方がない。

 しばらくして、朝日と橘が入室した。

 朝日は影山の右隣、橘は左斜め前へ静かに腰を下ろす。


「昨日の夜、影山さんの住まいが晒されてしまいました」


 橘が差し出した書類。

 印刷されたSNSのスクリーンショットには、影山がアパートの玄関へ入ろうとする姿が、鮮明に写っていた。

 背筋に、冷たいものが流れ落ちる。


「そんな……」


 声が震えた。


「現在開示請求など、対応のほどを急速に進めております。掲示板なども怪しい書き込みがあり、出来るだけ早く事態が収束するように、弊社が動いていきます」


「はい……」


 朝日が、椅子ごと寄りそうな勢いで書類をのぞき込む。


「リア凸されたって、本当?」


「……うん。しかも未成年の女の子。朝、いきなり来た」


「ひっ……こ、こわ……」


 朝日の顔が青ざめる。


「しばらく、あの部屋には帰れないや……」


「え? 帰るところが、ない?」


「そうなるね……」


 朝日の脳内で、妄想が弾けた。


 ~朝日の妄想タイム~


 影山が顎クイで朝日を引き寄せる。


『っ、か、影山さん、なにを……?』


『今日、お前の部屋に泊めろよ』


『え!? そ、そんなの、ダメだよ……だって私達、まだ……』


『お前は、俺の物だ』


 ~朝日の妄想タイム終了~


「ぼわああああああああああああ!!!」


(今日も推しが生きていてくれてありがとうございます~~~~~~~~!!!)


 朝日は奇声を上げ、ロックギタリストのように頭を振りまくった。

 もうすっかり、影山が推しになっているようだ。


「え、どうしたの朝日ちゃん……」


 影山はドン引きしつつ、頭上に?マークを浮かべる。

 橘は完全スルーで話を続けた。


「さて。今後のことですが」


「あ、はい」


(というか、橘さんってなんでも対応するんだな……営業って言ってなかったっけ)


「弊社所有のタワーマンションに、しばらく滞在していただくのはいかがでしょうか」


「タワマン……?」


 影山の声がわずかに裏返る。

 橘は静かに頷いた。


「正確には社宅ではありませんが、ネオ・ファンタジアが所有する高層マンションです。専属のインテリアコーディネーターが整えた、家具つきのゲストルームがいくつか空いています」


「私、ここに住んでるよ~。冒険者やオペレーターの人も何人かいるし、安心だよ!」


 朝日が胸を張る。

 その笑顔に、影山の胸の緊張が少しだけほどけた。


「……おいくら、なんですか」


 稼ぎが良くなり、5億振り込まれたとはいえ、元は残業代も出ない安月給の社畜。

 庶民が身に染みており、ついそんなことを聞いた。


「特別に無料で貸し出します」


「む、無料……?」


「ただし3ヶ月限定です。その間に次の住まいを探してください。もちろん、お気に召したら購入していただいても構いません」


「わかりました」


 影山は深く息を吐いた。

 胸の奥にあった不安が、少しずつ溶けていく。


(タワーマンションか……俺には合わない気もするけど)


 ほんの数ヶ月前まで、残業代も出ない社畜だった自分が、一流企業のタワマンに住む――。

 現実感がない。


(……まあ、長い旅行くらいに考えるか)


 影山はそう自分に言い聞かせた。

 だが胸の奥では、ほんの少しだけ期待が膨らんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ