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未成年にリア凸される

 ダンジョンへ行こうと思い、支度を整える。

 その途中、チャイムが鳴った。


「……? こんな朝早くに、誰だろう」


 念のためチェーンロックをかけて、扉を開ける。


「あ……おはようございます、二キさん」


 扉の前にいたのは、若い……というか、幼い女の子であった。

 140後半ほどの身長。黒髪ロング。

 少なくとも、未成年の雰囲気を感じる。


「どなたですか」


「私、二キさんのファンです。どうしても、会いたくて」


 ぞっとした。

 いわゆるリア凸というものだ。

 そして聞いてもいないのに、女の子は喋り続ける。


「家に、帰りたくなくて。中、入れてくれますか……?」


 ヤバい。

 そう思って、本能的なもので扉を閉めようと考えた。

 しかし女の子は、扉の端に両手をちょんと置いている。

 これでは閉められない。


「いいですよね?」


「よ、よくないよ。しかも君、子供じゃないか?」


「16歳です」


(完全にアウトだ)


 家に帰りたくないというこの子の状況は、なにかあるのかもしれない。

 が、影山が対応できることではない。

 というか、対応したら犯罪になる。


「入れるのは無理だよ。警察とか、児童相談所へ連絡してくれ」


「私、二キさんのところがいい……一緒にいたい……」


「無理だって」


「ねえ、いいでしょ? 2人きりになろ?  どうして開けてくれないの? ドアガードなんて外して? こんなにも愛しているの。寂しいの。居場所がないの。二キさんの温もりがほしいの。二キさんがいいの。二キさんじゃないとダメなの。私、ダメなの」


 完全に目がすわっていた。

 深い、深い闇を感じる。

 まるで悪魔が、手招きしているかのよう。


(どうすればいいんだ!)


 影山が困惑していた、その時である。


「――株式会社ネオ・ファンタジアの、橘 遠矢と申します。失礼ですが、お嬢さん。リア凸はいけませんぞ」


 橘が現れた。

 そして影山は、さらにぞっとした。

 女の子が豹変ひょうへんし、ギロリと橘を睨んだからだ。

 先ほどまでの、媚びた甘い表情とは違う。

 まるで悪魔のような鋭い表情である。


(こここ、怖い!)


 影山がガタガタと震える。

 トレントとの戦いで死にかけていたが、それと比べ物にならないほど、恐怖を感じていた。


「……おじさんこそ、ここへ来てるじゃん」


「今後のお仕事について、話があるのです。これは“業務”ですよ」


「うざっ……マジ老害」


「お嬢さんは、違いますよね。SNSで晒された彼の住所を元に、ここへやってきた。そうですね?」


「だったらなに?」


「リア凸は住居侵入罪、迷惑防止条例違反などに該当する行為です。我々は彼をサポートする立場として、あなたを民事・刑事上の責任を問いますが、よろしいですか?」


「……」


 罪だの、条例違反だのという言葉を重ねられ、少女は手を引く。

 そしてちらりとこちらを見た。


「またね、二キさん。大好きです」


 そう言って、アパートの階段を降りていった。

 影山は混乱した状態だが、橘に礼を言う。


「ありがとうございます……助かりました」


「いえ。急な訪問で、申し訳ございません。ですが……この様子ですと、やはり緊急事態なので、準備が終わりましたら事務所まで来ていただけるでしょうか?」


「事務所?」


「ええ。配信の方も、中止でお願いします」


「わ、わかりました。準備します」


「はい。お待ちしております」


 まだ住所が晒されていることを知らない影山は、部屋に戻って出かける準備を再開した。

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― 新着の感想 ―
まあ、企業なら手の一つや二つ打つよな。それが分からんからボケ上司なんだろーけど
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