カタカタカタカタカタカタ
疲れが押し寄せ、ダメージもあって、各々硬い床に座って手当てをする。
コメント欄は修羅場を乗り切ったということもあり、勢いよく流れていった。
『ギリギリだったあああああ』
『ヒヤヒヤしたぜ……』
『ニキ様大丈夫?』
『サボテンの執念エグかったな』
『やっぱ隠しルート危ないな』
『一歩間違えたら欠員出てたぞ……』
『切り抜きどころが多すぎる』
『お姫様だっこてぇてぇ』
『ユーマパーティーも、オペチームもみんな頑張った! すごい! 2000円』
『最高のチームだぜ! 700円』
『ユーマパーティーを応援します! 10000円』
ユーマが軽く右手を上げた。
「お、スパチャサンキュー。けど、今は休ませてくれ……さすがに、キツかったぜ」
経験値ボーナスや全員へのスキル追加など、リターンはあったが、やはりリスクも大きい。
ボスやモンスターとの戦闘自体は、戦力と釣り合っていたが、そこに壮絶なダンジョンギミックが加わって、ギリギリの戦いへ持ち込まれた。
「朝日ちゃん、今回もお疲れ様」
影山が朝日を労う。
「うん! ニキさんもお疲れ様。今回は、私もすっごいヘトヘト……」
「そうだろうね。オペレーター負担が高いダンジョンだった」
ダンジョン解析、ドローン操作、オペレーションなどとトゲトラップのせいでタスクが多かっただろう。
トゲで撃ち落とされたドローンがない辺りに、ネオファンオペレーターチームの優秀さが出ている。
目立たぬ裏方業務だが、探索者へ大きく貢献する必要なチームであることを、影山は改めて実感した。
「さて、と。リディアちゃん、大丈夫か?」
ユーマが立ち上がり、自身へ回復魔法を放つリディアへ話しかける。
右足はだいぶ良くなり、血は止まり、腫れが少しずつ小さくなっていた。
「はい。痺れもとれました」
「そっか。先生はどうだ?」
マモルは右腕を軽く振る。
「ああ。すっかり自然回復だ、痛みもない。HP自動回復は便利だね」
「了解。ま、2人共念のため、病院へは行った方がいいだろうな。明日は配信、休むとしようぜ」
異論はなく、3人はユーマの提案に頷いた。
影山は自身のレベルアップをメニューで確認しながら、よし、と小さくガッツポーズをとる。
(今日一日だけで、レベルが5も上がった。危なかった場面も多かったけど、ユーマ達とならドンドン前へ進める気がする)
パーティー戦での手応えを、改めて感じた。
☆
明日は休みということで、ユーマは雑談配信の枠を作った。
机の上には缶ビール3本、皿の上に乗せた一口サイズのカルパス、チーズ風味のスナック菓子が置かれていた。
「おっす~。今日は打ち上げだぜ」
『おっすおっす』
『缶ビール3本……』
『ユーマってアル中?』
『こら、飲み過ぎないの』
『栄養あるものを食べなさい』
『野菜食べよう』
『いつも〇verって言ってたし、わりとガチで心配』
「初手からお母さんか、お前ら! 大丈夫だっての、酒は配信が控えている日は飲んでないんだからよ」
ユーマはそう言いながら、カルパスを口の中に放り込む。
肉の旨味とたっぷりの肉汁が広がる。プシュっと開けた缶ビールを飲み、麦のコクでゴクリとカルパスを流し込み、最高の余韻とのどごしに浸った。
「く~。最高だぜ」
『美味そう』
『あー! いけません!』
『幸せの瞬間』
ユーマ大好き丸『ユーマ、お疲れ様! 今日も大変だったね。すごくかっこよかったよ! 大好き~~~~~!(*´з`) 50000円』
「お、大好き丸さん。いつもサンキューな。お金大丈夫か? すげーありがてーし、励みになるけどさ。無理はすんなよ。あと、俺も大好きだぜ!」
『ガチ恋勢である』
『ナイスパ』
『ナイスパ!!』
『ファンの鑑!』
『珍しいよね。色々あって、ユーマはガチ恋ほぼ消滅したのに』
『復帰前からいた気がする、ユーマ大好き丸ってやつ』
『名前www マジで好きなんやろうな』
『リディアにゃんのこと、どう思っているんだろ』
『ワンチャン、リディアにゃん本人説』
『お姫様だっこのとこ、絶対に切り抜かれるゾ』
『ていうかユーマがそこらへんどうなん?』
『それは野暮よ』
『カップリングはマナー違反』
『パーティー内恋愛は、崩壊の序章だからな……』
『男女はこれだからね』
『だから、女いらねーんだよ。男だけで固めればいい』
『でも、気になるじゃん』
『リディアのことどう思っている?』
「ビールうめ~」
ユーマは恋愛関連のコメントは、あまり答えようとしなかった。
なぜかというのは、男女関連のコメントを見てもらうと、よくわかる。
この手の話題はあまり、良い流れにならないからだ。
触れるとするなら、付き合っているとか、結婚するとか、そういう結論が出た時がベストだろう。
☆
同時刻。リディアはユーマの雑談配信をリアルタイムで視聴していた。
「……」
クールな無表情で、じっとモニターを見ている。
カタカタカタカタカタカタカタ。
ものすごい勢いでタイピングし、コメントを打った。
ユーマ大好き丸『ビールおいしそ~!(*´Д`)』
ユーマ大好き丸『今日のユーマ、酔うの早いよ~(笑)』
ユーマ大好き丸『お疲れ様~! 雑談配信待っているよ~(*^^*)また会おうね!』
「……」
ユーマ大好き丸というリスナーとして参加したリディアは、最後までユーマの雑談配信を視聴していた。




