トラップをかいくぐり、ダンジョンを脱出せよ
地震は収まるも、告げられたのは間違いなく最悪な報せだ。
「んなっ!? おいおい、マジかよ!」
ユーマが驚いた声を上げた後――ボスフロアのトゲが、さっそくグラグラし始め、大量に飛んでいく。
真っ直ぐに速く飛ぶトゲ、やや遅めだがホーミング(※目標へ向けて自動追尾)して曲がるトゲと、2種類同時だ。
影山の時と違って、事前にトラップを確認することができない。
全てぶっつけ本番で、対処していくしかないのだ。
幸いなのは、今まで見てきたトゲトラップの中では、もっとも速度が遅いところ。
しかしいかんせん、数が圧倒的に多い。
また、ホーミングするトゲがあるせいで、安地はない状態だ。
「ここを出るしかない」
影山の言葉に、ユーマはうなずいた。
「そうだな。でも、みんな焦るなよ! 冷静に周りを見るんだ。進む速度も、4人で合わせながら、出来るだけ散らばるな!」
4人が飛来するトゲを回避しながら、進んでいく。
真っ直ぐに飛ぶトゲの軌道に注意しつつ、ホーミングするトゲへ対処するのは、高い集中力を要求された。
そうしてボスフロアを出て、通路へ。
そこも変わらずトゲが飛来しており、4人は注意しながら脱出ルートを辿る。
しかし――そんな彼らの進行方向へ、2体のハリネズミモンスターが現れた。
「キュウ♥」
来ちゃった♥ みたいな鳴き声を上げ、影山達の行く手を阻む。
腹の立つことに、飛来するトゲをちゃんと回避していた。
「くそ、お前らの相手なんかしてられるかよ!」
ユーマが声を上げるも、ハリネズミは体を丸める。
あの状態になれば、高い機動力でこちらへ接近してくる。
逃げるのは難しいだろう。
それにここでルートを変えれば、遠回りをすることになる。
この脱出劇は、出来るだけ長引かせたくないところだ。
「俺が前に出よう。上手くスタンさせてみせるさ」
マモルが盾を手に、3人より前へと出る。
ハリネズミが同時に、特攻してきた。
向こうもトゲをかいくぐりながらの戦闘だからか、立ち回りが雑だ。
「――スタンシールド!」
「「キュウ!?」」
ハリネズミの体に電撃が走り、上手く動かなくなる。
マモルは盾1体を押し出し、真っ直ぐ飛ぶトゲに巻き込んだ。
1体はトゲによって消滅。
「撃ちます」
そしてもう1体は、影山が透視スキルを起動し、射撃でしとめた。
『よし!』
『この状態で戦闘とかクソすぎる』
「ぐっ!?」
無事に戦闘終了かと思いきや、ここでマモルがトゲに命中した。
土壇場で盾をかざし、体に刺さってはいないものの、その衝撃で右腕を痛めた様子だ。
マモルは盾を左手で持ち、右腕を真っ直ぐにしたまま、顔をしかめた。
リディアが魔法を詠唱する。
「マモルさん!? すぐ手当を……」
だが、リディアの元へすぐにホーミング型のトゲが飛来する。
「ひゃあ!?」
詠唱で集中が途切れたため、間一髪の回避であった。
ユーマは苦渋の決断を迫られた。
「マモル先生! 回復なしでいけるか!? この状況で悠長に手当てしてたら、二次災害が起きる!」
「ああ、なにも問題ない。おそらく、右腕の骨にちょいとヒビが入っただけだよ」
「なら軽傷だな!」
「そういうことだ。飲むよりは効果が薄いが、ポーションをかける応急処置で対応する」
「HP自動回復もあるしな!」
軽口を交わしながら、4人はダンジョンを進む。
最短ルートとはいえ、トゲを回避しながらなので、逃亡劇は1時間にも渡った。
幸いにも、戦闘は先ほどの1回のみ。
しかし4人は体力的にも、精神的にも追い込まれていった。
最後は真っ直ぐに長い通路をひたすら進む。
「ここを乗り切れば、出口に繋がる階段です! あそこまでいけば、トラップはありません! もうひと踏ん張りです!」
朝日が解析結果を告げ、鼓舞していく。
「あと少しだ」
影山が言うと、残りの3人が頷いた。
通路を進み、階段まであと100メートルと迫った時である。
通路の角に魔法陣が展開され――あの陽気な声が、通路に響き渡った。
「FOOOOOOOOOOOOO♪」
「おいおい、なんかボスが来たぞ!?」
ユーマが大声を上げる。
慌てて朝日が解析した。
「先ほどの個体よりも戦闘力は下がっていますが、それでも強力な魔力反応があります!」
ハイパーブーストを使い、影山が最初に階段までたどり着く。
そこからガンブレードを構え、サボテンを狙った。
「……当たってくれ」
しかし回避力の高いサボテンは、そう簡単に当たってはくれなかった。
おちょくるような動きで、トゲも銃弾も回避し、影山達へ向かってくる。
「YO♪ YOOOOOOOOOO♪」
サボテンの陽気な声が、徐々に迫ってきた。
影山の攻撃によってある程度の足止めにはなっているが、あくまでも進捗を遅らせているだけだ。
体力が削られている状態のパーティー。
トゲの頻度はここぞとばかりに増え、逃亡はそうスムーズではない。
コメント欄も緊迫としていた。
『ヤバいって』
『もうみんな戦えないよ』
『ニキ、仕留めるんだ』
「今、やってます」
「ニキさん、伏せて!」
「っ、あぶなっ!」
朝日の切迫としたアナウンスで、慌てて頭を伏せる。
階段からは上半身が出ている状態なので、トゲは飛んでくる。
中に入れば安地だが、そうすれば射線が塞がれてしまう。
「ううっ!」
そしてこのタイミングで、リディアがトゲに命中した。
しかも今回はマモルと違い、ガードすら出来ていない。
右足に直進型が命中し、リディアは銃に撃たれたかのようにふわりと体が浮き、ばたんと前から倒れた。




