パリピ☆サボテン
次の日。隠し通路は複雑に入り組んでいたが、ハリネズミとの戦闘を繰り広げつつ進んでいくと、やがて大きな緑色の扉へとたどり着いた。
「ニキさん、この先に強力な魔力反応があるよ」
「わかった」
「それに……フロア自体にも、複雑な魔力回路が張られている。今回のボス戦は、トラップつきだと思う」
「トラップ……」
今までの傾向からして、トゲ落下の可能性が高いだろう。
あれを避けながらボスと戦うとなると、中々に恐ろしい状態になる。
「ニキ、扉って壊せそうか?」
ユーマが影山に尋ねる。
透視スキルで扉を見ると、“線”と“点”が見えた。
「うん。壊せる」
「閉じ込められたとしても、撤退は可能ってことだ。ヤバそうだったら、ニキに扉を壊してもらって逃亡していこう」
ユーマは3人を見渡した。
「Cランクボスを倒したんだ。魔力反応はBランクに近いとはいえ、Cには達してない。俺達ならいけるぜ」
3人も進む考えになり、こくりと頷いた。
それに隠し通路の傾向としては、ボスフロアに宝がある。
ここで大きな戦力アップか、資金稼ぎに繋がってくるはずだ。
(あれ。そういえばこの竜の指輪、まだなにも起きてないな)
ちらりと、影山は封印されたままの竜の指輪を見る。
あまりに変化がなさすぎて影が薄いが、いまだになにも恩恵がない。
ハイレベルな鑑定スキルでも、なにも調べられないらしい。
「おし。じゃあ、扉開けるぜ」
『ボス戦キタコレ』
『やっちゃえ!』
『せっかくだから、この緑の扉を開けよう』
『どんな宝があるか楽しみ』
『無事でいてくれ』
『おじさん、がんばれ~』
『リディアにゃんファイト』
ボスフロアは広く、四角い形であった。
そして天井と壁は、銀色のトゲが同じようにびっしりと並んでいる。
中央にいたのは――緑色の、全長2メートルのサボテン。
さらに腕、足と四肢が生えている。
影山達に気づくと、サボテンは立ち上がり、ファイティングポーズをとった。
「FOOOOOOO~~~~~♪」
なぜかパリピみたいな、チャラチャラした声を上げる。
心なしか、ファイティングポーズもダンスに見えてきた。
そして壁、天井にあるトゲがグラグラと揺れ――発射される。
『うわあああ』
『死にゲーやりながらボス戦!?』
『こっわ』
「みんな、無理はするなよ!」
ユーマの言葉と共に、4人は駆ける。
トゲの速度は素人の目でも追えるほど遅めだが、軌道は真っ直ぐではなく、ある程度こちらをホーミングしてくるものに変わっている。
トゲは壁にぶつかり、役割を終えると魔力となって消えていった。
4人はトゲを避けつつ、戦闘開始。
マモルが真っ先にサボテンに突っ込むも、サボテンは後ろへ下がるばかりであった。
「YO♪ YOOOOOOOO♪」
ふざけた声と共に、腕を振るい、針を発射。
ハリネズミである程度慣れているので、マモルはバックステップで回避した。
影山は透視スキルを起動しつつ、サボテンへ攻撃。
ユーマも影山と連携をとりつつ攻撃をしかけるも、サボテンは素早い速度で戦場をかけ、攻撃を避け、距離をとった。
そして牽制として、針を発射してくる。
「くそ、ちょこまかと……! つーか、なんだよこのふざけた鳴き声は! っと、あぶねえええええええ!!!」
ユーマが絶叫する。
飛んできたトゲに対して、背中を仰け反らせて神回避したのだ。
『あっぶね』
『ユーマ!?』
『しっかり周り見て!』
『見るとこ多すぎだって、この戦場』
『弾幕ゲーとは違って、ホーミングしてくるからまたキツさが違うな』
『サボテン逃げてばっかだな』
『なんかこのサボテンチャラいな』
『ボスらしくない挙動だけど、本体は逃げに特化してるのか?』
『トゲのフレンドリーファイアもあるし、サボテンは回避力へ全振りしてるのかも』
マモルが隙を見てサボテンへ攻撃を振るうも、大きな盾による鈍い攻撃とは相性が悪い。
「くっ……攻撃を引き受けることすら出来ないのか」
マモルはタンクであることに特化しているため、逃げ重視の敵だと力を発揮できなかった。
「……私も攻撃に参加します」
リディアが杖を真っ直ぐに構える。
装飾のされた杖の先端は、銃のような銃口があった。
魔力を投入――瞬間、白い弾丸が放たれた。
仕組みとしては、影山の使用するガンブレードと似たものだ。
中々のエイムであったが、サボテンの動きは素早く、くるくるおちょくるように回避されてしまう。
「YO♪ YO♪ FOOOOOOOO♪」
サボテンのふざけた鳴き声が、こちらを煽ってくる。
4人で休みなく攻撃をしかけるも、どれも命中しない。
時間だけが過ぎていった。
「ニキさん、左からホーミングしてきてる!」
「うん」
朝日のサポートもあって、トゲには命中していない。
他のメンバーも、オペレーターとの連携もあり被弾はゼロ。
だが、これがいつまでも続くことはないだろう。
所詮は人間のやること。
オペレーターか、探索者か、どちらかが必ずミスをする。
影山は宣言した。
「ハイパーブーストを使って、一気に仕掛ける」
この場において起動力を上げて、大きく動くのは怖いが、サボテンをとらえるにはそれしかない。
「わかった! 気をつけろよ!」
ユーマの言葉に頷きつつ、影山はハイパーブーストを起動。
距離を詰め、剣を振るう。
サボテンは先ほどよりもやや焦った様子で、しかしちょこまかと回避する。
徐々に迫る刃。
だが、休みないトラップに怒涛の攻めが常に隣り合わせだ。
「影山さん、右!」
「っ!」
迫りくるトゲ。
(回避している時間がもったいない)
透視スキルを発動。
剣で“線”を一閃し、トゲを破壊した。
同時に――ウォールブレイカーの金色の刃が、光を帯び始める。
朝日が息を飲む。
「オリハルコンが光っている……? なに……?」
『なんや』
『新機能?』
『違うっぽいぞ』
『ニキの動き良くなっている』
そしてサボテンへ向けてハイパーブーストで引き続き接近。
サボテンの“線”を、金色の刃が見事にとらえた。
ズドンっ! と金色の光が弾けるのと共に、爆弾が破裂したかのような閃光。
ただ剣で斬ったのとは違う、破壊力のある一閃であった。
「WOH! OH、OOOOOOOOO!!!」
『攻撃魔法か?』
『えっぐ』
『ニキなにしたの』
斬ったのは右足。
付与されたのは、大幅な俊敏ダウンだ。
それは想定内だが――ウォールブレイカーが一瞬、なにかをしたのは想定外のことで、影山は当惑した。
「なんだろう、今の……力が湧いていたような……」
「ニキ! 一気に仕留めるぞ!」
「あ、ああ」
ユーマに促され、2人でサボテンへ距離を詰める。
透視スキルはクールタイムに入ったが、2人のコンビネーションによる斬撃が、サボテンを襲う。
動きの鈍くなったサボテンは、それを浴びるばかりであった。
「OH! OOOOOOOOOOOO!!!」
サボテンは絶叫と共に、切り込みの入った体で逃げるも、やがてばたりと倒れる。
同時に、トゲの動きが止まり、ボスフロアは静まり返った。
『――影山 光のLVが25へ上昇しました。HP+39 MP+13 攻撃+13 防御+15 魔力+13 精神+14 俊敏+20』
『――影山 光のLVが26へ上昇しました。HP+39 MP+15 攻撃+13 防御+15 魔力+14 精神+14 俊敏+20』
影山 光 LV24→26
HP 579→657
MP 210→238
攻撃 209→235
防御 237→267
魔力 210→237
精神 230→258
俊敏 346→386




