ステータスボーナス
今回のダンジョンも迷宮のようになっていて、分かれ道がいくつもあり、マッピングしながら進んでいく形となった。
道中でハリネズミくんと戦闘しつつ、慎重に探索していった。
ハリネズミの攻撃に毎回安定して対応するのは難しく、ある程度の被ダメは覚悟する形となる。
しかし回復役のリディアがいるので、リカバリー出来ないわけではなく、戦闘後に休憩を挟めば問題はなかった。
そして影山は、ハリネズミくんとの戦闘でレベルが上がった。
『――影山 光のLVが24へ上昇しました。HP+39 MP+13 攻撃+13 防御+15 魔力+13 精神+14 俊敏+20』
影山 光 LV23→24
HP 501→540
MP 184→197
攻撃 183→196
防御 207→222
魔力 184→197
精神 202→216
俊敏 306→326
「うーん……上昇値があんまり上がらなくなった」
影山がそうつぶやくと、コメント欄が加速した。
『そうだね』
『えぇ……? まだ求めるの……?』
『下がってないしいいんじゃね』
『もう上昇値がエグいことになっているから、上がりづらいんだよ』
『これ以上は無理だと思う』
『他の配信を見てくれ……もうヤバいんだって、この上昇は』
『そもそもニキが強くなっているから』
『パーティーになったから?』
『ソロもやっているけど、なんともいえないね』
『ソロはそこまで恩恵ないぞ』
『前ほど無茶をしてないからか?』
『ステータスボーナスの可視化実装はよ』
『システムくん「ダメです」』
『そんなシステム、修整してやる!』
(うーん……)
少しだけ、影山の気になっているところではあった。
回復にリディアがいること。
いざという時にフォローしてくれるユーマ。
攻撃はできないものの、安定して敵を引きつけスタンするマモル。
安全性はやはり、ソロと比べると上昇している。
探索できる範囲も広がるだろう。
しかしだからこそ、ソロや格上狩りがいかに無茶なことかも実感し始めている。
ステータスボーナスが危険性と比例しているのなら、パーティー戦はそこから離れていく行為に思えてきた。
しかしそうなると、パーティー戦でのメリットが安全以外になくなってくる。
そんなことがあるのだろうか。
(ソロ狩りメインって探索者は、他にいるのだろうか)
影山は色々と思考をめぐらせる。
他の探索者への知識は、まだ浅い。
コメント欄も曖昧だったり、色んな情報が出ていて混乱状態だ。
鍛錬の時間を、情報収集やまとめに当ててもいいかもしれない、と考える。
それで今後の方針を決めるのもいいだろう。
「む。隠し通路が……」
戦闘中、影山は透視スキルを通じて隠し通路を発見した。
戦闘終了後に壁を斬ると、通常ルートへ続く一直線の通路が現れる。
「お、手短に帰れるルートか。こいつはいいな。次、ここから入れるだろうし」
ユーマが嬉しそうな声を上げる。
時刻は17時過ぎ。
中々に消耗しているので、ちょうどいいタイミングだと思い、影山達は外へ出た。
そして影山がステータスボーナスについて尋ねたので、ユーマが苦笑いを浮かべる。
「あのな……前にも言ったが、レベル10超え出すと、上がりが固定され始めるんだ。で、上昇値10超えっていう時点で、だいぶ高い。ああ、HP以外の話な」
「ふむ」
「可視化されない部分だから、ステータスボーナスのやり方は諸説ある。大きく上昇した瞬間とか、その辺りを意識した配信者とか、まとめ動画とか……まあ、あとでURLとか資料送っとくよ」
「ありがとう」
そんな会話をしつつ、外へと出た。
明日は隠し通路探索の続きになりそうだ。
☆
家に帰ってから、影山はユーマが送って来たURLを確認した。
彼のいう通り、トップ探索者達の上昇値は10以上であった。
そこが1つの基準であるようだ。
また、20上昇するというのは、特化したステータスの探索者が到達する領域か、トップ探索者の領域のようである。
結論から言うと、影山はトップ探索者と同等くらいの上昇値であった。
もっと上昇値を上げる、というのは少し難しいことのようだ。
だが、不可能ではなさそうである。
上昇の瞬間は、様々な事例が報告されており、色んなことが影響するのではと囁かれている。
行ったことのないダンジョンへ行くこと。
基礎鍛錬などを行い、武器の扱いなどの熟練度を上げること。
レアアイテムの使用。
格上狩り。
ソロでの探索。
死闘からの生還。
しかしこれらを過剰に求め、散っていった命があるのも事実だ。
ステータスボーナスを貪欲に求め、無双を夢見るのは一定数いる。
が、そこばかりを求め、生還を度外視したら、元も子もないのだ。
また、ステータスボーナスはマイナスに働くこともある。
加齢による衰え。
鍛錬を休むなどのブランク。
安全すぎる格下狩りの長期化。
同じような探索の繰り返し。
まとめるとマンネリを回避し、色んなことに挑戦することが、強くなる近道なのかもしれない。
あとは、地道な努力だ。
どれもしっかりとした根拠、証拠があるわけではないが、過去の事例はいくつか出ている。
「よし。がんばろう」
影山はそう思って、寝る前にトレーニングルームへ行って、素振りとドライファイアを行った。
ぱっと思いつく伸びしろの1つが、ここだ。
模擬剣での戦いだが、影山はユーマに負けている。
その熟練度を上げたら、上昇値はどうなるのか。
「まだ強くなれる気がする」
影山はこの追及が、どちらに転んでも良いから、試してみることに楽しさを見出していた。
これ以上伸びないんじゃないかと言われているステータスを、伸ばす。
その目標に、強い価値を感じていた。




