早めの復帰
「宣言より早いですけど、今日から配信します」
休暇は5日間にて終了した。靴の調整も上手くいったのもあり、影山は予定より前倒しで配信を開始した。
場所はユーマ達が潜っているダンジョンと同じ、遺跡型のCランクダンジョンである。
『待ってた!』
『やったー!』
『配信すると聞いて、飛んできた』
『また会えたね♥』
『きゃー、ニキ様ー♥』
『今日も素敵なニキ様が尊い 500円』
『ニキ様復帰祝い。大好き♥ 700円』
『え、もうCランクダンジョン行くの?』
『さすがにキツくないか』
「スパチャありがとうございます。そうですね。なので、午後からはパーティー戦に初挑戦しようと思います」
『お?』
『マジか』
『パーティーでのニキがやっと見れるんか!』
「試しにですけど。ユーマのパーティーで」
(というか、ユーマからDMがすごい来るし……勢いに負けた……)
しかし色々考えて、ユーマとならば悪くはないと考えたのだ。
人見知りは発動するだろうが、パーティーの方が後々活動の幅が広がるのは間違いない。
現に色々調べたところ、Cランクダンジョンからソロは難易度が上がりそうなのだ。
「とはいえ、ソロでのボーナスも気になりますし、スタンスを変えるわけではないので……俺のチャンネルは10時からスタート。ユーマは13時からなので、後で合流します」
『草』
『体力バケモンで草』
『ストイックすぎw』
『Cランクダンジョン舐めるなよ』
『ましてやまだLV20だしね』
「わかっています。油断はしません」
雑談もそこそこに、遺跡を進んだ。
ひんやりとした空気感の、古さを感じる独特の雰囲気である。
そしてオペレーターの朝日が接敵を告げた。
「ニキさん。曲がり角に、敵が潜んでます」
「了解」
立ち止まって、少し様子を見る。
すると曲がり角から、リザードマンが現れた。
左手に盾を持ち、右手に槍を持っている。
影山は透視スキルを起動し、“線”を見た。
「――ハイパーブースト」
いきなりハイパーブーストを起動し、素早い初速で前へと飛び出す。
意表をつかれたリザードマンは反射的に盾をかざすも、影山の一閃によって“線”を斬られる。
バゴオオオオン! と砕かれる盾。
『キタ!』
『スケルトン同様、一発で砕けるのか』
『ガードのための、頑丈な防具なのに……www』
『リザードマン、盾使ったカウンタースタイルだから、ニキと相性悪いんじゃね』
『いや、待った!』
『戦闘スタイルが変わった!?』
ざわつき、湧くコメント――その歓声に答えたわけではないのだろうが、リザードマンは慌てず冷静に作戦を切り替えた。
両手で槍を持ち、カウンターとして前へと突き出す。
本来、盾持ちリザードマンはガードで攻撃を受けてから動く、待ちのスタイルなのだが――それが一転して、攻めの作戦へと変わった。
鋭い一突きが、影山の胸へ迫る。
とっさに後ろへと跳び、回避した。
リザードマンも中距離を保ちつつ、身構えながらジリジリと動く。
攻防を繰り広げる間に、透視スキルの効果が消えた。
透視 LV5
あらゆる現象・物体の欠点を分析し、可視化する。
また、発動中は背後の視覚情報を得ることができる。
クールタイム9秒。効果時間は5秒。
(再発動までの時間はかなり短くなった……だけど)
戦いは1秒、2秒で一気に進展する。
リザードマンは素早い動きで、槍を1回、2回、3回と突いてきた。
素早い一突きは、素人目では残像だけを残して、引きと突きを繰り返しているように見える。
『リザードマン、盾破壊されるとこんな攻撃的になるのか』
『初めて見た』
『当たり前のように貴重映像が撮れるなぁ』
影山は攻撃を回避しつつ、靴の飛行を起動して上へ飛ぶ。
「ぐるるる?」
リザードマンが初めて動揺した声を上げた。
頭上のポジションを影山が確保し――ウォールブレイカーを真っ直ぐに構え、引き金に指をかける。
「――カートリッジ、スイッチ」
ショットガンマガジンへと切り替え、リザードマンへ散弾を浴びせる。
「グルゥゥぅ!?」
リザードマンが両腕で顔を覆いつつ、後ろへ退いて悲痛な鳴き声を上げる。
影山はもう一度引き金を引き、散弾を放つと、それもリザードマンに命中し――今度は、それが致命傷となりバタリと倒れた。
リザードマンは魔石となり、消えていく。
『さすがや』
『初手のアレはなんだ!?』
『靴がパワーアップしとる……』
『Cランクでもいけそうやなぁ』
(まあ、相手が1体だったから)
影山は内心でそう考える。
出だしは良いが、ここからが本番だ。




