リディアの実力
(後衛のヒーラーがいると、やっぱり戦闘での安定感が増すんだな)
ユーマの配信を見ながら、影山はそんなことを思った。
リディアは味方に回復やバフをかけて、戦闘のサポートをするタイプだ。
影山が見る限りでは、そつなく役割をこなしているように見える。
調べてみると、元は個人勢で登録者は1万人。
所属しているパーティーが解散してしまったところを、ちょうどネオファンに拾われたという形のようだ。
クールな性格のため、あまり配信向きではないようで、ルックスの高さとは裏腹に人気はイマイチ。
やはり配信者は、よく喋る濃いキャラが伸びるようだ。
壁破壊ニキ? 知らない子ですねぇ……。
「ガチガチになっている時はどうなるかと思ったが、助かるぜ。良いサポートサンキューな。おかげで大きなケガなく乗り切れる」
ユーマが気さくにリディアへと声をかける。
リディアの頬がほんのり赤く染まっていた。
「あ、ありがとうございます」
「これでヒーラー枠は埋まった感じか~。な、マモル先生」
マモルはこくりと頷いた。
「そうだな。ただお嬢さん、緊張しすぎじゃないかい?」
「すいません。見られるの、苦手なので」
『可愛い』
『全然喋らないよね』
『表情硬いよ』
『ずっと無表情』
『配信なんやから喋ろう。オモロくないで』
『いや、探索者って本来、オモロさ必要ないんだけどね』
『エンタメだし、オモロくないやつはいらんよ』
『視聴者を楽しませるのも仕事やで。フォロワー増えれば、収入増えるんだし。そして金が増えれば高級な装備を揃えてより高みへ昇れるだろ? てか、そういうのが嫌なら、辞めるなり、個人勢になればいい。わざわざ大手のネオファンに入って、エンタメのエの字も心がけないなら、そいつはプロじゃないんよ』
『謎に顔真っ赤にして長文で草』
『及第点じゃない? サポート能力は優秀っぽいし』
『特徴ないなぁ。ギリギリって感じ』
『まあ、ヒーラーだから足手まといにはなりづらいよね』
『女いらん』
『ユーマにふさわしくない』
『なんかユーマのこと好きそう』
『下心でくんな』
『ネオファンも落ちたな。前はすごい奴しか契約できないところだったのに』
『上から目線の勘違いコメ多いなぁ』
『ベテランがパーティー新しく創設すると、コメ欄こうなるよね』
『あるある』
『みんな、ニコニココメントしようぜ!』
『古いってw』
ユーマはガリガリ、と頭をかいた。
「良い感じに荒れてんなぁ、コメント……今日は早めに終わらせるとすっか」
「すまないな、ユーマくん」
「すいません……ユーマさん」
「いいってもんよ。ま、これから頑張っていこーぜ」
微妙な雰囲気のまま、その日の配信は終わった。
戦闘の内容は苦戦した場面がないので、良かったように思える。
だが、配信としてはあまり良くない流れだ。
ううむ、と影山は画面の前でうなる。
「新しくパーティーを作るというのは、大変なんだな……」
配信が義務づけられている都合上、どうしても視聴者からの理解も得なくてはいけない。
命がけの戦いに対して変な話だが、この世界のダンジョン探索はエンタメだ。
実力があればいいじゃん、という単純な業界ではない。
チャンネルが大きければ大きいほど、新たな変化に対して理解を得るのは難しくなる。
ユーマチャンネルの前途は、雲行きの怪しいものとなっていた。




