ダンジョンブレイカー? いい加減にしろ!
休暇3日目。影山は今日もいつも通りの飛行訓練をした後、部屋のノートパソコンで動画を視聴していた。
視聴者のDMで紹介された動画だ。
気になる内容だったので、自分の目でたしかめようということになった。
チャンネル名は「冒険の日々を彩るガジェットチャンネル」。
20代後半の探索者“カスケード”という活動名の男が運営している、探索者向けの道具を紹介するチャンネルだ。
登録者は60万人を超えている。
「はいどうも、カスケードです。今日はね、注意喚起の動画となります」
掴みの後にオープニングが流れ、カットを駆使したテンポの良い内容で動画が進行していく。
カスケードは喋りながら、ウォールブレイカーに似た(?)パチモンのガンブレードを、1人称視点のカメラで映し出す。
「今日紹介するのは、冒険イノベーションズという会社の、“ダンジョンブレイカー”です。見ての通りガンブレードなんですけど……なんかどっかで見たことあるデザインですね~。まあ、似ても似つかないクソダサなビジュアルなんですけど」
表、裏、とクルクルしながらダンジョンブレイカーを見せる。金色の刃、黒のグリップとスライドなど色合いは同じだが、オモチャっぽい雰囲気があった。
「壁破壊ニキ愛用の本家“ウォールブレイカー”と違って、マガジンは切り替えられません。てか、マガジンとれません。お値段3万円と激安なのは偉いんだけど、もうね、色々文句を言いたい。まず、これ」
動画の画面は冒険イノベーションズのECサイトのスクリーンショットへと移る。
「こういうサイトで購入するのは、危険なのでやめましょう。協会の公式サイトに掲載されている企業以外は、無許可でダンジョン向けのアイテム販売をしています。今から見せますけど、無許可の製品ってマジで危ないですからね」
そして画面は、SNSでの発信に映る。
「そして、直卸についてですね。これは関与した探索者も犯罪行為になります。入手した素材・アイテム売却は協会へ、あるいは専属契約で認められた直卸をしましょう。というわけで、さっそくこのパチモンブレードの性能を試していきます」
場所はEランクダンジョン。
土壁と土床の広がる、スタンダードな光景だ。
画面はカスケードとスライムが対峙するものへと変わる。
1人称視点のカメラで、スライムと戦闘を開始した。
「せいっ、おりゃ!」
10回目の斬撃で、ようやくスライムを撃破した。
カスケードは肩で息をしながら、ダンジョンブレイカーをカメラに映す。
「はい、じゃあ見てください。もうひでぇな、これ」
ダンジョンブレイカーの刃は刃こぼれして、ガタガタとなっていた。
「安全基準クリアのDAマークがどこにもついてないんですけど、案の定、耐久性がゴミなんですよ。いくら安いとはいえ、これはひどい。スライムでボロボロです。てか、振るたびにカタカタ音鳴るの、なんなんだよ。どこからこの音出てるんだ? そして極めつけはこれよ、これ」
カスケードがダンジョンブレイカーを構え、引き金を引く。
かしゃ、かしゃ、かしゃ。
音だけ響いて、弾丸が出ない。
5回目を引いて、ようやく1発、青い魔力の弾丸が出た。
しかし魔力を吸収しきれていないようで、5メートルほどで弾丸は消えた。
「ちゃんと弾出ないし、射程距離バカ短いし、威力もウ○コですよこれ。もはやウン○の方が強いまでありますよ。あとこれ以上使うのは怖いので、もう射撃はしません。もう本当ウンコだな、このゴミ」
カスケードはダンジョンブレイカーを持ちながら、改めて注意喚起した。
「こういうことがあるので、ダンジョン産のアイテムを取り扱うのは、協会の厳しい審査をクリアする必要があるんです。直卸もダメですよ。こういうことの後押しをするという行為ですから。まあ、協会がもっと取り締まりに力を入れないのも、悪いんですけどね。本当は探索者も、毎回荷物検査していいんですよ。でもめんどくさいのか、そこまで徹底はしないみたいですね。なので、探索者のみなさんは各自で正しい知識をもって、探索に挑んでください」
ここで終わるかと思いきや……動画投稿者らしく、エンタメとしてオチを作ろうと思ったのだろう。
その後もダンジョンブレイカーで探索したのか、画面はスライムとの戦闘へ。
思いっきり振り下ろしたダンジョンブレイカーが、ボキりと折れた。
「折れたあああああ! このパチモンがああああああああああ!」
カスケードの絶叫の後、動画はエンディングへと移る。
登録者が多いだけあって、見やすい編集で面白おかしい内容であった。
影山は念のため、探索者協会や橘へメッセージを送る。
「さて、と。今日の夜は用事があるから、鍛錬にいこう」
影山はそんな独り言こぼした後、外へと出かけた。




