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【透視チート】会社をクビになった俺、ダンジョン配信でバズって人生逆転する  作者: 音有五角
第一章「ダンジョン配信者、影山 光」

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格上狩り。レベル3へ

 コメント欄へ混乱が走る。

 壁破壊から接続数がさらに伸びて“70”となっているが、喜んでいる場合じゃない。


『いやいや、無理だから!?』


『おつかれ。そしてサヨナラ』


『なに構えてんだよ!?』


『逃げろ!』


『退け!』


『待て、出口は塞がれたんだぞ!?』


『透視でワンチャン?』


『無謀だ! レベル差がひどい! 相手は推定レベル10以上だぞ!』


『やばいやばいやばい』


『やっぱり調査が入っていないとこは、行くべきじゃなかったんだ』


『初見殺しすぎる』


 様々な意見が飛び交っていた。

 だが、影山は後悔していない。


(勝てばいいだけだ)


 しかしその判断が過酷な道であることは、すぐ判明する。

 クモは口を開き、糸を吐いた。

 糸はスピーディーに影山の体に、べったりとまとわりつく。強度・勢い共に信じられないほど強く、影山の体は浮き、床へ叩きつけられた。


「っ、とれない……!」


 ネバネバとした、高密度な糸が体中に張り巡らされており、動けば動くほど縛られる。

 腕や足は動かせるものの、芋虫みたいな状態なので、移動することは不可能だ。


「シャアアアアアア!!!」


 クモが恐ろしい声を上げながら、ゆったりと歩んで近づく。

 勝ち確。そう思っているのかもしれない。


『あああああああ』


『死んだ』


『マジかよ』


『ナイフ! 糸を切って!』


 音声が読み上げたコメント。

 アイテムボックスからナイフを取り出し、右手で握る。

 すぐさま透視スキルを起動。お腹にまとわりつく糸に、長い線が浮かび上がるのが見えた。

 手際よく左手で糸を持ち上げて、ナイフの刃で線をなぞる。

 当たった瞬間、パチンっ!!! と、糸が弾けるように切れ、影山は逃げ出した。


『おおおおおおっ!』


『一発で切ったのか!』


『透視TUEEEEE!』


『ワンチャンあるやん!』


『残念ながら彼の透視スキル、クールタイム20秒です』


『さらに効果時間は1秒の模様』


『なんだよそれ!』


『ダメじゃん!』


『あと20秒逃げ続けるなんて無理だろ!』


 クモがこちらを追いかけながら、糸を吐く。

 今度は常に走っているので、ギリギリのところで回避できた。

 しかし糸の勢いはすごく、予備動作も少ないので、どれも紙一重。

 肩や、肘、手をかすって、ネバネバとした感触がまとわりついた。

 それでも走る。とにかく動き回り、粘って時間を稼ぐ。

 体力が緊張感で削られ、息が苦しい。喉も痛み、全身が熱くなる。

 手が震えた。

 経験したこともない、圧倒的(あっとうてき)な恐怖だ。


(これはヤバい。死ぬかも。逃げたい。でも……だからこそ、楽しみだ)


 同時に感じるのは――これを乗り越え、クモを倒せたら強くなれるのではという、ワクワクだ。

 イカれたその思考は、強さを求めなければいけない探索者として、才能があることを示していた。

 その陰キャ、秘められた戦闘狂が覚醒しつつあるのだ。


『怖い』


『もうダメだ』


『走れ、絶対に止まるな!』


『死んだだろ、これ』


『ギリギリすぎる!』


「あれ」


 影山が小さく声を上げる。

 走り抜けた先は、土壁が立ちふさがる行き止まりが待っていた。


『逃げ道がない!』


『通路もう終わりかよ!』


『そんな!?』


 しかし時間は十分に稼げた。

 20秒だ。肩で息をしながら、振り返る。


「シャアアアアアア!!!」


 クモは仕留められないのにイラだっているのか、前進して突っ込んでくる。

 運が良い。糸を吐かれるアクションの方が、近づけなくて嫌だった。

 ナイフをアイテムボックスへ収納。

 これ以上、逃げ場はない。故に外すことは死を意味する。チャンスはたった、1回だけだ。

 この頼りない、素手一本で勝負する。


「透視……起動。弱いところを見せろ」


 長い前髪の下で、青く光った瞳が敵を見る。

 クモの頭上だ。そこに“点”が映しだされている。


「……っ!」


 小さく息を吐き、前へ思いっきり踏み出した。

 ビキナーズラックなのか……キレのある、真っ直ぐな良いパンチを放つ。

 その拳はクモの頭上に見事、当たった。

 瞬間、クモはびくんっ!!! とその場で小さく跳ねて、8つの足を忙しなくバタバタさせた。

 怯んでいる。そして間違いなく、痛がっていた。


『やった!』


『すげええええ!』


『いや、まだだ! 油断するな!』


 ここからは追い打ちだ。アイテムボックスからナイフを再び取り出し、移動しながら斬りまくる。

 ざしゅっ、ざしゅっ! と、攻撃力が低く、格上のクモの体を傷つける程度。

 だが、弱ったクモには十分なダメージだ。

 糸を吐かれたが、先ほどのような勢いがない。

 しっかりとクモの攻撃を回避し、ナイフで何度も斬りつける。

 そして10回目の一閃と共に、ついにクモがバタンと倒れた。

 その体が、魔力の光となって消え始める。

 システム音が、彼のレベルアップを告げた。


『――影山 光のLVが3へ上昇しました。HP+6 MP+3 攻撃+2 防御+2 魔力+2 精神+2 俊敏+6』


 影山 光 LV2→3

 HP 25→31

 MP 4→7

 攻撃 2→4

 防御 4→6

 魔力 3→5

 精神 4→6

 俊敏 16→22


『マジか! 倒しやがった』


『よっしゃあああああ!』


『これはナイス!』


『もうレベル上がったのか。早すぎる』


『まあ、これだけの格上相手だからね……』


『前よりも、数値が伸びている……か?』


『俊敏+6は高い』


『レベル一桁(ひとけた)帯は”+3”が平均なので、平均以下ですね』


『基礎ステには恵まれないのか?』


『てか、レベル2の男1人でDランクモンスターを狩るなんて映像、あるか?』


『ない』


『あるわけない』


『まずやろうと思わない』


『初回配信で歴史を塗り替えまくる男』


『運も良かった』


『最後クモが雑に突っ込んできてたからな』


『モンスターも舐めプするのか』


『低レベルソロが良い方面に働いた……のか?』


 影山は一安心して、ふう、と息を吐く。


「……ここから出ます」(ボソボソ)


『リアクション薄くて草』


『戻ろう。すぐ戻ろう』


『こりゃとんでもない冒険者が出てきたな』


『同接増えてるぞ』


『いやこの内容で153は少ない。日本中が見るべき』


 アプリを確認すると、接続数は“153”と表示されている。

 すごい数字だ、と影山は思った。


(こんな冴えない男1人の配信を、153人も見ているのか……可愛いあさひちゃんよりずっと多い……なぜ……?)


 影山は困惑(こんわく)しながら、疲労のたまる体で来た道を戻った。

本作の閲覧ありがとうございます。


もし内容がよろしければ、★★★★★評価・ブックマークをいただけると、とても助かります。


何卒、よろしくお願いします!

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