お風呂から出たら、またおかしなことに
「……とりあえず、風呂だな。」
一日の疲れが溜まった体をほぐすため、俺は服を脱いでバスルームへ向かった。
あの異常な状況を目の当たりにして、頭がぐるぐるしていたけど──
体の汚れは落とさないと。
生活習慣は、体に染みついているものだ。
湯船に浸かりながら、ため息が漏れる。
「……これが夢だったら、今頃目が覚めてるよな。」
熱い湯気の中、ぼんやりと天井を見つめる。
現実感があるのかないのか、もう分からない。
でも、湯の温度はちょうどよくて、体の芯からほぐれていく感覚があった。
「……はぁ、やっぱりお風呂はいいな。」
体を拭いて、浴室から出る。
タオルを肩にかけ、いつものように裸のまま脱衣所のドアを開けた──その瞬間。
「──きゃああっ!?」
突然、部屋から悲鳴が上がった。
「えっ!?」と声を上げて振り返ると、
シトリが真っ赤な顔で両手を頬に当てて固まり、
クッカが「あ、あの……!」と目を泳がせながらも、やっぱり赤面していて、
リブリアは「……無防備すぎます、ご主人様……」と眉をひそめ、
ネムは布団の上で「わぁ……♡」と目を輝かせていた。
「…………。」
数秒の沈黙のあと、タオルを急いで腰に巻く俺。
「す、すまん……!」
頭を下げながら、俺はようやく自分のやらかしに気づいた。
──そうだ、あの部屋はもう「普通の部屋」じゃないんだった。
家具だった場所に、彼女たちがいる。
だから、風呂上がりで裸のまま出てきたら、当然こうなる。
「……いや、ほんと、気使うわ……!」
思わずぼそっと漏らした声に、
シトリが「ご、ご主人様のせいです……!」と怒り混じりの声を上げ、
クッカが「は、恥ずかしいです……!」と耳まで真っ赤にし、
リブリアは「次からはバスローブを着用してください」ときっぱり言い、
ネムは「えへへ……裸のご主人様、可愛い~」とにやけていた。
「……はぁ。」
深いため息が漏れた。
⸻
しばらくして、着替えを終えた俺は、ようやく落ち着きを取り戻し、
「さて、もう寝よう……」と布団へ向かう。
けど──そこで、足が止まった。
「……あれ?」
ベッドが、ない。
いつもならあるはずの布団が敷かれたベッドスペースが、空っぽだった。
ただの畳と、ぽっかりとした空間。
「……いや、どこ行ったんだよ、俺のベッド。」
困惑しながら振り返ると──
「……あの……」
声がして、振り返った先には、
シーツを抱えて小さく膝を揃え、ほんのり赤らめた頬で見上げてくるネムの姿があった。
彼女は、胸元で手をぎゅっと握りしめ、少し不安げに、でもどこか嬉しそうに、
「ご主人様……今日は、一緒に……寝ますか?」
と、小さな声で言った。