添い寝しなきゃ寝られないんですか?
「…………。」
目の前で、ネムが少し恥ずかしそうにシーツを握りしめ、こちらを見上げている。
ふわふわの髪と、柔らかな表情。
でも、その服装が──ちょっとおかしい。
いや、正確には「服」って言っていいのか?
ネムの着ているものは、ふわふわした布団のようなもので、
淡いパステルカラーの柄が入っていて、触ったら絶対に気持ちいいだろうと思わせる質感だった。
「……それ、布団なの?」
「はいっ……! 私、ベッドなので……ご主人様が寝る時は、私に包まれてもらわないと……!」
ちょっと誇らしげに胸を張るネム。
「えっと……つまり、私と……一緒に寝ないと、眠れない、みたいな……?」
頬を少し赤らめて、小さな声で言うその姿に、
俺は、もう頭を抱えたくなる気持ちでいっぱいだった。
「…………。」
寝ないと体が持たない。
けど、これ、どう考えても、普通じゃないだろ。
俺の「ベッド」が、女の子で、しかも「添い寝が必要」とか、
そんな状況、どう受け止めろっていうんだよ。
「ご、ご主人様……一緒に寝てくれますよね……?」
上目遣いで、そっと手を伸ばしてくるネム。
その柔らかなシーツのような服の端が、ふわりと揺れる。
ほんのりと石鹸のような、淡い甘い匂いが鼻をかすめた。
──その時。
「……っ。」
視線を感じて振り返ると、
シトリが膝を抱えて、じっとこちらを睨むような視線を送ってきていた。
リブリアは無言で腕を組み、じっと目を伏せ、
クッカは少しだけ微笑みながらも、手元の指をきゅっと絡めている。
──全員、微妙に、何かを言いたげな空気を纏っていた。
いや、怖いって。
めっちゃ気まずいって。
「し、しょうがないだろ! 寝なきゃいけないんだから!」
小さく声を上げて言い訳のように呟くと、
シトリがぷいっと顔を背け、
リブリアは「……節度を持ってください」と小さな声で呟き、
クッカは「……ごゆっくりどうぞ」と、微妙な笑みを浮かべた。
「……はぁ……。」
何だこの空気。
疲れた頭では処理しきれない。
でも──
「ご主人様、早く……こっちに来てください……。」
ネムの柔らかく温かな声に誘われて、
結局俺は、彼女の布団のような服の中に、そっと身を預けた。
ふわりと優しく包まれる感触が、体の奥まで染み込んでいく。
体温とぬくもり、甘い匂い。
そして──ほんの少し、恥ずかしさを含んだ小さな息遣い。
「……あったかいな。」
思わず漏れた言葉に、
「えへへ……よかった……」と、ネムが小さく笑った。
背後からは、じとっとした視線が突き刺さっている気がするけど──
もうどうにでもなれ、だ。




