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「僕の部屋は選ばれし場所?家具娘たちと過ごす不思議な日常と、ちょっと苦めのコーヒーを。」  作者: メガネ3353


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よけいな出費と、彼女の悲しげな声

──少しずつ、この状況にも慣れてきてしまっている自分が、なんだか怖かった。


椅子に座るたびに、シトリが「ん……っ」とか小さな声を漏らし、

寝るときは、ネムが「ご主人様……」と嬉しそうに体を預けてきて、

ごはんはクッカが作ってくれて、

本を取ろうとするとリブリアが「ご主人様、それは……」と顔を赤くして目を逸らす。


──異常だ。どう考えても、異常なはずなのに。

でも、その温かさや、柔らかな笑顔や、香りや、触れたときのぬくもりが、

じわじわと日常に溶け込んできているのを感じていた。


「…………。」


ただ──やっぱり、申し訳ないと思う気持ちもあった。

シトリに座るたびに「んっ……♡」なんて声を聞かされるのも、

ネムに「一緒に寝て……♡」と手を引かれるのも、

どうにも落ち着かない。

俺だって一応、男だし。

罪悪感、って言えばいいのか。

なんだか、心のどこかがザラつく感じがあった。


だから、思い切って、スツールを買った。


「……よけいな出費だな。」

財布を開いたとき、そんな言葉が自然と口を突いて出た。

でも、これで少しは普通に戻れるだろう。

そう思いながら、重たい段ボール箱を抱えて帰宅した。


玄関を開けると、いつものように「おかえりなさいませ、ご主人様……!」と家具娘たちが迎えてくれる。

「ただいま。ああ……ちょっと荷物があるから、先に部屋に置くな。」

靴を脱いで、段ボールを持ったまま部屋に入ると、

シトリが嬉しそうに小走りで近づいてきた。


「ご主人様、おかえりなさい……! あの、今日も……」

そこでシトリの言葉が途切れた。

視線の先で、俺が段ボールを開けて、スツールを取り出すのを見た瞬間。


「……え?」


シトリの表情が、みるみる引きつっていくのが視界の端に映った。

口元がわずかに震え、

瞳が潤んで、ガラス玉のように揺れている。

肩が小さく震えて、

その場に立っていられないように、がくりと膝をつく。


「ご、ご主人様……それ……」


小さな声が震えて、

まるでこの世の終わりみたいな、悲しい音が混ざっていた。


「…………。」

俺は、一瞬、何が起きたのか理解できず、

ただシトリの顔を見つめたまま、

固まった。

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