光の下の本音
「……なあ。」
食後のまったりとした空気の中、
テーブルに残ったコーヒーの湯気が揺れるその瞬間、
思わず口をついて出た。
「光……ちょっと、強すぎないか?」
ふっと、部屋の空気が静かになる。
クッカが手を止め、ネムが丸くなっていた体を少し起こし、
リブリアが本を閉じ、シトリさえも、驚いたように目を瞬かせた。
そして──
「……あの……!」
「……私も……!」
「……ご主人様……!」
控えめだったけれど、溜め込んでいた声が、一斉に漏れ出した。
「お料理が……美味しそうに見えなくて……。」
「ご主人様が眠りにくそうで……私のせいかと思って……。」
「本が……読みづらくて……申し訳ないなって……。」
クッカが、ネムが、リブリアが、
小さな声で、でも確かに、
今まで言えなかった気持ちを、ぽつりぽつりと零していった。
シトリだけが「えっ、そうだったんですか……?」ときょとんとしていたけれど、
それも含めて、空気が少しずつ動き出した瞬間だった。
そして。
「──そんな……。」
ルミナリアが、ゆっくりと立ち上がり、
目を見開いてこちらを見つめていた。
完璧に整えられていた笑顔が、わずかに揺らぐ。
「私……頑張ってたんですのに……。」
その声はかすかに震え、
「ご主人様のために、もっと明るく、もっと華やかにしなきゃって……。
だって、そうしないと……」
途中で言葉が詰まり、
そっと胸元を押さえるように、両手をぎゅっと重ねた。
──ああ、そうか。
ルミナリアだって、不安だったんだ。
自分が必要とされなかったらどうしよう、
「高級家具」としての価値がなかったらどうしようって、
ずっと、必死に頑張ってたんだ。
「……ごめんな。」
ふっと息を吐きながら、俺は言った。
「誰も、ルミナリアがいらないなんて思ってないよ。
ただ、光が強いと、ちょっと生活に困ることもあるってだけで……。」
そう言うと、クッカたちも小さく頷いてくれた。
「はい……私、ルミナリアさんの光、綺麗だと思います!」
「うん……ふわふわしてて、ちょっと夢みたいで好きです……。」
「……ただ、眩しさに慣れるのに、時間がかかるかもしれませんけど……。」
それぞれの声が、少しずつ優しく重なっていく。
ルミナリアは、瞳を潤ませながらも、
「……そう、ですのね……。」と小さく笑みを浮かべた。
「わたくし……少し、張り切りすぎてしまいましたわね……。」
その言葉が、どこか肩の力が抜けたように聞こえて、
場の空気もふっと柔らかくなった。
「これからは、少し加減しながら、輝きをお届けしますわ♡」
そう言って笑ったルミナリアに、
クッカも、ネムも、リブリアも、少しだけほっとした顔で頷いた。
シトリは「やっぱり、椅子は強いな!」と、謎の得意げな笑顔を浮かべていた。
──この奇妙で、でも大事な日常が、
少しずつ元に戻っていく気がした。




