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鬼の宴 - ENN -  作者: 星夜 燈凛
19/19

扉の向こう




 はぁ.......はぁっ.......

 肩で息をしながら神社に到着した雄太は、ためらいもなく本殿の扉を勢いよく開ける。


 パーンッ!!!

「酒呑童子────!!!」


 いつもならば、「どうした、雄太。」と(ひょうひょう)々とした調子で酒呑童子が出迎えてくれるのだが、今日はどういうわけか、明かりもない真っ暗な神社の本殿が広がっているだけだった。

 いつも雄太が日本酒と修行をしている庭が左手に広がっているはずだが、それもない。


 どういうことかわからずに雄太が混乱していると、18時を告げる陽気な音楽が風に乗って遠くから聞こえてきた。町の子供たちに帰宅時間を告げるための音楽だ。


 すると突然、雄太の前にあった空間が歪み、渦を巻きだした。

 驚いた雄太は「わぁ!」声をあげ飛びのき、尻餅をつく。


 雄太は何事か状況が全くつかめずに、突然現れたブラックホールのような渦をただ唖然と見つめていると、渦の中からひょっこりとみりんが顔をのぞかせた。


「ん?お前、そんなところで何してるんだにゃ?」


 瞳をぱちくりと瞬かせて、不思議そうにみりんが言う。


 みりんが渦の中から出てくると、瞬く間に空間の歪みは本殿の扉全体に広がり、お堂だった場所はいつもの見慣れた館に様変わりした。


「......っ、........っ!」


 雄太は目の前で起きた超常現象に言葉を失い、口をパクパクさせている。


「まったく、どんくさいにゃあ。道はつなげてやったんだから、早く入るにゃあ。」


 みりんは尻餅をついたままの雄太の手を引き立ち上がらせる。そして、未だ呆気にとられる雄太を館の中へ引っ張って行ったのであった。



 館に入るといつものように酒呑童子に迎えられた。

「おぉ、雄太。今日は早かったな。」

 縁側に胡坐をかき浴衣を着崩し、団扇を片手に晩酌を楽しんでいる最中のようだった。だらけきったその様子に雄太は毒気を抜かれてしまう気がした。


 雄太は、はぁ.......。と一つため息をつく。この鬼に驚かされない日はないとしみじみと実感する雄太であった。


 雄太の様子が気になった酒呑童子はみりんに「何があった?」と問いかけ、事の次第の説明を受けている。状況を把握した酒呑童子が「なるほどな。」と言いながら笑みを深くした。


「そういえば、道をつなげるところを見せるのは初めてか。この屋敷の勝手口はいろんな場所の扉同士をつなぎ合わせることができるんだ。あの神社にも同じ方法で道をつないでいる。ちなみにこの屋敷は俺の許しがなければ、他の場所には行けないが、あの神社は少し特殊で、夕方以降は勝手にいろんな場所につながるから、今日みたいに不用意に扉を開けるんじゃないぞ?」


 酒呑童子は「驚かせて悪かったな」なんて言いながら笑っている。そのいろんなところにつながるというのは、酒呑童子たちが本来住む鬼の世界も含まれているのだろうというのは想像に難くない。雄太は、未知の世界への恐怖に軽く身震いをした。


 そして、いつも神社に行くたび、不機嫌そうな顔のみりんが立っていたのは、道をつなげるために雄太を待っていてくれたからだということを理解する。


 大体の目安として伝えた時間に遅れると「遅い」と不機嫌な様子で小言を言われるのも仕方ないと思った。



 先ほどの超常現象に納得した雄太は、ここまで急いできた理由をふと思い出す。


「そうだ!!これっ!!!なんか刺青増えてるんだけど、どういうこと!??」


 雄太は怖い顔の柴犬の刺青を突き付けながら説明を求めようと酒呑童子に詰め寄る。

 すると、聞きなれた高い声とともにシードルが酒呑童子の真横に姿を現した。


「あれぇ??ゆうくん、気づいてなかったのぉ?」


「しいちゃん!!」


「酒鬼からお酒を貰うと、力をもらった証として、そのお酒の割り振られている十二支の印が出るんだよぉ♪」


「えぇ!!?そうなの!!??でも、しいちゃんの時は何とも.......」


 雄太が言い終わる前に、にっこりと微笑んだシードルが二の腕の裏あたりをトントンと指さす。


 まさかと思い、左腕をねじって見ると、そこにはドロップキックをかましているウサギの絵があった。


「可愛いでしょぉ☆私はうさぎさんの印なんだ♪十二種類揃うとなかなか綺麗だよ~!楽しみにしててね♪」


 雄太は突然知らされた現実にため息をつき頭を抱えた。

 明日からは、散り散りになった酒呑童子の配下達を探しに行く。どんどん雄太の左腕がカラフルな動物園と化すのは容易に想像できた。

 これは早く目くらましの術が使える鬼を探さなければ、と決意を新たにする雄太だった。






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