第八話 縁台で日向ぼっこ ~ギルド~
「転職おめでとう、シーナさん」
「ありがとう、ヴァルゾフさんのおかげだよー」
「あれぇわたしはぁ?」
「試験何種類かあるの黙ってたジャン!」
「わははははは」
するとヴァルゾフさんが聞いてくる。
「シーナさん、戦士に転職したわけだけど、ギルドには入るのかな?」
そういえば今朝二宮君が言ってたっけ?
クラスのCWOプレイヤーの大部分が所属してるギルドがあるとか。
「えんだいナンとかだっけ?」
「縁台で日向ぼっこ」
「そうそれ!」
「シイナちゃんはぁいっつもてきとーだねぇ」
「もぅフィールちゃんの意地悪~!」
「そもそもなんで昨日は誘ってくれなかったの?」
「昨日はギルドマスターの"ヌコサマ"がINしてなかったから」
なるほど。
「一応ウチのギルドはぁギルマスの面接がぁ必要だからねぇ」
何か面倒くさそう。
「そういえばヌコサマって人どんな人なの?」
フィールちゃんが急に黙り込んでしまう。
え?何?どうしたの?
ヴァルゾフさんがそっと口を開いた。
「破壊者」
「え……?」
「デストロイヤーヌコサマ」
何その物騒な名前。
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「この娘が新しく始めた娘?いいんじゃない?可愛いし」
いいのかそれで。
どういう理屈で動いてるのか頭の上でピコピコ動くネコミミを揺らしながらその女性、縁台で日向ぼっこのギルドマスター、ヌコサマは事も無げに言った。
この人本当にネコみたいな人だなぁ。
コロコロ表情も変わるし落ち着きもない。
自由気ままな感じがする。
ネコミミ以外にも尻尾もあった(しかも動いてるし)
自作したの?課金アイテムなの?
欲しいぞコスプレセット
あ、一応普通の人間の耳もあるんだ。
というか何でこんな人が破壊者なんて呼ばれてるんだろう?
「おーし、じゃあシーナちゃんのために過剰精錬武器つくるぞー」
いきなり何か言い出したよこの人。
「その過剰なんとかって何……?」
「シイナちゃんまたぁチュートリアル聞いてぇなかったのぉ」
失礼な、丸い物体がきちんと教えなかっただけだよ。
フィールちゃんの言葉にヴァルゾフさんが続く。
「過剰精錬っていうのはね」
「ロマンよ!」
それを遮るヌコサマ。
なぜドヤ顔?
「あの……マスター……?」
「ぶわはははははは」
ヴァルゾフさんは困った表情をしてフィールちゃんは笑っている。
ドヤ顔のままヌコサマが説明を続ける。
「CWOはね、武器も防具も基本的には5回までは安全に強化することが出来るんだ」
丸い物体はそんなこと言ってたのか?覚えてない。
「んと、じゃそれよりももっと強化することが……」
「そう!過剰精錬」ドヤッ
「その安全っていうのは?」
「大丈夫だよ!」
あの……回答になってませんが……?
「材料費は全部私持ちだから!」
何言い出してるのこの人?
「+9まで行こうか!」
そんなキラキラした目で見つめないで下さい。
「えっとねシーナさん」
説明となるとヴァルゾフさんの出番である。
「CWOは五回強化、つまりは+5までは安全に強化、精錬とも呼ばれるけど、を行う事が出来る」
「それ以上に強化しようとすると失敗する可能性が出てくるんだ」
「その安全値以上に精錬しようとする行為を過剰精錬っていうんだ」
ヴァルゾフさんって丸い物体より物知りかもしれない。
「で、ヌコサマはその過剰精錬が大好きなんだよ」
「でも最近はサブマスからイベント事以外での過剰精錬禁止令を出されてるのよーぷんぷん、加工費も材料費も私持ちなのにさー」
「マスターが際限なく壊しまくるからでしょう、少しは自重して下さい」
「大体、材料が自分持ちとは言っても、過剰精錬に失敗しまくった後にギルドイベントと称してメンバーを無理やり狩りに連れ回すじゃないですか。振り回されるこっちの身にもなって下さい」
「だからね、良いでしょ?シーナちゃん!過剰精錬させて?ね?」
するとフィールちゃんがボソッとつぶやいた。
「過剰精錬破壊者ヌコサマ」
そういう意味なのね……