学校に通う猫
図書館では有意義な時間を過ごす事ができた。しかし、悪いニュースが多かったな。セントラルの人間からすれば、獣人とは帝国に加担して、セントラルを潰そうと企てている奴らという認識なのだろう。敵の友は敵という考えなのだろうか?そうなってくると、学校で友を作るのは非常に難儀しそうだな。
僕は猫だった事もあってか一人でいる時間が長いから問題ない。クロナも同じめに遭うだろうが、耐え忍ぶ事は得意だろ。このように忍びの心得を悪用したら怒られそうなので、心に閉まっておく。いつか使えそうなネタなので、忘れずにしまっておくのだ。
その後、王が僕らに用意したらしい住居へと向かった。道中視線が気になった。目立ってしまっているのだろう。なんとも居心地が悪い。後で対策を考えねば。
「こ、・・・これは!」
「へー、意外に立派。」
僕らの新居は一軒家だった。クロナは不満そうだった。
「こ、ここにシロと二人で、住むのですか!?」
「そうみたいだね。荷物は中にあるだろ、入ってみようよ」
「いや、シロ!一軒家ですよ!分かっていますか!?」
えらく取り乱すクロナが少し面白かったが、むやみにからかうと後が怖いので止めておこう。しかし・・・何が気に食わないのかな。中に入って行くと、綺麗な家だった。トイレも風呂もついている。なんと気が利いているんだ。
「分かっているよ、これだけ期待されてるんだ、ある程度応えるつもりだよ。」
呆れられてしまった。この感じは、的を外した発言をしてしまったようだ。
その後は、互いに自室へと入り、荷物を確認してた。部屋に入ると、制服があるのか。他にも学校で使うと思われる教材が置かれていた。魔法に関する教材が多い。やはり戦闘で魔法は重要なのだろう。教科書を読んでいると、扉がノックされた。
クロナに呼ばれて、リビングへと向かった。畳だ!和室だ!素晴らしい!!僕の部屋も畳が良かった。クロナの向かいに座る。クロナの話しは、明日からの生活についてだった。なんだか僕の保護者みたいだな。
その後はクロナが夕食を作ってくれた。クロナの料理は素晴らしい。健康的な献立、和の味付け。この子は良い嫁になる事だろう。さて、明日は学校初日だ。少し足が重いな。
「それではシロ、おやすみなさい。」
「クロナ」
「はい!!な、なんでしょうか。」
何で取り乱しているんだ?
「明日、学校で何か言われるだろうが・・堪えろ。」
「大丈夫ですよ。私は何を言われても問題ないです。・・・ただしシロに手を出した奴は殺します。」
この上なく物騒な事言っている気がしたが・・・その時は全力で止めよう。
翌日、クロナと学校へ向かう。基本生徒は皆寮に住んでいるので外から学校に入るのは僕たちくらいだ。しかし・・・遠い!凄く遠い!敷地が広すぎる。学生寮から校舎は近いみたいだ。なるほど、皆寮に住みたがる訳だ。恐らく僕等は入寮を拒否されたんだろう。
校舎の前に電車の改札みたいな物がある。他の生徒が学生証をかざして入ってるのを見て、見様見真似で降車へと入った。すると、学生所に刻まれている魔法陣が光った。
「・・・シロ、魔法陣に触れると生徒情報が見れます。」
言われた通りに魔法陣に触れてみる。・・・僕は最低の10組になったらしい。ま、予想してたけどな。
今更だが、やたら視線を感じる。陰口と視線にはもう慣れたな。教室の前に立つと、席順が書かれた紙が貼ってあった。クロナとは離れてしまったな。クロナがしょんぼりしていたが、きっと大した事じゃないだろう。勘だけどね。
席について辺りを見回すと、やけに目が合う。これは面白い、目が合うと焦って目を逸らす者、微笑みかけてくる者、睨みつけて来る者。個性豊かな反応を楽しんでいると、クラスを担当する先生が入ってきた。
先生は若い人族の女性だった。ショートカットのサバサバしてそうな人だ。
「おーし、お前ら。全員席に付いてるな。私はこのクラスを担当するミラだ。よろしく頼む。10組は最低ランクのクラスだ。こっからさっさと抜け出せよ。
さて、自己紹介でもしようか!なんて言わないから安心しろ。1年もこの面子だ。自己紹介は勝手にやってくれ。
早く10組を抜けたい奴にアドバイスだ。ガンガン決闘しろ。私のクラスでは、月に一度戦闘訓練を行う方針だ。弱い奴は死ななくとも瀕死くらいにはなる。場数踏んで強くなれ。以上だ。訓練始めるぞ。全員戦闘服に着替えてグラウンドに集合。」
教室の空気が重たくなったな。かなりスパルタな先生なのが分かる。指示道りにグラウンドへと向かう。クロナが慌てて付いてきた。僕とクロナが動き出すと、他の生徒も動き出した。
「シロ、更衣室の位置は分かりますか?戦闘服はお持ちですね。さ、急ぎましょう!」
さすが世話役だ。その一言でなんとなく僕が感じた事が伝わるだろうか。そう、もはやお袋のソレだ。僕が反抗期を終えていてよかったなクロナよ。
着替えてグラウンドに到着すると、先生が既に到着していた。先生の背後には武器の山があった。嫌な圧迫感がある光景だ。しばらく黙って全員が揃うのを待てばいいのかな。
「お前は質問をしないのだな。」
先生が口を開いた。質問をするのが正解だったか。いや、戦闘服を着てグラウンド、先生は戦闘力を重んじる。よってこれから行われるのは何らか訓練だろ。
「訓練ですか?」
「そうだ。順応が早いな。良い事だ。」
これは褒められたのか?順応が早いのは当然だ。なんたって突然猫になった経験があるからな。二足歩行から突然4足歩行になった経験なんて、滅多にないだろう。そんな何の自慢にもならない事を考えていると、クロナが追いついてきた。
そこから5分ほどで全員がそろった。皆一様に表情が暗い。
「よし、全員揃ったな。今からグランドを一周してこい。1位から順に良い成績を付ける。希望者は武器を取れ。ライバルを倒せ。簡単なルール―だろ。魔法は禁止だ。位置につけ。」
学校初日は、友を作れるように自己紹介。どころか、友達候補を蹴落とし勝利を勝ち取れだった。
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