1
「っと」
経年劣化で建て付けの悪くなった黒ずんだ木の扉を引く。開放した途端、牧草や糞尿などの刺激臭が外へと抜けていった。
鼻が馬鹿になったのか顔を顰める事も無くうじゃうじゃと好き勝手に群れを為す鶏共の中へと足を踏み入れる。
仕切りを作った方が此方としては世話が楽なのだが、放し飼いに近い状態の方が鶏のストレスは少ないらしい。
しかし、どこもかしこも気にせず糞尿を垂れ流すのだから衛生面的には問題があるのではないか、と思う今日この頃。まぁ、わざわざ新しく仕切りを作るのが面倒でもある為、なかなかその着手が出来ていないのだが。
「今日も恵んでいただきます」
そう呟いてから、俺は手近な雌鶏の下に手を入れていく。
卵を回収しようとすると親の鶏に腕を嘴で突かれたり、爪で引っ掻かれたりするのだが、手早く済ませてほんの数秒我慢すればだけで済む話だ。
「はっはっは、今日も元気だな!」
せいぜい俺にストレスを発散するが良い。その分、長生きして卵の恩恵に与れるのだから。さて、今日は何個産んでくれただろうか。
「今日はどうだった、クレヴ?」
床に伏せた母親から弱々しい声でそう問われるのはもう幾度目だろうか。飽きもせず繰り返される問答に苦笑いを浮かべるも、もう人伝で無ければ母は碌な話題が仕入れられないのだから仕方がない。
「特に病気にかかった様子も無いし、いつもとあんまり変わんないって」
「いつもすまないね。私がこんなんじゃなきゃ、あそこにいられたのに……」
一瞬、脳裏に"魔法学校"という言葉が過る。
「別に気にしてなんかいないって」
強がった物言いになってしまったが、あの場所自体には大した未練は無かった。魔導師としての素質も低かったし、在学中に友人の一人も作れやしなかったから。
「さ、早く寝て寝て。起きてると辛いんだろ?」
「寝ているだけじゃ暇なんですもの」
身体を起こそうとする母に慌てて止めに入ろうとするのだが、俺が触れる前に母はベッドへと吸い寄せられるように戻っていく。もう起き上がる体力すら病気によって失われているのだろう。
「取りあえず無理しないで、ちゃんと寝てろよ?」
「はいはい」
俺の忠告が軽く流されたが、母はそれからすぐに寝息を立て始めた。俺が見ていない間に起き上がる練習でもして疲れが溜まっていたのかもしれない。
乱れた掛け布団を整えた後、俺は音を立てずにそっと部屋を退出した。
外に出るといつの間にか澄み渡る青空に紅色が入り混じるようになっていた。
「もう夕方か……」
まだ鮮やかで眩しい程の夕焼けだというのに、どことなく物寂しさを覚えるのはこれから訪れる暗闇を知ってしまったからなのか。
近くの柵に腰かけ、ぼんやりと目の前の景色を眺める。
――小さな村落の、その東の外れにある小さな牧場。此処は、そんな一言で片付けられそうなところだ。
俺が産まれる前のこと、父は昔からの夢だった牧場経営というものを叶えようとして国の雇われ兵士だった時に稼いだ金でこの牧場を作ったのだという。
そして、素人ながら牧場生活を母と共に満喫し、金欠になったら時々臨時の肉体労働で何とか賄う、みたいな生活を送っていたらしい。
だが、そんなのんびりとした日々が一変することが起きた。
それは、今も母の身体を蝕む病気のことだ。
母の患った病気は難病で、症状としては極端に筋力が低下するといったものだった。
いつからだろうか、母が良く転ぶようになったのは。初めこそその光景を軽視していたが、それが症状の見え始めだったと気付けなかったのがいけなかった。
初めの内は過労か何かだと疑っていた父であったが、だんだんと満足に動けなくなっていく母の様子からようやく病気だという事に気付いた頃には母の症状は結構進んでいて。
その治療には庶民にはなかなか手の届かない額がいるらしく、当時は貯蓄などまるで考えてなかった父にはとてもじゃないがすぐに用意出来なかった。
だから父はそれからある都市で住みこみの兵士に本腰を入れ、その治療費を稼ごうと奮闘しているものの、それでようやっと病気の進行を遅らせる薬に手が届く程度でしかない。
父が出稼ぎに、母は病気で倒れてしまい、牧場を管理する人間がいなくなってしまった為、俺は興味本位で入学した国立の魔法学校を辞め、その仕事を引き継ぐ事にし、今に至る。
「はぁ……」
腹の奥に溜まっていた重苦しいものを排出するように、深く溜息を吐く。
別に、牧場経営が嫌というわけではない。
ただ漠然と同じ事を繰り返す日々に少しだけ倦怠感や焦燥感を覚えているのだろう。
人手が全く無いから、あまり多くは家畜の面倒を見る事は出来なくて。その分、入ってくる収入も少ないし、その殆どは維持費で消えてしまっている。
それほど興味を覚えなかったからか、やりがいは殆ど無いに等しく、母に教わった事を義務感だけでこなす毎日。
本当に投げ出したいのであれば、牧場に興味を持った村の人に一任してしまえば良かった。が、この場所は父の夢でもある為に他者へ譲るのは抵抗があったのかもしれない。
――尤も、そんな自身に置かれた現状よりも、母の現状の方がどうしようもなく俺に圧し掛かっているのだが。
母はまだ40を過ぎたばかりで、まだ寿命を全うするには早過ぎる年齢だ。
このまま薬で病気を遅らせていても、いつかは限界が訪れる。本来の――健康体であった時の寿命が来るよりもずっと前に。
根本的な解決さえ出来れば、と願ったところで俺には快方の一助すらかなわない。牧場の維持しか、俺には出来なかった。
座っていた柵から重くなった腰を上げると、日課となっている最後の一つをこなす事にした。
家畜ともうひとつ、俺には育てているものがある。
手を肩のあたりにまで上げて、掌を前に突き出す。そして、体内の魔力――不可思議な諸力のことだ――を集中させていく。手元に意識が向かうと共に掌から淡い光が溢れ出す。
掌あたりに魔力が充実してきたところで、それを一気に解放させるイメージの後、光が弾け飛び魔法が発動される。
その一瞬後、俺の足元にぼとぼと、といった効果音をつけたくなるようなものが10個ほど出現した。
その物体は液体のような見た目をしているが、弾力を持っている為にぷるぷるとしている。
色は透明がかった緑色といった感じで、形は言葉にしにくい。流動体、というべきか。
そんな物体の名前はスライムというモンスターの一種である。
『モンスター』――書物などの定義で言えば、『魔法に適応された存在』だそうで、一般的な動物や植物などとは似通っている部分はあるもののそれらとは異なる存在であるらしい。
ウチで飼っている鶏なんかは当然、動物にカテコライズされる。
例外として人間は動物でありながら『魔法に適応した』存在なんだとか。
さて、そんなスライムはというと最弱のモンスターとして認識されている。
少し腕に覚えがある者ならば難なく倒せるであろう、そんなモンスターしか召喚出来ない魔導師。
ある意味、お似合いのパートナーとも言えなくもないだろう。
「今日も訓練始めるぞー」
俺の声に反応して10体のスライムがぷるぷると震える。
最弱の肩書きは伊達では無いのか、こいつ等は知能も低かったのだが、訓練を何十回も何百回も繰り返せば理解をしてくれない訳では無かったらしい。
それでも通常のモンスターよりも遥かに手間がかかった為に愛着が湧いてしまい、魔法学校を辞めた今でもついついこいつ等の訓練を続けてしまっているという訳だ。
一通り指示を出し終えた頃には陽が沈んでいて、今日もまた一日を終える。終わって、しまった。
――母の病気の根本的な解決。その方法としては具体的に二つ。
大きな病院で医者に診てもらうことと、回復魔法を使える魔導師に頼み込むことだ。
だが、そんな簡単に事は解決しないのが世の常である。
というのも、この二つの方法とも単純に多額の金がかかるからだ。
前者は長期的な治療になるらしく、それだけに入院費用が嵩む上、症状によっては快方に向かわない事もあるらしい。
後者の場合は即効性があるものの、回復魔法なんていう希少価値のある魔法を使える人なんて教会関連の人しか使えないとされている。
治療が出来る者の数が限られてるとなれば、当然治療して貰える患者の数も限られている訳で。そうなれば必要に迫られた貴族が権力に物を言わせて確保に向かい、庶民に回ってくる機会はそう多くない。
多忙な彼等に優先的に見てもらうとなれば多額の御布施が必要になるのだが、確実な方法を取るとすれば此方の方が望ましいだろう。
「どちらにせよ金か……」
仮に家畜や家財を売り払ったとしても二束三文だし、男の俺が身売りなどしても買い取ってくれる物好きがいるものだろうか。
「相変わらず時化た顔してんのね」
考えれば考える程に作業の手が遅くなっていたところに俺のしんみりとした空気をぶち壊す声が聞こえてきた。
「顔に文句つけるなら産んだ親に言えよ」
そう言い返しながらうんざりした顔を見せると、古くなった扉の傍に立つ少女――ルシルが茶目っ気な笑みを浮かべていた。
ルシルは同じ村出身の幼馴染、とも言えなくも無い関係で、魔法学校でも同期だった。
童顔で愛嬌のある顔は魔法学校内の男共に結構な人気を誇っていたっけか。
だが性格は俺の知る限りでは悪い方に位置するだろう。人の不幸とか確実に笑うタイプの人間だ。
そんな彼女の出で立ちは輝く金髪が引き立つ黒色を基調とし、ところどころに金の刺繍が入っている学校指定のローブ、という事は魔法学校の帰りに此処に立ち寄ったのだろうか。
「あんたの両親は二人とも話せる状態じゃないでしょ」
俺のしかめっ面に対してルシルは片目を瞑り、気取った様子で言葉を返す。
その仕草はどうも童顔の彼女に似つかわしくない、他の人間には見せない彼女の一面であり、普段こそ猫かぶりしていることが多いのだが。
素を見せているからといって決して俺に好意を持っている訳では無い。
長年の付き合いで既に本性が知れている為に取り繕うのが無駄であるのと同時に、俺が言い触らそうとも俺の発言に信憑性が無く、その影響力も高が知れているからだ。
「だから、これ」
ルシルが紐で丸められた一枚の紙を俺に放ってくる。
それを慌てて受け取り、広げて中を見るとそこには『英雄制度』についてが記されていた。
――『英雄制度』、誰がそう呼び始めたか知らないが、そんな制度がこの国には存在する。
ここ近年、モンスターの大量発生が起きたため、国は急遽モンスター討伐の奨励をした。
それが、『英雄制度』と呼ばれているものだ。
内容としては、依頼されたモンスターを討伐などをすることで、その依頼に課せられた報酬をもらえる仕組みとなっている。
そして、その依頼をどんどんこなしていくことで、その功績が噂として流れ、地位をあげることなんてことも可能であったりする。
国王をトップとして、大きく分けて貴族層と平民層と貧民層に分かれており、並大抵の努力では地位をあげることなんてできないのだが、この制度によりその可能性が大幅に上がったというわけだ。
中には、庶民から国のお偉い貴族の騎士様にまで昇格したというのは有名な話である。
「こんなもん、俺には無理な話だろ」
一応、紙の内容を一通り読んでから、俺は率直な感想を述べた。
確かに、この制度のことを俺も何度も考えた。が、手強いモンスターの討伐なんていうことを達成できるとは到底思えない。
しかしまぁ、俺の父は尋常じゃない程強い兵士である。
元々生まれつき筋肉がつきやすい体質だったからなのか、一般の兵士より一回り以上……どころか人間離れした大きな体格を持っていた。
そういうこともあってか、兵士に志願した時なんかは、上司の兵士達が父を巡って激しい取り合いをした程だったそうな。
だから、そんな父から産まれたからか、俺へと掛かる期待は大きかった。
そのため、幼い頃から毎日のように剣を振ってきたのだが。
俺はそんな父から産まれたとは思えないほど、才能がなかった。
俺の通っていた国立の魔法学校の隣には、剣士を育成するための訓練所があり、そこでは毎年剣術の大会が開かれている。
そこに、俺はちょうど8歳になったころ参加したのだが、予選で敗退した。
しかも俺と同い年くらいの――それも次の対戦相手に簡単に負けるくらい弱い奴に。
それから、父も俺に剣を教えることも無くなったので、俺は魔法に興味を示し始めたのだけど。
さて、そんな過程で知る事になった魔法だが、またまた俺には才能がなかった。
才能というならば、召喚魔法の適性はあった。全く無いという人に比べれば、あった方なのかもしれない。
しかし、魔導師として見れば、明らかに欠陥であった。それに、召喚魔法は――厳密には召喚魔法の一部、なのだが――取り返しの利かない部分もある。
それを知ってから、俺は召喚魔導師としても、規格外の劣等生になる事を選んだ。
だから、戦いなんぞろくすっぽに出来やしない。制度を利用するなど、端から考えられなかった。
「クレヴ一人、じゃね。だから私とパーティを組んでみない?」
「は……?」
ルシルの言葉に、思いっきり眉を顰める。
「まぁ盾役として、だけど」
ルシルが付け加えた言葉で、俺はようやく納得がいく。彼女の使う魔法――詠唱魔法には、発動までに時間が掛かるからだ。
詠唱魔法――その名の通り、呪文と呼ばれる言葉を使い、火、水、風、地などの自然の要素の力などから魔力を代償にして力を借りる魔法だ。
呪文を唱えるためには、相当な集中力が必要なため、無防備になるというデメリットを持つかわりに、魔力の代償によっては強力な魔法が使えたりするのが特徴、といったところか。
魔法の適性を持っていても、呪文を唱えれば使える訳でもなく、やはり詠唱魔法の適性というのも存在している。
またその詠唱魔法内でもまた適性があるという、結構面倒な感じが否めないところもあるらしい。
まぁ、俺には縁の無かった魔法である。
「そんな役、引き受けるとでも?」
盾役なぞ、被虐趣味でも無い限りやりたがらない損な役割だ。敵を引きつけるから、一番危険を伴う役割でもある。
痛い思いをするのは、ごめんだ。
「でも、せっかくのチャンスだとは考えないのかしら?」
唇に指を当てながら、ルシルはその童顔に似合わないような、妖艶さを含んだ笑みを浮かべる。
「今、クレヴには纏まった多額のお金が必要なんでしょ? 手っ取り早い方法を私が示しているのに、なんで食いつかない訳?」
「手っ取り早くても、それは成功した場合の話だろ? 確実に成功する保証がある訳じゃない。
それに、俺は自分で言うのも何だがポンコツだぞ?」
「正直に言うとね、魔法学校のめぼしい人たちはみんなパーティ組んじゃってるのよ。
その中に私が頼めば普通に入れてくれると思うけど、そうなると人が多く集まっちゃって山分けした場合に取り分が少なくなるでしょ?
それは嫌だから、自分でパーティを作ろうと思って余り物のクレヴに声を掛けた、って訳」
「……余り物なら他にもいるだろ」
俺が目を伏せたのを見て、ルシルは煩わしさを覚えたのか、声のトーンが少し低くなる。
「このままだと、おばさんはもう長くないんでしょ」
その言葉は俺を胸を締め付けた。それは分かっている。分かってはいるが……しかし、でも。
「……本当に、裏はないのか?」
「私に対して疑り深いよね、クレヴは。どうしても信じられないなら、私が余所行きの顔作った時に溜まったストレスを発散する相手がクレヴ以外にいないから、と思えばいいでしょ?」
それなら確かに、説得力はある。俺が牧場生活する前までは、ずっとそうだった。
ルシルが本当に善意でこの話を持ち掛けてきてくれているのならば、それを受けても良い気がしてくる。
怪我をするのは怖い。だが、それ以上に母を失う怖さが上回っていた。
彼女の依頼がどれだけ母の助けに分からないが、それでも牧場で燻っているより、ずっとマシかもしれない。
数日後、村にいる世話好きな女性に母の世話を任せ、俺は父のお下がりである、俺の身長よりも大きな盾を背負って集合場所に向かっていた。
集合場所は、俺の通っていた魔法学校のある街――アスタールの玄関。その理由としては依頼場所に近いし分かりやすい場所だから、らしい。
確かにこの街には立派な門が構えられ、大変目立つ。そんな集合場所に俺が辿りついた頃には、もう既に他の人達は集まっていた。
「遅いっ!」
俺と一対一で話す時とは違う明るい声で、ルシルが軽く俺を叱ってくる。素の彼女とあまりにかけ離れたぶりっ子加減に、思わず少し身を引いたのは仕方ないと言えるだろう。
そんな彼女の両脇にそれぞれ男女2人が立っており、どうやら今回一緒に仕事をする仲間らしい。
男の方はダバルと名乗り、すぐさま俺のことを睨んでくる。
元々三白眼をしているからか、その鋭い眼光は後ろに流した黒髪と合わさってなかなか威圧感を感じさせる。
裏稼業か何かをしている人かと思いきや、軽装の鎧を見るにどうやら剣士育成所の剣士らしい。
魔法学校繋がりでないので、たぶんルシルの魅力に誘引されて参加したクチなのだろう。
ルシルの人を見る目は確かなので実力は高いのだろうが、どうにも協調性が無いように思える。
後ろを任せていたら、背中をバッサリやられないか心配である。
次に女の方だが、ルシルの勝気な性格とは真逆の印象を受けた。それはモジモジと何やら恥ずかしがっている態度を取っているせいだろうか。
柔らかそうな茶色のセミロングを背中に流し、細い眉は八の字になって困っているような表情を作っているが、結構な美人さんだ。
名前はフィリーネというらしい。
女にしては長身のルシルと比べて、彼女はルシルの肩ぐらいまでしか身長が無い。そんな小柄な体格をしているからか、小動物を見ている気分になる。
服装はダバルよりも軽装をしているせいか、やや武骨な胸当てが目立つ。
彼女は優秀な弓の使い手を輩出する家系に生まれた娘さんなのだが、今は補助系の魔法を覚えるために魔法学校に通い、そこでルシルと友達になり、この誘いを受けたという。
弓の才能だけでなく、魔法の才能もあるということで、才能コンプレックスの俺としては羨望の塊といっていいほどの人物だ。美人さんだし。
「それじゃ、さっそく行くとしますかね」
「その前に聞きたいことがあるんすけど」
ルシルが早速出発しようとしたところで、ダバルが俺に指をさしてくる。
「こいつは何者っすか」
「クレヴのこと? 彼は私の盾役になってくれるということで来たの」
「こんなヒョロヒョロが? 無理に決まってるっす。せめてオレぐらいじゃないと」
ダバルにヒョロヒョロと評されたが、一応俺は標準体型をしている。
ダバルの方が剣を扱っているからか、やや筋肉質で俺より逞しい、というだけだ。
「そう? でもなんだかんだいって、鍛えられてはいるから大丈夫よ」
「ホントっすか?」
彼らは話題の中心である俺を差し置いて、好き勝手に言葉を交わし合う。口を挟む暇も無く、俺と同じくあぶれたフィリーネさんに困った顔を向けるも、彼女はオロオロと視線を彷徨わせるだけ。
……こんなに纏まりの無いパーティで大丈夫なのだろうか?




