24。
「お前なあ、またかよ」
呆れ顔の真斗さんと、何も言わないけれど同じく呆れ顔の隼人さんの二人に覗き込まれて、私は震える手でスマホの電源を押した。
「こ、これでいいんですか? 全然、電気が点きません」
「ば、か。それは長押しすんだよ」
「長押し、ですね……で、できました。次はどうすればいいんですか?」
「これこれ、」
何かのマークを指差してくる。
「これ、ですね」
すると、画面が切り替わって、一つの名前に辿り着いた。
「あ、鹿島 要。かなめって言うんだ、あいつ」
「……えっと、これを押すと電話が掛かっちゃうんですんね。じゃあ、これは押しちゃダメ、と。メールの仕方を教えてください」
「なあ、もちろん返すんだろ?」
「は、はい。こんな高価なもの、いただけませんし、その通話料っていうのも払えませんから」
「それは、向こうが押しつけてきたんだから、払ってくれるだろ」
「そんなっ。だめですだめです」
「まあな、これ本体だけで結構な金額するからな」
「え、高いかな、とは思ってたけど……」
隼人さんが横から、もそっと告げてくる。
「……10万くらいか」
その言葉に、どっと胸が鳴った。
「じゅ、10万?」
真斗さんが隼人さんの太ももにキックを食らわせているのを遠くに見ながら、私はスマホの画面をもう一度見た。
ゴールドのブレスレットの時と同じように、スマホを持つ手が微かに震え出す。
途端に悲しみがやってきて、画面がぼうっとかすんできて、そして揺れた。
双子から離れ、カウンターのイスに腰掛ける。テーブルの上に置いてから、人差し指でスライド。
鹿島さんのメアドを呼び出して、文字を一つ一つ打っていく。
『スマホをお返ししたいです』
そう締めくくると、何度も何度も読み返して、送信ボタンを押した。
送信してから。
気がつくと画面を見つめて、ぼーっとしていたのだろう。
「小梅、返事ってのはすぐに来るもんじゃねえから。鹿島さん、今仕事中だろ。ちょっと貸してみろ」
真斗さんが心配顔でスマホを取り上げると、カウンターの端に置いてある充電器と繋ぐ。
「ここ置いといてやるから。時々、チェックしろよ」
「ありがとございます」
鹿島さんとの距離が、開いたような気がした。




