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23。

貰ったブレスレットを返すと、鹿島さんの顔は途端に曇っていった。それはそうだろう、せっかく買ったものを突っ返されたのだから。


(けれど、こんな綺麗で高級なものを、私が持っていても……)


このブレスレットを貰った時、あまりの高級感に飲み込まれてしまって、持つ手がぶるぶると震え出した。


「ほ、本物の、金?」


金塊や金メダルを思い出す。


「いやいやいや、さすがに違うでしょっ」


けれど、その言葉に自信も裏付けも、何もない。


メープルの真斗さんに見てもらうと、「お、お前え、これはかの有名な……」


オレンジの箱に書いてあったのは、英語ではなくフランス語だと言う。


「高いやつだぞ、これは絶対に高いやつだ」


訊くと、高く見積もっていた値段より、さらに桁が一つ上にいく。


「どうしよう真斗さん。うちには金庫なんて、ありませんよ」


「お、おう。じゃあ、店の金庫に入れといてやる」


鹿島さんに次に会うまで、保管しておいてもらうことになって、心からほっとしたのだった。


公園で、サンドイッチと一緒に入れた小さな紙袋を、実はずっと気にしていた。


遊んでいるうちに盗られてはいけないと思うと、気が気ではなかった。


ローラーコースターの滑り台でハプニングがあった時以外は、常にそれが頭を占めていたのだ。


別れ際、鹿島さんが、「今度は遊園地でも行こうよ」と誘ってくれた。けれど、また高価なプレゼントを渡されるのではないかと思い、少しだけ尻込みしてしまった。


(……本当は、そう言ってもらえて嬉しかったんだけどな)


そして案の定、と言うべきか。


鹿島さんは今度は私にスマホを渡してきた。


さすがに世間には疎い私でも、スマホを契約して月々支払っていく料金などは、多摩さんや真斗さんに聞いて知っている。


「だめです、こんなの、」


多分、悲壮な顔をしていたんだと思う。


鹿島さんも、そういう顔をしていたから。


渡されたスマホは綺麗なカバーまでしてあって、新品なのだろう、あちこちがピカピカに光っている。画面も艶があって、それこそ一つのジュエリーのようだ。


(どうしよう、これ、どうしよう)


片手で持つと、落として壊してしまうのではないかと思い、両手で包み込む。


泣きたい気持ちになってしまった。


真斗さんに頼んで、また金庫に入れておいてもらわないと、と。


足早に去っていった鹿島さんの後ろ姿。その後ろ姿が、私から逃げるように見えたことに、少しだけ傷ついていた。

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