22。
隣に座る鹿島さんが、私の作ったポテトサラダのサンドイッチを食べている。嬉しそうに食べてくれているように見えるけど、どうなんだろうかと心配にもなる。
「うん、すごく美味しいよ」
それがまあ社交辞令だとしても、私は幸せだ。
こうして、王子様のような鹿島さんと、並んでサンドイッチを頬張れるとは、夢かと思うほどだ。
ローラーコースターの滑り台では、鹿島さんの上に乗っかってしまって、ちょっとというか、すっごく動揺してしまった。ドキドキとした心臓が、口からバーンと飛び出るのかと思うほどだった。
身体の触れたところが熱を帯びた。
(大きな身体だったなあ)
その包容力を思い出すと、顔が破裂しそうだ。
私は慌ててサンドイッチの残りを口に詰め込んだ。
ブランコにも乗った。シーソーにも乗った。
回転遊具では、球体の遊具の回転に振り回される鹿島さんを見た。
「こ、小梅ちゃん、ちょ、手加減してっ」
足がもつれそうになっている鹿島さんを見て、私も回転に身体を持っていかれそうになりながら叫んだ。
「乗っちゃえばいいんですよっ」
「無理無理無理っ。足が掛けられないっ」
「鹿島さん、手っ‼︎」
「な、なにー?」
「手を、離せばいいんですよっ」
「ちょ、待て待てっ。今、離すからっ」
手を離した鹿島さんは、ととととっと惰性で数歩歩くと、その場に崩れ落ちた。
「はあはあ、」
尻もちをついている鹿島さんは、背中を大きく上下させている。
私は足を軽やかに掛けて、遊具に乗った。
風が顔をさわ、さわ、と撫でていく。
遊具の回転が次第に緩くなっていくと、私は降りて、鹿島さんの元に寄った。
「小梅ちゃん、やっぱ若いなあ」
鹿島さんはまだ、上下ではないが左右に身体を揺らしている。
「ふふ、鹿島さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
よいしょっと言いながら、立ち上がる。鹿島さんのズボンに白く砂埃でついた汚れが浮かんでいた。
私が手でぱぱっと払うと、ありがとう、と言う。
「君は本当によく気がつくね」
「そんなことないです。私なんて、大人としてまだまだで」
褒められて嬉しかったのもある。照れ隠しに手の甲で頬を拭った。
すると、鹿島さんはポケットからハンカチを出すと、「君はまだ大人になり始めたばかりなんだから、それでいいんだよ。それに、」
ハンカチで私の頬を拭った。
顔が近づく。その瞳も。
「小梅ちゃんは今のままで十分だ」
十分。
なんだろう。
嬉しくて。胸が、いっぱいになる。
そっと、横でサンドイッチを頬張る鹿島さんを見る。
そわっと首の後ろが、くすぐったくなった。




