20。
正座をした。
目の前に紙袋を置いた。
その時はまだ、気分はうきうきとしていた。
夢のようだった『デート』が終わり、帰り際に渡されたもの。
鹿島さんは『今日のお礼』だと言ったけれど、鹿島さんの住む世界では、こうして女性に何かをあげるのは当たり前のことなのだろうか?
疑問に思いながらも、嬉しくて。
次に会う約束もした。
「一週間後の、お昼前に。同じ場所で」
優しい笑顔で鹿島さんが言った。
今度は、私がもてなす番だ。どうしよう、どこへ行こうか。どこが良いだろう?
「どこに行ったらいいか、隼人さんか真斗さんに訊いてみよう」
じわっと、嬉しさが、奥の方からこみ上げてくる。
目線を落として、そっと、紙袋を開ける。
中から包みを取り出すと、私は手の上で裏返してみた。
「お菓子か、何かかな」
甘いものは大好きだ。今日食事の最後に出てきたデザートも、たくさんのフルーツでジュエリーのように彩られた、それはそれは綺麗なゼリーだった。
ほうっと息を吐きながら、箱の裏側に目を落とす。
はたして箱の裏側に、シールは貼っていなかった。
洋菓子や和菓子なら、裏側に賞味期限や原材料が載ったシールが貼ってあるはず。
「あれ、これ……お菓子とは違うのかな」
裏返していたのを元に戻して、もう一度じっくりと見る。
斜めに掛けてあるリボンと包装紙のセロハンテープを綺麗に取ると、包装紙がはらはらと解けていった。
中には硬くてしっかりとした箱。オレンジ色のシンプルな面には、何か英語のような、いや英語じゃないような文字が書いてあった。
そっと、蓋を開ける。
薄紙を開けていくと、中には金色のブレスレット。
「え、」
取り出すと、部屋の電気の光を含んで、キラッと光った。
「う、うそ、これって……」
ずしっと重みがある。
仕事の休みの日に時々寄る雑貨屋でも、同じようなものが置いてあるけれど、重さもデザインも輝きも全然違った。
「た、高そう……」
蘇ってくるのは、食事に連れていってもらった飲食店の、メニュー表。
あの時も、目を疑うような金額が書いてあって、こんなに高い料理を出すお店があるのだと、心から驚いた。
けれど、これは。
食事よりももっと値段がするはずだ。ゼロが一つ多いだろう。いや、二つかも知れない。
「ど、どうしよう、これ……」
ブレスレットの重みを感じていた手は、微かに震えていた。




