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19。


「これって、デートですか?」


開口一番に訊いたような気がする。


ふわふわとなんだか足元も覚束なく、まだ飲めないお酒を飲むと、こういう状態になるのかなあ、なんて思ってみたりした。


いやいや、まだ19なので、お酒はあと1年は我慢だ。


そう言うと、えええっ‼︎ 18歳じゃあないの⁇ と鹿島さんがめちゃくちゃに驚いたので、私もえええっ‼︎ となり、19ですよっと大声を上げた。


どうやら須賀さんが、私のことを18歳だと伝えていたようだ。


それを聞いた私は心の中で、やったー‼︎ 鹿島さんと一つ、歳の差が縮まったぞ、と思ってバンザイをした。


「鹿島さんは、お幾つなんですか? 須賀さんに、33歳ってお聞きしていますが、それってちゃんと正しい情報なんですか?」


すでに須賀さんの信頼度メーターは下がり気味だ。


「うん、合ってる。須賀くんめ、俺のことは間違えずにちゃんと伝えたんだな」


苦く笑った鹿島さんが、大人の男の人に見えて、わああと顔を覆いたくなった。いや、実際大人なのだけど。


「29くらいにしておいてくれたら良かったのに」


そう言うので、私はあははと笑って、言った。


「それって、198円とか、99円とか、よく店長がやるパターンですね」


「うん、そうだよ。その方がちょっとでも若く見えるだろう? あー、でもまあ、33っていう事実は覆らないのかあ。それやっちゃうと、年齢詐称だしな」


悔しそうに言うけれど、口元は笑っている。だから実際は、そんなには気にしていないんだろうな。


「でも鹿島さん、見かけがすごく若いから、ほんと29歳って言われても、そうなんだって信じちゃいますよ」


「そう? ありがとう。小梅ちゃんに言われると、自信がつくよ」


(……私は、今日のこれが本当のデートなのかどうかが自信ないんだけど)


心の中でそう思いながら、「いやいや、ほんとです。イケメンだしカッコイイし王子様だし紳士だし、」


そこまで言って、やばいっと思った。私が鹿島さんをどう思っているか、バレちゃうっ‼︎


「……王子様は言い過ぎだよ。俺はそんな良い男じゃない……でも、褒めてくれてありがとう」


高い鼻を人差し指で、ぽりぽりと掻いている。その手で、髪をくしゃっと混ぜた。


(あ、照れてるのかな、可愛い……でも良かった。気持ち悪って、思われてはいなさそう……かな)


鹿島さんの行きつけのお店に歩いていく道中。そんなやり取りをしながら、私はずっとふわふわとしていた。


また高級なお店なのかな、一度だけ思って不安になったけど、鹿島さんの隣を並んで歩くだけで、もう胸がドキドキして破裂しそう。


私の頭が、鹿島さんの肩を掠めたりはしない距離で、歩く。


(33、)


私にとって特別な数字。


鹿島さんのことを、もっと知りたい。


嫌いな食べ物はもう知っているから、あとで好きな食べ物とかを訊いてみよう。趣味とか、休日は何をやっているのか、とか。


長い脚なのに、意外とスローペースな歩き方。もしかして、チビな私に合わせてくれているのかもしれない。


腕時計をした太い手首に血管が浮き出ている。私の手首の倍くらいあるんだ。


ああかっこいいなぁと思う。見上げると、喉仏が大きくせり出していて、私に大人の男の人を意識させた。


「14歳の差ですね」


弾んだ声を出すと、鹿島さんが前を向いたまま、そうだねと言った。


私は浮き足立ってしまって、結局これが本当にデートなのかどうか、最後までわからずに一日が終わった。


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