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異世界で始まる英雄伝説  作者: 松原太陽
四人の英雄
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属性解放者

 「彩姫、入るのはいいんだが俺はお前に聞かなきゃいけないことがあるんだ」

 彩姫の加入に喜んでたみんなの中、龍太だけが険しい顔をしていた。

 「えっ何を?」

 彩姫は何を聞かれるかさっぱりのようでポカーンとしていた。

 「まず精霊について、それとなんで拠点を破壊し回っていたんだ?」

 精霊に関しては翔天は知っていたが二つ目のことは知らなかった。

 「んー、そうだね革命軍に入った以上話さないとダメだよね」

 まるで話したくなかったようだったが彩姫は意を決したようだった。

 「ウンディーネ出てきて」

 なぜか彩姫の近くではなく、星華の後ろにウンディーネは現れた。

 「えっ・・・・・・ひゃぁぁぁー」

 急に出てきたウンディーネに星華が珍しく悲鳴をあげていた。

 「ウンディーネなんでそんなところから出てきたの!」

 どうやら彩姫にもわからなかったようでウンディーネを怒っていた。

 「ごめんねー、彩姫。でもこの子から美味しそうな魔力の臭いがしたから」

 星華は何故かビクッとしていたが特に気にしなかった。

 「この子が私が契約している・・・・・・」

 「ウンディーネでーす、これからよろしくお願いしますね」

 笑顔に挨拶するウンディーネにみんな固まっていた。

 「ウ、ウンディーネっていえば水の精霊で八大精霊の一人だろ」

 ウンディーネについて話すため、翔天と彩姫そしてウンディーネの三人がかりでの説明に十分もかからなかった。

 「なるほど、精霊についてはわかったがもう一つの拠点破壊はどうなんだ」

 実際、精霊よりもこっちの話の方が重要な気がした。

 「私がね、拠点を破壊し回っていた理由はね・・・・・・」

 彩姫はそわそわする手を抑えており、冷や汗をかいていた。

 「ある男を探していたの」

 これは意外だった。てっきり悪事を働く敵軍が許せなくてやった行動だと思っていた。

 「その男って誰なの?」

 星華が聞いたとき何故か翔天は嫌な予感がしてたまらなかった。

 「アルナールっていう名前の男よ。帝都の軍にいるはずだったから手当たり次第拠点を破壊し回っていたの」

 その名前には、翔天だけでなく龍太と星華にも心当たりがあった。

 「彩姫なんであいつを探しているんだ!」

 気づけば翔天は大きな声を出していた。

 「あいつをってことはショウあなたアルナールのことを知っているのね。教えてあいつは今どこにいるの!」

 彩姫も何故か必死で先程までの落ち着いた感じがなかった。

 「いや、まず彩姫がアルナールを探している理由を教えてくれ!」

 「ダメっ!まずアルナールがどこにいるか教えて!」

 二人の口論は、どんどんヒートアップしていき収拾がつかなくなっていた。

 「取り敢えず二人とも落ち着け!」

 フレデリカが間に入ってくれたおかげで二人は、少し冷静になっていた。

 「翔天、まずお前から話せ」

 翔天は、自分が先に話すのは嫌で文句を言おうとしたが、龍太が昨日、翔天が後で話すことを言ったせいで言わざる終えない状況になってしまった。

 「わかりました、僕から話します」

 正直、フレデリカやカールには話しても問題ないが彩姫達、三人に言うと為れば話が別だったがいつか言わなければいけないことだったから翔天はアルナールが地球でやったことを話し出した。




 話終えてしばらく誰もなにも言わなかった。

 無理もなかった、今まで知らなかった死の真実を知ってしまっては、どう反応していいからわからなかった。

 「アルナールが敵の軍にいるのは間違いないと思う。昨日僕らを捕まえたのがアルナールだったから」

 翔天の話しが終わり彩姫の番になったが彩姫は、何故か喋らなかった。

 「どうしたのですか? 次は彩姫の番ですよ?」

 佳子の言葉も聞こえていないのか彩姫はなかなか喋らなかった。

 「すみません。今彩姫はとても話せる状態ではないので代わりに私が話します」

 ウンディーネが代わりに話すことに文句はなかったが彩姫が話せない理由が気になった。

 「彩姫がアルナールを探している理由ですが・・・・・・復讐と言えばわかるでしょうか?」

 これはまた意外な理由だった。復讐という単語は彩姫に当てはまるものではなかった。

 「復讐ってさっきショウが話した理由で・・・・・・?」

 「いいえ違います。・・・・・・翔天が話した内容は彩姫も初めて知ったことです」

 そうなると彩姫が復讐する理由がわからなかった。

 「彩姫はこの世界に来たときとある海賊に拾われました」

 「か、海賊だと!?」

 フレデリカが声を挙げていたがウンディーネはそれを無視して話続けた。

 「海賊といっても別に悪いことをしているわけではありません。白き海賊団と言えばわかりますか?」

 この大陸以外のことを翔天は知らなかったが、星華が知っていたらしくみんな驚いていた。

 「白き海賊団って、困っている人のために戦う正義の海賊よね?」

 どうやら本当に知っていたようで、ウンディーネも頷いたが星華が何故知っていたのかは、わからなかった。

 「彩姫も白き海賊団の一員として働いてたの。格闘術もそこで覚えたものだから」

 白き海賊団の話を聞いてたら彩姫が一緒に戦っていたのもうなずける。

 「ですが白き海賊団は一週間前に滅びました。たった一人の男の手により」

 すでに誰が殺ったのかは聞くまでもなかった。

 「なるほど、だから彩姫は自分の居場所を奪ったアルナールに復讐をしようとしてるんだな」

 龍太がウンディーネの話を簡潔にまとめたおかげで彩姫が革命軍に入った本当の目的に気がついた。

 「たが、精霊と一緒に戦えるのに何故、彩姫のいる白き海賊団は殺られたのだ?」

 「・・・・・・それは・・・・・・アルナールが属性解放者だからよ」

 ようやく口を開いた彩姫だったがでてきた単語は聞いたことがない言葉だった。

 「ゾクセイ、カイホウシャって何?」

 星華が首をかしげていたがフレデリカは思い詰めた顔をしていた。

 「それに関しては私が説明した方が早いかもしれませんね」

 どうやらまたウンディーネが説明するみたいで彩姫もまた喋らなくなった。

 「最初に属性についてなんですが、まず私を含め命あるものは火、水、風、土、氷、雷、光、闇の八つの属性のうち一つだけある属性をもっています」

 ウンディーネはまるで先生のように落ち着いた口調で話し出した。

 「例えば私なら水の精霊だから属性が水のように絶対に一つの属性をもつのです」

 「ウンディーネ、何故、命あるものは属性をもつのかわかるか」

 龍太は律儀にも手を挙げ発言の権利を得てから質問していた。

 「いい質問ですね龍太。・・・・・・ではみなさん、生命エネルギーって何だかわかりますか?」

 急に問題を出され本当に授業みたいな感じになっていた。

 「たしか体内にあるマナが僕らが生き続けるための根源になるいわば第二の心臓みたいなものだよね」

 「正解ですよ、カール」

 正解したカールは嬉しそうだったがとても皇帝陛下の子供とは思えなかった。

 「つまり属性は生命エネルギーになんらかの役目があるということかしら?」

 「佳子、大正解。おかげで話しやすくなったわ」

 喜んでたカールは一気に悲しい顔になり、佳子はそれわ見て笑っていた。

 「佳子の言うとおりで属性には体内のマナをその性質に変える役割があります」

 翔天は頭が悪くすでに今言った説明を理解していなかった。

 「あのーウンディーネ、ショウが理解していないみたいだからもう少し分かりやすく説明できる?」

 「あっ、できれば私からもお願いできますか、カール様が理解できずに唸っていますので」

 ウンディーネは軽いため息をつき、数秒間に考えた。

 「そうですね・・・・・・魔法を使うにはマナを媒体としなければなりません。それはわかりますよね?」

 これはほぼ一般常識のためわからない方がおかしかった。

 「火の魔法を使おうとしたとき周囲のマナは火の属性に変わります」

 「あぁーなるほどそういうことか」

 どうやら龍太は何かわかったらしく試しにウンディーネから龍太に説明が代る。

 「つまり基本的にマナは無属性で周囲の属性により自身の属性も変わる」

 どうやらここまではいいようでウンディーネはこくこくと頷いていた。

 「無属性のマナだと性質がなく、それだと魔法の媒体にするにしても使えないんだ。媒体になるマナはその発動する属性でなければ意味がないんだ」

 ようやく翔天も意味がわかった。

 「生物が属性をもっている理由は体内のマナの属性を変えて使える物にするってこと?」

 「まぁそういうことね。マナは無属性のままだと使えないから体内の属性がマナの属性を変え、使えるようにするということよ」

 ようやく属性を持つ理由を知り満足した翔天だったが、本題はここからだった。

 「では、属性解放者についてなんですが・・・・・・これは口で言うより実際に見た方が早いでしょう」

 「えっ、ウンディーネって属性解放者なの?」

 だが、ウンディーネは首を横にふった。

 「じぁあ誰が解放者なんだよ」

 ウンディーネはフレデリカと彩姫の方を見た。

 「精霊というのはなんでもお見通しなんだな」

 やれやれといわんばかりにフレデリカは立ち上がり彩姫それに続いた。

 「フレデリカ師匠は属性解放者だったんですか!?」

 彩姫はだいぶ調子を取り戻してきたようだったがフレデリカはどこか暗かった。

 「では、二人ともお願いします」

 ウンディーネの合図に二人は同時に叫んだ。

 「「属性解放!!」」

 彩姫からは光が、フレデリカからは水流が二人の周囲に現れた。

 「これが属性解放なのですか?」

 二人の属性は今は自身の周りを漂っていた。

 「これが属性解放です。体内のマナを外側に出すことで身体能力を大幅に向上させることができます」

 凄い、それしか言葉が出てこなかった。

 「フレデリカ師匠、なんでこのことを教えてくれなかったんですか?」

 「すまない。だがこれは教えてできるような・・・・・・物でもないし・・・・・・それに、あまり・・・・・・これはやるものではないしな」

 フレデリカはどこか苦しそうで、息切れをしていたのに比べ、彩姫は何ともなさそうだった。

 「ウンディーネ、これは一体どういうことなのですか」

 「属性解放は体内のマナを放出する行為をするため、体内のマナを著しく消費するため体への負担がかなり大きいのです」

 確かにフレデリカは辛そうだが彩姫が余裕そうなのがわからなかった。

 「彩姫が属性解放をして平気なのはフレデリカに比べ、既存のマナの量が違うからなの」

 フレデリカの周りに漂っていた水流は姿を消し、同時にフレデリカは膝をついていた。

 「大丈夫ですかフレデリカ師匠!」

 慌てて駆けつけた翔天にフレデリカは問題ないと言っていたがやはり辛そうな顔をしていた。

 「属性解放を使えば寿命を縮めかねないのですかウンディーネ?」

 これは重要なことだった。もしそうだったならフレデリカと彩姫は関係のないところで寿命を縮めたことになる。

 「いえ、休めば体内のマナは回復しますが、無理をして使い続ければマナが回復せずに命の危険にも関わります」

 ウンディーネの言っていることは本当のようでフレデリカもだいぶ楽になったようだった。

 「ウンディーネ、聞いていいか」

 翔天の肩を借りて立ち上がったフレデリカは、彩姫の属性解放を見て疑問に思ったことがあるらしい。

 「彩姫はかなり属性解放を使いこなしているようだが、アルナールの力は彩姫の属性解放も超えるということなのか」

 彩姫を見ると、周りを漂っていた光がいつの間にか彩姫の拳に収束していた。

 「はい、彩姫は自身の属性を拳に収束することで一撃の威力を上げていますが、アルナールのそれはこれを遥かに上回っています」

 そう聞くと改めてアルナールの恐ろしさを実感した。

 みんなが力の差を実感しているとき急に誰かがドアを荒く開けた。

 「誰だ! 今は会議中だぞ!」

 入ってきたのは医務室のどじっ子先生だった。

 「あっ昨日の・・・・・・誰だっけ?」

 「エミールですよっ覚えといてくださいよっ!」

 エミールは息をきらしており、たぶん医務室からここまで走ってきたのだろう。

 「それでエミール何のようだ」

 エミールは焦る気持ちを押さえ息を整えていた。

 「はいっ、昨日調べた彩姫さんの細胞なのですが・・・・・・翔天さん達と同じ神の細胞が含まれていました」

 この結果はわかりきっていたことで彩姫以外なぜそこまで慌てているのかがわからなかった。

 「その結果は想定済みのことだろう、どうしてそんなに慌ててあるんだ」

 彩姫はキョロキョロしていたが今はそれを無視して話を進めた。

 「実は彩姫さんだけではなく翔天さん、龍太さん、星華さんも何ですが調べ直した結果・・・・・・四人の細胞が・・・・・・」

 この時、誰も思わなかった。エミールが言ったことが彼らの運命を大きく変えることを。

 「四人の細胞の七割以上が・・・・・・神の細胞に変わっていました」

 

 

 

 

  

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