彩姫の決断
「ギリギリセーフッ!」
勢いよくドアを開けて入った翔天と彩姫を見て時間通りに集合しているみんなは呆れていた。
「はぁ~、もう少し早く来れないのか? まさか集合時間の三秒前に来るとは思わなかったよ」
確かに時間通りに来たとはいえ、普通は十分前には集合しているべきだった。
「まぁ一応時間通りにきたし、それにカール様もいることだし早く始めようか」
入った時には気づかなかったがフレデリカの側に金髪の少年と茶髪パーマの女性がいた。
「ねぇショウ、あの二人って誰?」
「あぁそうか彩姫は初めて会うんだよな。・・・・・・えーっと」
今から紹介しようとしたとき金髪の少年が翔天もの言葉を遮った。
「大丈夫だよ翔天、自分でやりますから」
そう言って金髪の少年と茶髪パーマの女性は、彩姫の近くまで移動した。
「初めまして。僕の名前はカール=エレンスト、カールって呼んでくれていいから」
カールは笑顔に彩姫に手を差し伸べた。
「私の名前は彩姫です。これからよろしくカール」
彩姫も自己紹介をしカールの手を握った。
「おーい彩姫、一応言っとくけどカールは先代の皇帝陛下の息子だからな」
龍太の一言で彩姫は青ざめバッと手を離した。
「あ、あのー・・・・・・知らないこととはいえ大変失礼な態度をとってすいませんでした」
急に畏まる彩姫に対しカールは慌てていた。
「別にいいよ。僕は出来るだけ対等に接してほしいし、それに君の友達も僕のことをカールって呼んでくれているから」
彩姫は翔天の方を向きアイコンタクトで本当かどうか確認した。
「わかりました。では私もこれからカールと呼びますね」
カールはとても嬉しそうでその顔は無邪気な子供にそっくりだった。
「フレデリカと佳子も彩姫を見習って僕のことをカールって呼んでくれる?」
「私は無理です。どうしても立場というのを気にしてしまうので」
フレデリカの性格上、自分より上の人を呼び捨てで呼ぶのは抵抗があるのだろう。
「私も無理ですね。私はカール様の側近である以上、呼び捨てなど出来ませんから」
二人に呼び捨てを拒否されて落ち込んでいるカールをよそに彩姫は別のことが気になっていた。
「佳子、佳子・・・・・・んーどこかで聞いた気がするんだけど・・・・・・」
彩姫が悩んでいるのに気づいた星華は、佳子に自己紹介をするよう促した。
「そうですわね次は私の番だけど・・・・・・彩姫私のこと覚えてますか?」
彩姫は何かが引っ掛かっていたがなかなか思いだせなかった。
「まぁ無理もないですわね。七年もたってしまっては・・・・・・私の名前は中木佳子です。名前を聞いても思い出しませんか?」
名前を聞いても全然でてこず、それを見て佳子は少し悲しそうだったが星華が助け船を出してくれた。
「ほらアヤちゃん、小学校の同じクラスで学級委員をやっていた」
ようやく思い出した彩姫は知っている人に出会えた嬉しさと忘れていた罪悪感が同時に襲ってきた。
「佳子ごめん。完全に忘れていた」
「少しはオブラートに包んで言って欲しいですわね!・・・・・・その様子だと他のクラスメイトも覚えていないのではないですか」
とっさに目をそらした彩姫を翔天達は見逃さなかった。
「まぁ彩姫は私達とは一ヶ月程度の付き合いしかないししょうがないですわね」
佳子の言う通り彩姫は小学校のころ転校してきてからこの世界に転生するまでの間は一ヶ月しかなく彩姫も他のクラスメイトをあまり覚えてはいなかった。
「ね、ねぇ、佳子もみんなと同じで革命軍で戦っているの?」
明らかに彩姫が話題を変えようとしているのはわかったがそれに関しては誰も言わなかった。
「そうですねぇ、どちらかと言えば私はカール様のために戦っていると言った方がよろしいでしょうか。・・・・・・詳しくは後から話すと思うのでフレデリカさん話を始めてくださいますか」
完璧な流れでフレデリカにパスをした佳子に感謝しながら、みんなが席に座るのを確認し、フレデリカは話始めた。
「では、今日の話す内容なんだが・・・・・・その前に彩姫に聞かなければいけないことがある」
急に自分の名前が出て彩姫はびっくりしていたがすぐに何を言われるのかを理解し顔を引き締めた。
「彩姫、昨日言った革命軍に入るか入らないかの話なんだが・・・・・・答えはでたか」
彩姫は数十秒目をつぶりなにか考えていた。
「フレデリカ、その前に一つ聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ? 言ってみろ」
彩姫はフレデリカに礼を言いながら話し出した。
「この革命軍って何のために戦っているの?」
あっ・・・・・・、この時この場の全員の気持ちが一致した。
「そう言えば誰もアヤちゃんに革命軍のこと詳しく話していないんじゃないの?」
一同の目が翔天の方を見ていた。
「えっ僕!? フレデリカ師匠じゃなくて!?」
フレデリカは両手を合わせ、すまん頼むと言わんばかりに頭を下げていた。
「わかりました。彩姫、今から僕が革命軍について色々説明するから、みんなは補足説明とかお願い」
みんながそれに同意したので彩姫の方へ向いた。
「まず僕ら革命軍は、カールを帝都バーネリアの皇帝陛下にさせるのが目的なんだ」
「帝都バーネリアって確かこの大陸の権限を持つ国だったよね」
彩姫が確認のため訪ねたのを見て龍太が念のためにこの世界のことをどこまで知っているか聞いた。
「えーっと・・・・・・この世界は七つの大陸があって・・・・・・」
この世界は中心にある大陸を囲むように六つの大陸があり、それぞれの大陸を支配する国が一つある。
この世界でたくさんの人が争いを続ける理由がこれで大陸を我が物にしようとするテロ組織や国どうしの争いが原因だった。
「つまりこの革命軍って・・・・・・」
この世界の争いの理由を思い出した彩姫の顔は強張っていた。
「あぁそうだよ彩姫、この革命軍も他の組織と同じだ。」
フレデリカの諭すような言い方に彩姫は冷静に保とうとしている。
「じぁあなんでこの革命軍はカールのために戦っているの? 今の皇帝陛下ではダメなの?」
「あ、アヤちゃん・・・・・・あのね・・・・・・」
フォローを入れようとした星華を翔天は止めた。
「今の皇帝陛下は、周辺の村の人たちだけでなく国民のこともただの道具としか考えていないんだ」
翔天の話に誰も口を挟まなかった。それどころかみんなの顔は暗く沈んでいた。
「それにあの皇帝陛下のは自分が王位につくためにカールの父親を殺しているんだ」
彩姫は言葉がでず無意識にカールの方を見ていた。
「彩姫、翔天の言っていることは事実です。先代の皇帝陛下はカール様が五才の頃、大臣が仕組んだ暗殺集団の手によりこの世から去りました。カール様の母上は自分の子供を守るためにカール様を大臣の目の届かない場所に逃がしました」
カールにとって辛い過去を思い出させるような行為だったがカールは、話をじっと聞いていた。
「次期皇帝陛下になるはずのカール様もいなくなり、大臣はこのチャンスを物にし帝都バーネリアを支配しました」
彩姫は薄々だが気づいていたなんで翔天達が革命軍で戦っているのを。
「大臣が皇帝陛下になってからは今まで幸せに暮らしていた人達の生活も無茶苦茶にし、他の大陸まで支配しようと一般の若者まで無理矢理兵士にしてしまう始末でした」
聞いているのが辛かった。だがこれを聞かなきゃ自分はいつまでも決められないそんな気持ちでいっぱいだった。
「それを止めようと、フレデリカと他の有志達が立ち上がりこの革命軍ができたわけです。・・・・・・ここまで大丈夫だったかしら彩姫?」
いつのまにか翔天から佳子に説明が変わっていたが今の彩姫には関係なかった。
「つまりみんなは、この国を本来のあるべき姿に戻すってこと?」
翔天も龍太も星華も佳子も頷いていた。
「わかったよ。・・・・・・私決めたよ」
「それでどうなんだ」
周りの目が彩姫に向くなか、彩姫は大きく深呼吸をした。
「私もみんなと一緒にこの革命軍で戦う!」




