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異世界で始まる英雄伝説  作者: 松原太陽
四人の英雄
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精霊

 「はぁ~、昨日はひどい目にあったなぁー」

 昨夜、彩姫に殴られた所の痛みがまだ引かず、今朝もそれで目が覚めていた。

 「おはようショウ」

 振り返ると彩姫が手を振りながらこちらに来ていた。

 「おはよう、彩姫。星華とは一緒じゃないんだな」

 「えぇ、ホノちゃんは先に起きて外に走りに行ったみたい」

 隣で歩く彩姫の顔は暗く俯いていた。

 「どしたの彩姫、なんでそんな暗い顔をしているん?」

 「えっ、いやっ、だって私昨日ショウの話も聞かずに殴っちゃってそれでその・・・・・・どんなを顔して会えばいいのかわからなくて・・・・・・」

 どうやら彩姫は昨夜の出来事を気にしているようでどう接していいのか悩んでいたらしい。

 「なんだそんな事で悩んでいたんだ」

 「そんな事って・・・・・・だってショウは私達のためにしてくれたのに・・・・・・」

 彩姫はいつも優しく困っている人がいたら後先考えずに助けにいくような性格のため理不尽に翔天を殴った自分が許せないのだろう。

 「僕はもう気にしてないよ。それに星華の治癒術のおかげでだいぶ痛みも引いたし」

 「で、でも・・・・・・」

 こうなると彩姫はめんどくさく最悪の場合、一日中この調子でいられると周りの雰囲気も悪く可能性がある。

 「あぁー! もうこの話は終わり! 別の話をしよ! そうだなー・・・・・・よし! 一つだけどんな質問にも答えてあげる、これでどうだ!」

 かなり無茶な提案だったがどうやらこの提案に文句はなく、しばらく考え込んでいた。

 「えーっと・・・・・・じゃあ昨日も思ったんだけどなんで暑い日にコートなんて着てるの?」

 どうやら彩姫はこのコートが気になるようで不思議そうに見ていた。

 「コートの事でいいんだね。このコートは普通のコートと違って・・・・・・」

 「このコートは元素の精霊ヴェルズム様が前の契約者のために作った物ですね。様々な環境に適応し、属性攻撃の軽減、鎧をも上回る強度を誇るヴェルズム様の最高傑作ですね」

 急に澄んだような声が聞こえ周りを見たが彩姫以外誰もいなかった。

 「どこを見ているのですか。私ならここにいますけど」

 またあの声が聞こえ上を向くと、女性が浮いていた。

 「えっ、なんで浮いて・・・・・・いやそれよりもどこから・・・・・・」

 浮いていた女性は空中で一回転しながら彩姫の隣に移動した。

 「もしかして彩姫、私のことまだ皆さんに言っていないのですか?」

 「ごめんね。昨日いろいろあってまだ貴女のことは言ってないの」

 会話から察するに彼女が彩姫の言っていた精霊だと翔天は思っていた。

 彼女の髪は流れる水のように美しく整った顔立ちは人間のようだったが所々魚のようなヒレがあった。

 「あ、彩姫その・・・・・・隣にいるのって昨日言っていた・・・・・・」

 やっと翔天が呆然としていたことに気づき彩姫は会話をやめ、こちらを向いた。

 「うん、紹介するね。彼女は三年前に私と契約した・・・・・・」 

 「ウンディーネです以後お見知りおきを」

 ウンディーネは礼儀正しく一礼をし翔天もそれにつられて頭を下げた。

 「いやーそれにしてもビックリしたな。まさか本当に精霊と一緒にいたなんて」

 精霊と一緒にいたことを疑っていた翔天に彩姫は怒っていたがウンディーネの名前を聞いて翔天はどこかで聞いたことがあるような気がした。

 「なぁ、ウンディーネってなんの精霊なんだ」

 この世界では精霊は様々なものに宿っておりマナと同じで人々の生活に必要不可欠な存在らしくウンディーネが精霊なら何かに宿っているはずだ。

 「以外と見てわからないものなのですね。私は水を司る精霊です」

 「水の精霊ウンディーネ・・・・・・って八大精霊の一人じゃないかー!?」

 八大精霊は、地水火風氷雷闇光の八つの属性に宿り、普通の精霊とは違い世界のバランスを保つ役割をしているらしい。

 「彩姫、なんで八大精霊の一人と一緒にいるんだよ!」

 「えっさっき言わなかった? 三年前に契約したって」

 少し記憶を遡ると確かに言っていたがそれでも八大精霊と契約したと言われてもどうやって契約たのかが知りたかった。

 「で、でもどうやって契約したんだ」

 「それについては私が話しましょうか」

 ウンディーネは彩姫の隣から翔天の目の前まで移動した。

 「元々彩姫は、契約者としての素質がありその力は今までの契約者をも遥かに上回るものでした」

 そのままウンディーネは語り続けた自分と彩姫の出会いを。

 

 



 「なるほどそうやって契約したのかー」

 ウンディーネの話は長かったが要点はしっかりと押さえて話してくれたおかげで質問する必要がほとんどなかった。

 ウンディーネと彩姫が海の上で出会ったことや、彩姫の理想にたいしてウンディーネが賛同し契約したこと、信じられない出来事ではあったが目の前に本人がいるため全て事実なのだろう。

 「では、話も終わったことですし、今度は私の質問に答える番ですね。一つだけ質問に答えるのですよねよろしくお願いしますね」

 「えっ?」

 まさか話題を変えるための提案をウンディーネが出してくるとは思わなかった。

 「でもウンディーネ、ショウは既に私の質問に答えてくれたからウンディーネの質問はなしなんじゃないの」

 確かにそうだった。普通なら特別に答えてあげると言うところだが、何故かウンディーネの顔は怖く質問には答えたくなかった。

 「フフフ、彩姫の質問に答えたのはショウではなくて私だから問題ありませんわ」

 そういえばコートのことについて話そうとしたときウンディーネが翔天の知らないことも含めて詳しく話していた。

 「そういうことなので、今から一つ質問しますね」

 「は、はい」

 もう逃げることは不可能な状況だった。

 どうか答えれる範囲の質問であることを翔天は心の底から祈った。

 「では・・・・・・そのコートは一体どこで手に入れたのですか?」

 「へっ? それだけ」

 案外、簡単なことを聞いてくれて内心ホッとしていたが、なんでそんな事を聞いてきたのかはわからなかった。

 「えっと・・・・・・このコートはフレデリカからもらった物で僕もあまりわからないんだけどフレデリカが言うには、森の中で捨てられていたのを拾ったらしいんだ」

 ウンディーネは複雑そうな顔をして唸っていたが、くるりと身を翻すと彩姫の方に戻っていった。

 「なるほまど分かりました。お答えいただきありがとうございました」

 ウンディーネはあれでよかったらしいが翔天一つ聞きたいことがあった。

 「なぁウンディーネ、このコートは元素の精霊が作った物なんだろ、それを僕が持っててなんとも思わないのか」

 聞かない方がよかったかもしれないとは思っていたけれど翔天は聞かなきゃいけない気がしてしょうがなかった。

 「はい。私は別にもう関係のないことですし・・・・・・それにそのコートはヴェルズム様が前の契約者に作った物ですが前の契約者では力を引き出すことはできなかったものなので私は貴方ならもしかしたら引き出せるような気がしたから聞いたまでですわ」

 実際、翔天はこのコートが体温調整が出来るくらいの物としか思っておらずウンディーネの言った属性攻撃の軽減や鎧をも上回る強度など今日初めて知ったことだった。

 「彩姫、私は少し眠いので戻りますね。私のことを話すときは呼んでくださってもいいので」

 「うんわかった。ゆっくり休んでね」

 ウンディーネは欠伸をするやスーっと姿を消した。

 「どこに行ったんだ?」

 「私の体の中、昨日かなり頑張ってくれたからマナがすこし足りてないみたいだから補給するために私の中で眠るのよ。」

 彩姫の契約者としての力がどのようなものかはまだわからなかったが、ウンディーネと仲良くしている彩姫を見ているともしかしたらそういうのが契約者としての力の一つなのかも知れない。

 「じゃあ行こうか」

 ウンディーネが出てたからずっと立ち止まっていたためかなり時間がたっていた。

 「あっ・・・・・・あーーーーーー!!」

 時間を見ればすでに集合時間の九時まで後三分だった。

 「ヤバい・・・・・・でも今回は遅れるわけにはいけない。急ぐよ彩姫」

 彩姫の手を掴んで翔天は会議室まで走っていった。

 

 

 

 

  

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