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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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ドラッグラベール「白鳥駅前店」

ウィーンと音を立てて自動ドアが開くと柑橘系洗剤の香りと華やかなポップの色彩が視界いっぱいに広がった。「ドラッグラベール白鳥駅前店…よし」

スーツの襟元を少し整え、俺 エリアマネージャーの陣内拓海(30歳)はネクタイの締め直しとともに軽くいのあたりを押さえた

複数店舗を統括するエリアマネージャーとしての仕事は多忙だがやりがいもあり嫌いじゃない

だが決まって事務所である白鳥駅前店にくると胃の奥がきゅっと収縮する。

売り上げが悪いからではない、むしろ逆で自分の管轄の中では断トツトップの成績をたたき出しており

エリア2位の店舗にはダブルスコア以上の差である

問題は店内にいる「スタッフ」の圧がいろんな意味で高すぎることである

「あっ!エリア長だーっ!」

店内にはいってわずか数歩。コスメコーナーの棚影からパッと花の咲いたような歓声が上がった

小走りで駆け寄ってきたのは化粧品リーダーの有栖川まひろ(24歳)だ、ゆるく巻いた茶色いショートボブを揺らし、小柄な身体を弾ませて俺の目の前でピタッと止まる

「お疲れ様ですエリア長!今日は白鳥駅前店メイン勤務でしたよね!待ってましたよ~!」

「おつかれさま、有栖川さん今日も元気いっぱいだね…って距離近くないか?」

「え~?そうですか~?あっ、それより見てくださいよ~今日の私、新作のピンクオークル系のファンデと限定リップ試してみたんです。どうどう?似合ってます?」

まひろはくりっとした大きな瞳を輝かせ、ぐぐっと顔を寄せてきた。

フワッと甘いフローラルの香水とリップグロスの甘い香りが鼻腔をくすぐった。

黒いシャツの上にオレンジのエプロンをしているその姿には多くのファンが付いている

至近距離すぎる可愛らしい笑顔に思わず後ずさりしそうになる

「あ、ああ…うん、すごい綺麗に発色してるんじゃないかな?化粧品コーナーのディスプレイともマッチしているし…」

「えへへ、褒められちゃった!じゃあご褒美に今日の夜に新商品のメンズスキンケアのタッチアップ付き合って下さいね?エリア長~クマできちゃってますよ~特別に私がプルプルにしてあげちゃいまーす」

「いや俺はただちょっと寝不足で…マネージャーはあまりお客様の表にも出ないし…」

「ダーメー!エリア長のお顔のコンディション管理もコスメリーダーの大事なお仕事ですからね!」

腕をきゅっと抱え込まれそうになり俺の胃がキューっと悲鳴を上げる

相変わらずの距離感のバグり具合だ セクハラになってしまったらどうしようと思う俺

しかし…可愛すぎる 俺の脆弱な胃にはなかなかハードなパンチを食らわせる有栖川さん 恐るべし


「有栖川、売り場でエリア長になれなれしくまとわりつかないの、お客様の邪魔になるでしょ!」

静かだが、氷のように凛とした声が店内に響く

振り返ると、白衣をビシっと羽織った黒髪の美女 店舗薬局長の氷室涼香(28)が眼鏡の奥の鋭い瞳でこちらを見下ろしている

「あ、薬局長~!別に邪魔なんてしてませんよ!エリア長と大事な「店舗戦略」のお話をしてたんですー」

まひろがべ~っと小さく舌をだすと氷室はふうと小さくため息をつき受付カウンターの棚からこちらへ歩み寄ってくる、無駄のないしなやかな歩調。すれ違う男性客は思わず振り返るほどのスタイルと美貌でその醸し出すオーラは完全に調剤室の女王だ

「まったく…陣内さん、お疲れ様です…顔色が最悪ね。また本部で上から無茶なノルマでも突っつかれたの?」

「いや、氷室さんお疲れ様、ノルマというよりはちょっと移動と会議が続いててさ」

「言い訳はいいから、これ新登場の高機能医薬品だけど」

「あなたの胃痛に聞きそうな成分を配合したタイプよ、自社のPB薬もいいけれど限界ならこちらの方が良さそうよ、本当はちゃんと病院にかかってPPIとかもらった方がいいかと思うけども、なかなか忙しくてもらえないんでしょ?別にあなたが倒れたらシフト調整が面倒になるから渡すだけなんだから」

「あ…ありがとう…」

氷室の大人の気遣いに少しだけほっとしかけたその時だった


「エリア長~大変ですぅ~」

調剤室のパタパタとあわただしい足音とともに登場したのは、新人薬剤師の白石ほのか(25)だ

ふわふわした茶髪を抱えて駆け寄ってくる

「白石さん!どうしたの?そんなに慌てて」

「エリア長に一刻も早くお伝えしようとおもって考えてたんです」

ほのかは胸の前でぎゅっと握りしめ上目遣いで俺をじっと睦めた、守ってあげたくなるような清楚系天然美少女の表情にドキリとする

「エリア長の胃痛についてですぅ、薬局長のお薬で対処ってのもいいですけど…やっぱり根本的な原因は心ストレスだと思うんです!だから…私がエリア長の胃袋そのものになってしまおうかなぁーって思います」

「…ん?」

一瞬店舗からすべての音が消えた

まひろが笑顔のままビキ付きながら固まり 氷室の眉間には恐ろしいしわが刻まれる

「はい~エリア長が飲み込んだストレスを私が全部なかで受け止めて消化してあげます!今日から私が~エリア長の専属胃袋ですよ」


無邪気でクリアな笑顔でとんでもないパワーワードをぶちこんでくるほのか

横を見るとまひろが「ほのかちゃんずるい、胃どうこうより私のお手製おかゆとコスメの方が効くし!」

とかみつき氷室が「白石さん…ちょっとふざけすぎよ…」とすさまじ威圧感をだしている


「あの…あのさ…みんな売り場だから…落ち着いて」

バチバチと火花が散る美女三人の視線の中央で俺はスーツのポケットに手を突っ込んだ

カサリと音を立てる銀色の包装

自社プライベートブランドの自慢の胃薬ラベール胃腸薬プレミアム

(だめだ…今日も何包も服用するかもしれん…)

俺は手慣れた手つきで胃薬の封をきりウォーターサーバーから水をとり喉へ流し込んだ


胃薬を流し込んだその時

ピピピピピピピピ…と店内にけたたましいアラートが響き渡った

夕方時、近隣オフィス街や住宅街から客が一気に流れ込む、この店舗最大のピークタイムだ

それと当時にレジカウンターのほうから険悪な声が上がる

「おい…このリップ、チラシだと300円引きってかいてあっただろ?なんで割引になってねーんだ?」

「申し訳ございません…ただいま確認しますので…少々お待ちください」

レジに入っていた新人パートさんが青白い顔で頭を下げているのが見えた

(まずいな…レジ設定ミスかポップ貼り換え漏れか?)

「白石さんレジフォローに入って、あのお客様は俺が対応する」

「はーいエリア長3番レジ開けますね~お待ちのお客様~こちらへどうぞ!」

俺は即座に現場にかけつけ起こっている男性客の前で深々と頭を下げた

「大変申し訳ございません、エリアマネージャーの陣内と申します、ただちに事実確認いたします、有栖川さん本日のビューティーチラシのPOSデータ確認して」

「かしこまりました」

まひろは素早い手つきでレジ端末を操作し一瞬でデータを呼び起こす

「エリア長メーカー側のデータ反映漏れですねレジ側のJANコードは未更新ですがレジ300円引きで間違いないようです」

「大変お待たせして申し訳ございませんでした、こちらのデータ手配の不備でご迷惑をおかけしました、こちらのお会計300円引きでご対応いたします」

迅速な対応で男性客の表情は和らいだ

「…ちゃんと設定してくれよー…俺が変なこという客みたいになっちまったじゃねーか、でも対応できてほかのお客にも影響なくなってよかったぜ」

「ありがとうございます、またのご来店をお待ちしております」

「おうよ」男性客はまひろのファンなのか…また来ると言っている


男性客は笑顔で去りレジ混雑もほのかの接客でスムーズに解消されている

まひろはレジ台のむこうからニヤっとわらってどや顔ウインクを投げてきた

「ふふーんエリア長どうですー今回は私と完璧なコンビネーションで解決しましたよー」

「助かったよ有栖川さん白石さんナイスフォロー」

「ふふ、有栖川さん・レジ手伝ってほかの客さばいたのは私ですからねー」とほのかは言う

「店舗のレジとかなかなかほかの薬剤師だとできなんですよー私がフォローに入ったから有栖川さんがデータ拾えたんだからねー」

「むーなによー」 なぜかまひろとほのかのバトルが勃発しようとしている中


今度は調剤室のほうから別の声が上がっている

「あのー…不安があって」

不安そうにたたずむ年配の女性

すこへすっと薬局長の氷室が寄り添った

「佐藤様どうされましたか?大丈夫ですよ、こちらへどうぞ」

涼香は優しい顔で目線を低くして患者さまに寄り添った

「このお薬なんだか水分に気をつけろとか・低血糖がでたりするからと説明書にもネットにも書いててなんだか怖くなったのよ…先生もミトコンドリアがどうとかわけわかんない説明してくるでしょ?飲むのがこわくなちゃうわ・なんだか大きいし」

「このお薬はですねインスリンの分泌を助けながら体全体のエネルギーの工場(ミトコンドリア)を元気にして糖を燃やしやすくお薬ですよ私たちの体の中にはエネルギーを作り出す工場があるんです、それがミトコンドリアというものです・先生がお話していたものですね、そこを活性化します、工場が元気になるとエネルギーとして糖を燃やしてくれるようになります血糖が高い時はインスリンの分泌を促してインスリンが効きにくくなっている筋肉にはインスリンを効きやすくします・低血糖はどのお薬も少なからず起きる可能性はありますが比較的安全に使用できるんですよ・もともと服用されていたメトホルミンというお薬より腎臓にも負担がかかりにくいタイプとなっています」

「そうなの?いままで飲んでた薬よりいいやつなの」

「そうですね…佐藤様の腎臓機能を考慮して先生も選んでくれたんだと思いますよ」

「わかったわ…飲んでみる・ありがとう氷室ちゃん」


さすがは氷室薬局長だ…俺は薬局長に見とれていた

「何みてるのエリア長?」

「いや何でもないよさすがだね」


怒涛の時間は過ぎていく


俺は手早く今回のPOSエラーを本部システムのサーバー同期漏れを確認し

本部へ修正リクエストを送信し調剤補助もこなした


「三人ともありがとう各自の素早い判断のおかげでクレームや患者不安も取り除けて今日は大事にいたらなかったよ」

俺の言葉に三人は顔を見合わせ満足そうにしている


「ふふ、エリア長にほめられちゃった!ね、エリア長、この後残業作業ありますよね、私手伝ってあげますよ」 まひろが真っ先に手を挙げる


「何言っているの?有栖川、コスメコーナーの棚卸集計が残っているでしょう、無理はいけないわ、陣内さん、私ならより書類作成をサポートできるわ」涼香が静かにだが譲らないプレッシャーをかける


「あ~ずるいずるい二人とも!私だって私だってエリア長の疲れとってあげたいです~肩とんとんしましょうか?」ほのかまで参戦してきた


「「「エリア長、誰と一緒に残業しますか!?」」」

迫りくる三人の美貌と逃げ場のないプレッシャー


「あ…あの…大丈夫だから、みんな今日はありがとう…みんな上がって…」


「「「ダメよ!/です!!」」」

一歩さがった俺の背中に冷汗が流れる

業務中の完璧な対応はどこえやら店内は甘く危険な争奪戦がおきる

(くっ…たのむぞラベール胃腸薬プレミアム…投与…開始…)

俺は逃げるように3人から逃れ胃薬をぶち込んだ

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