予想通りにはいかない
1着目の着替えは、佐藤さんが担当した。
モデルさんの着替えをサポートする。
やることは単純だ。
指定された番号の衣装をモデルさんに着せる。
それだけ。
頭の中で何度もシュミレーションする。
でも、やっぱり怖い。
何が起こるかわからない。
自分が着替えを担当しなくてすんで、
正直、ホッとした。
私は引き続き残りの衣装のアイロンをかける。
1着目の着替えが終わると、モデルさんと一緒に佐藤さんは撮影現場に向かった。
次は2番の衣装を着るはず。
私は2番の衣装を確認した。
絵コンテと照らし合わせる。
ワンピースに帽子、パンプス。
間違ってない。
念のため3番の衣装も確認しておく。
2着も確認しておけば、万が一スピードが上がっても余裕がある。
(……これで安心)
そんな風に思っていた。
モデルさんと佐藤さんが戻ってくる。
「次、4番!」
スタイリストの声が飛ぶ。
何で?
次は2番のはずじゃ?
私は一瞬フリーズする。
「早く準備して!」
「は、はいっ」
「4番……!」
私は慌ててラックを見た。
4番。
ワンピースじゃない。
ジャケットにブラウス、スカート。
靴も違う。
急いでラックから衣装を外す。
帽子は?
バッグは?
絵コンテをめくる。
「あっ……これだ」
アクセサリーもある。
慌ててケースを開ける。
どれだ。
これじゃない。
こっち?
指が思うように動かない。
「まだ?」
スタイリストの声が飛ぶ。
「す、すみません!」
必死にアクセサリーを探す。
「それ違う。それじゃなくて隣」
「あ……はい!」
佐藤さんが横から素早く取ってくれた。
「ありがとう……」
小さく呟く暇もない。
衣装を抱え、靴を持ち、アクセサリーをまとめてメイク室へ走る。
「お願いします!」
モデルさんが立ち上がる。
私は服を広げる。
ハンガーを外し、ファスナーを開ける。
ただ着替えを手伝うだけ。
頭では分かっている。
でも、緊張で手が震えた。
「大丈夫?」
モデルさんが小さく笑う。
「す、すみません」
「焦らなくていいよ」
その一言に、少しだけ肩の力が抜けた。
着替えが終わると、佐藤さんがモデルさんと撮影現場へ向かう。
私は急いでラックへ戻った。
次は何番になるか分からない。
2番かもしれない。
5番かもしれない。
もう、絵コンテの順番なんて当てにならない。
私は残っている衣装を一着ずつ見直し始めた。
「次、7番!」
また予想は外れた。
撮影スピードもどんどん速くなる。
「やっぱり2番に変更!」
また走る。
また衣装を探す。
また着替えを手伝う。
気づけば私は、絵コンテを見る暇もなく走り回っていた。




