表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/22

卒業するためだけの学校

その後、学校には通った。

卒業するためだけに。


留年しないように、

単位を落とさないように、

課題だけはちゃんと出した。


それで十分だった。


下級生に、目立つ男の子がいた。

茶髪で、少し不良っぽい。


好きなボクシング選手に、

少しだけ似ている。


だから私は、思うことにした。


(あの子が好きなんだ)


そういうことにしておけば、

友達との話も普通に続く。


笑っていられる。


普通になったフリ。


それでよかった。


結衣のことは、なかなか忘れられなかった。


同じクラス。

同じ友達のグループ。


見ないようにしても、

どうしても目に入る。


平気なフリをしても、

やっぱり辛かった。


結衣がいるときは、

私はグループから少し離れる。


「ちょっとトイレ」


そんなふうに言って席を立つ。


廊下でスマホを見たり、

階段の窓から外を眺めたり。


一人で時間をつぶす。


そうしていれば、

何とかやり過ごせた。


「花音ちゃん、あの子中庭にいるよ」


気を使った友達が声をかけてくる。

指差した先には、下級生の男の子。


「……本当だ」


「見れてよかったね」


「うん。ありがとう」


私は中庭を見たまま、少し笑った。


でも――


胸は、何も動かなかった。


友達はいる。


けど、誰も本当の私を知らない。

だから、本当の友達はいない。

でもそれでいい。

また結衣みたいに好きになって、困らせたくない。

女の子とは距離を取る。

それでいい。

そう思っていた。


ある日。


グループの中で一番落ち着いていて、

成績もトップの女の子が、私の前に立った。


いつも静かで、

あまり感情を表に出さない人。


その子が言った。


「花音。二人で話さない?」


少しだけ驚く。


「……うん」


結衣のこと、聞かれるのかな……


私は覚悟した。


でもその子は、私の隣に座って

普通にノートを開いた。


「今日の数学、難しくなかった?」


「サッチでもわからないことあるの?」


「全然あるよ。

むしろ、わからないことばっか」


「そうなんだ」


そんなふうに、

授業のことや課題のこと。


何でもない話をするだけだった。


拍子抜けする。


サッチと、こんなに沢山話したのは初めてだった。


優秀なのに、

飾らない。


さっぱりしていて、

話していて気が楽だった。


もっと固い人だと思っていた。


結衣のことも、何も聞かない。


その優しさが、

逆に少し苦しかった。


「ごめんね……結衣と仲良くできなくて」


グループに迷惑をかけてるのは分かっていた。

でも、普通にできない。


別れてから、もう何ヶ月も経つのに。


自分が情けない。


「別に気にしなくていいよ」


サッチは、あっさり言った。


サッチと話していると、

呼吸が少し楽になる。


そんな感覚だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ