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リトライ;リバース;リサイクル  作者: 四十九院紙縞
第4話 存在価値

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(19)――「……ゆーびきった」

【語り部:在江在処】


「――取引だ、在江在処」

 と。

 ぼんやりと今後の行動指針を立てていたおれを呼ぶ声があった。風視ちゃんだ。

 しかし風視ちゃんはもう余力もないのか、仰向けに倒れていたおれの上半身に覆いかぶさり、そのまま数秒ほど動かなかった。それでも気力を振り絞って上体を起こすと、おれの胸倉を掴みかかってきた。

 びっしりと返り血を浴びた風視ちゃんの頬に、次々と大粒の涙が伝っていく。そのうちの数滴が、おれの顔にぽたぽたと降り注ぐ。そのさまがひどく煽情的に見えて、ほとんど条件反射で下半身に血が集まろうとしたが、行き場を見失った血液がだらだらと腹から零れていくだけだった。

「とりひき……?」

 流石のおれも、身体を真っ二つにされては声を出すのも一苦労である。

 しかしここで、会話をしないという選択肢はない。好きな子が話しかけてきてくれているのだ、無視するわけがないだろう?

「お前が死ねば、次の人格が出てくる。さっき、そう言ったでしょ」

 おれが頷くと、風視ちゃんは片手で涙を拭って押し止め、それなら、と続ける。

「次の人格は、五味空気にして」

「……じょうけん、は?」

 そんなことをして、おれになんのメリットがあるというのだろう。

 おれからの問いかけに、風視ちゃんは下唇を強く噛み、それが苦渋の決断であるかのように言う。

「次にお前が出てきたとき、私が必ず、お前を殺す」

「……ひひっ」

 なんてことだ。

 ただ一度、好きな子に殺されたら、それで満足できたのに。

 おれは今、望んでいた以上の幸福を与えられようとしている。

 死んでは蘇りを繰り返すだけの人生に、一筋の光が差し込んだのだ。

 風視ちゃんは五味空気に会う為に再試行を試み。

 おれは風視ちゃんに殺されたくて再生し。

 五味空気はその為に、何度だって再利用されるのだ。

 何度も。何度でも。

 それは、なんと素晴らしい循環なのだろう。

「じゃあ、やくそく」

 ほとんど感覚のない右手を動かし、小指を差し出す。すると、風視ちゃんも素直に小指を絡めてくれた。その指の、なんと愛しいことか。

「ゆーびきーりげーんまん、うそついたーら、はりせんぼーん、のーます」

「……ゆーびきった」

 静寂に包まれた廃工場に、約束の呪いが反響する。

 指切りをして、そして。

 風視ちゃんは再びおれに覆いかぶさるようにして倒れ、意識を失った。

 そのあとを追うように、おれも意識を手放す。

 化物だって幸せになれるんだ、なんて思いながら。

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