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リトライ;リバース;リサイクル  作者: 四十九院紙縞
第3話 約束

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33/63

(10)――いやに可愛らしいあだ名をつけられてしまった。

【語り部:五味空気】


 紙や本の山をくぐり抜けて辿り着いた、その先。

 そこには、なんとも言い難い攻防が繰り広げられていた。

「待って闇中(やみなか)、早まっちゃ駄目。お願い」

 真っ青な顔をして情報屋の腰元にしがみつき、懇願する少女と。

「世間様からしたら引きこもりのニートそのものだもんねそりゃあゴミクズみたいな僕のお願いなんて殺人鬼だって聞いちゃくれなくて当然だよ……僕には誰かにお願いをして良い立場になんてなかったってことなんだ……ねぇ(きよ)っち離してくれないかなぁ……そんな風に女子高生から全力で腰に抱きつかれちゃったら興奮して死ぬに死ねなくなっちゃうよ僕はこれから首を吊って死ぬんだ邪魔はしないでほしい……」

 呪詛でも唱えるかの如くぶつぶつと呟きながら、天井から吊るされた不穏な輪っかに首を通して揺られている、ぼさついた髪の男。

「……」

 そこに駆けつけた、セーラー服姿の俺ときた。

 もう、なにがなんだか。

「――あ」

 しかし意外にも、この状況下で情報屋は俺の姿を認めると、ぴたりと動きを止めた。

 少女がその隙を見逃すことなく、手慣れた動作で情報屋を下に降ろす。かなり乱暴な扱いだったが、当の情報屋と言えばそれに文句を言うでもなく、今しがた行われていた少女との攻防戦そのものがなかったかのように、ひょいと立ち上がった。そうして満面の笑みを浮かべると、茫然と立ち尽くす俺のほうへと近づいてきたではないか。

「やあやあ初めまして、君が噂の殺人鬼だね! 僕の名前は黒坂闇中。闇中って呼んでよ」

 気さくな笑顔と共に、勝手に俺の手を取って握手を交わす情報屋。

 かなり着古したと思われるオーバーオールに、よれた長袖Tシャツ。『情報屋』というより『機械屋』のほうを連想させる格好だ。しかし力仕事とは無縁そうな線の細い身体つきが、彼を情報屋であると高らかに宣言している。

「それで、君は名前を教えてくれないのかい?」

 数十秒前まで首吊り自殺をしようとしていたとは思えないほど無邪気な笑顔を浮かべ、情報屋はまじまじと俺を見上げて尋ねた。彼が猫背だから正確にはわからないが、しゃんと背筋を伸ばしたところで、その身長は少女より少し高い程度と言ったところだろうか。

「俺は……五味空気」

「うん知ってる。みぃくんって呼ばせてもらうね」

「は?」

 異常な雰囲気に気圧されそうになりながら、それでもどうにか自己紹介をすると、いやに可愛らしいあだ名をつけられてしまった。なんだよ、みぃくんって。

「いやあ、しかしながらみぃくん、僕の見立て通りの着こなしだね。かっわいい!」

 俺の反応など完全無視で、情報屋はぺらぺらと喋り続ける。

「みぃくんはスラっとしてるから、着せるならセーラー服だって思ってたんだ。これなら機関銃もばっちり映えそうだったなあ。でもごめんねー、モデルガンの類は持ってないんだ。次の機会があるようだったら用意しておくよ。まあ君に次があるのかはわからないけど! あっははー。あ、ちょっとそのままストップね。数枚写真を撮らせて欲しいんだ。僕はカメラ取ってくるから、その間に清っち、みぃくんのメイクをお願いできる?」

 言うが早いが、情報屋は部屋の奥へと姿を消した。どうやら、あの紙でできた山々のどこかに、カメラが埋まっているらしい。

「それじゃあ、そこに座ってもらえますか?」

 気づけば、少女はどこからか持ってきていたメイクボックスを抱えて、俺の隣に立っていた。完全に情報屋のアシスタントと化している。

「ああ、うん……」

 言われるがまま、少女に指示された通りにする。少女が「そこ」と指定したのは、情報屋が首を吊る為に使っていた椅子だったが、動転し過ぎて、座るまで全く気がつかなかった。

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