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リトライ;リバース;リサイクル  作者: 四十九院紙縞
第3話 約束

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30/63

(7)――「貴方が記憶を取り戻したら、正直に全部話すって、約束してください」

【語り部:五味空気】


「……ん? てことは、まだ俺が犯人だって確定していないってこと?」

「はい。まだ半分半分と言ったところです」

 果たして、少女はけろりとそんな風に答えるのだった。

「あの笑い声がした近くに居たのが貴方だったから疑っている――というのが現状です。今の話を聞いていた貴方の表情は、いまいちピンときていないようでしたし。まあそれは、貴方に記憶がないだけからかもしれませんけれど」

 ひとつ、約束してください。

 少女がそう言うと同時に、電車が止まってドアが開いた。

 乗車する人はいない。

 車内には、変わらず俺達二人だけ。

「貴方が記憶を取り戻したら、正直に全部話すって、約束してください」

 それは、完全なる宣戦布告だった。

 確かな証拠さえ揃えば、少女は本気で俺を殺す覚悟があるのだ。

 復讐の為には死ねない少女が、復讐相手に命を助けられ、復讐を果たす。そうだとしたら、なんて滑稽なのだろう。喜劇にすらなり得ない。

「――良いよ、わかった」

 しかし俺の感情とは裏腹に、口は勝手に肯定の意を示していた。

 右手の親指と人差し指で拳銃を模し、架空の銃口を少女に向ける。

「もし俺が犯人だったとしたら、そのときは全力で()()()()()

 扉が閉まり、電車は発車する。

 たたん、たたん、とリズムを刻んで加速していく車内で、少女はゆっくりと口角を上げた。笑っているのでは、ない。少女の浮かべた表情は、獲物を見つけた肉食獣のような――ただただ猟奇的なそれだった。

「望むところです」

 それは俺にとってひどく魅力的なものだったが、そのまま見続けていたら気がおかしくなりそうで――堪らず、右の手の平を少女に向けるかたちでそれを遮った。

「?」

 唐突な行動に、少女は小首を傾げる。

「あ、いや――えっと……」

 どうしたって不自然になってしまった右手を誤魔化す為に、小指だけを立てて『指切りげんまん』のかたちを作る。

「じゃ、じゃあ、これで約束しよっか」

 少女はそれでも不審げに俺と俺の右手とを見比べていたが、納得がいったのか、ぽんと手を打つ。

「指を詰めるんですね」

「違うよ!!」

 思わず右手を引っ込めた。

 可愛い顔して、なんて物騒な発想をしやがるんだ。

 おもむろに少女が鞄へ手を伸ばしたのも、刃物を取り出そうとしたのかもしれないと思うと、余計に鳥肌が立つ。

「約束って言ったら指切りげんまんでしょ。知らない?」

 記憶喪失の男に諭されたのが不満だったのか、少女は頬を膨らませて、それくらい知ってます、と言う。

「指切りげんまんの『指切り』は、そもそも遊女が愛情の不変を誓うものとして小指を切って渡していたのが由来で、『げんまん』は漢字で書くと『拳万』――つまり約束を破った際には拳で一万回は殴って制裁を与えるという……」

「もう良いよ! 指切りげんまんはなしっ!!」

 犯人と確定してないうちから殺す気か。

「――約束、ですからね」

 俺の目をじっと見つめて、少女は言う。

 懇願するように。

 或いは、強要するように。

「私、嘘は嫌いなんです。それが私の為とか、そういうのは要らないので――絶対に、正直に全部話してくださいね」

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