表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リトライ;リバース;リサイクル  作者: 四十九院紙縞
第2話 能力検査

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/63

(15)――「貴方を殺して、一体誰に、どんなメリットがあるんでしょう?」

【語り部:五味空気】


「貴方の回復力がどれほどのものかという検証実験については、最終手段として置いておくとして……」

「えっ、ちょっと?!」

 聞き返さずにはいられなかった。

 回復力の実験って、とどのつまり、むやみやたらに切り刻まれたりすることを指すんじゃないのか? そんなのが計画段階とは言え、既に存在してるのか……?

「貴方を殺して、一体誰に、どんなメリットがあるんでしょう?」

 しかし少女はその点について特に言及することなく、そんな問題を提示する。

「仮に貴方が不死身じみた回復力を持っているとしても、わざわざ殺されることにメリットなんてないでしょう? とすれば、貴方が死ぬことで得をする別の誰かが居ると考えるのが妥当です」

 俺が殺される理由。

 それにより発生するメリット。

 こめかみに手を当て、それらしい姿勢をとって考える。

「……殺人鬼による被害者が、殺人鬼に一矢報いる為とか?」

「加害者側が、一矢報いさせる為にわざと生き残りを作るなんて、無駄が過ぎませんか? あれだけの技術があれば、一気に全滅させたほうが楽に決まってます」

「だよね」

 思いついたことをそのまま口に出しただけなので、俺もけろりと同意する。というか、もしもそれがずばり正解だったとしたら、記憶を失う前の自分の性癖を疑う。被虐嗜好のハイエンドじゃねえか。

「あ、一人居るかも。理由はわからないけど、俺が殺されて得しそうな奴」

「誰ですか?」

 俄然興味が湧いたように、ずいっと距離を詰めて尋ねる少女。その際、またあの華やかなシャンプーの香りが届いた。それに惑わされてしまわないよう、小さく深呼吸をして言葉を紡ぐ。

「夢で俺が殺されるときには、決まって声が聞こえるんだ」

「声、ですか」

 相槌を打つ少女に頷いて見せ、俺は夢の内容を思い出しながら、慎重に話を進める。

「夢の中で俺は、死体に囲まれて『誰か』を待ってる。でも結局、待ち人は来てくれなくて、その代わりにどこからか声がするんだ」

「その声の主が待ち人なのでは?」

「そうかもしれないけど、たぶん違う。口ぶりからして、俺とあいつは同じ『誰か』を待ってたと思うんだ。でも『誰か』は来ない。するとそいつは、残念そうに笑いながらいなくなって、俺は殺される――」

 ――それじゃあ今回もこれでサヨナラだ、五味空気。

「――そうだ、あいつは俺の名前を呼んでた。確かに、五味空気って!」

 思い出しながら話しているうち、俯いていた顔をがばっと上げる。すると真剣な面差しの少女と目が合った。その漆黒の瞳を、艶やかな唇を、こんなに間近で見たのは初めてで――改めて、この子すげえ可愛いなあなんて場違いな感想を抱いた頃になって、少女が顔を真っ赤にしながら一歩下がったのである。

「?」

「い、いえ、なんでもありません」

 驚いて飛び退いたにしては反応が遅過ぎるような気もしたが、少女がそう言うのであれば深く追求はすまい。少女のほうもそのつもりらしく、こほんと仰々しく咳払いをして、それじゃあ、と話を続けるようだ。

「今の話を総合するに、貴方には共犯者がいる可能性が高いということですね。それにしたって、同じ人物を待っているのに、貴方だけが殺されるのは意味がわからないですけど……」

 ちなみに、と少女は尋ねる。

「その声の主の容姿は、思い出せませんか?」

「それは――」

 思い出せない、というよりは、見たことがないと言ったほうが正しい。

 そいつの声は、どこからともなく聞こえてくるのだ。記憶に靄がかかっているとか、そういう類のものではなく、本当に声だけ。どこかで聞いた覚えのあるような気もするが、それがどこのどいつかまでは、喉まで出かかっている癖して微塵にも思い出せない。

「そうですか」

 俺の曖昧な回答を聞いて頷いた少女は、写真を片づけると、すっくと立ち上がった。どうやら、今日の尋問はこれで終わりらしい。

「その謎の声の主については上に報告して、もう少し詳しく調べてもらいます」

 ようやく手掛かりらしい手掛かりが出て良かったです。

 少女はそんなことをぼやきながら、写真を鞄に仕舞い、パイプ椅子も元の場所に戻した。

感想や評価等、お気軽にどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ