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一方その頃 〜『炎の凱旋』パーティー側7〜


 使えない冒険者達とダンジョンを進み、遂にアルバートは深層ボスがいる場所へと辿り着いた。

 故郷を遠く離れ、とある理由でドラゴンを探し回り約数年。たった一人でこの世界を彷徨ってきた。

 しかし、未だに目的を達せずにいる。


 目の前に現れた鋼色に輝く巨体。

 アルバートは期待に満ち溢れた瞳で、こちらに鋭い眼光を向ける深緑の瞳を見据えた。

 

(今度こそ……今度こそ僕は『器』になれるはずだ)


 だが、その執念じみた心の声はすぐにかき消された。

 

 まるでこの空間に満たされた空気を掻き乱すかの様に、ドラゴンはその大きな両翼を動かす。

 最強魔獣と恐れられているドラゴン。

 その巨体から生み出された暴風は、上級精霊を使役しているアルバートですら防ぐことで精一杯だった。

 最初こそは拮抗していたものの、すぐにアルバートの立場は劣勢へと変わっていく。

 

(僕が押されるなんて、そんなことありえない!)


 様々な魔獣と戦い勝ち続けてきたが故に、アルバートは完全に自分が最強だと思い込んでいた。

 負け始めているこの状況が信じられず、焦りと怒りで感情が昂る。


(クソッ! 使えない奴め!)


 怒りの矛先は、使役しているサラマンダーへと向かっていく。

 命令に従い懸命に炎を出し続けている眷属を、アルバートはキッと睨んだ。


「何やっているんだ! それでも上級精霊であるサラマンダーかっ!」


 唾を飛ばしながら、鬼の形相で吐き散らした。

 普段は物静かなアルバートが、まるで別人格である。


「奴を服従させ契約を結べば、僕も器になれるんだ! ()()()()!」


 最強魔獣であるドラゴンと契約を交わし、眷属にする。

 それこそが、アルバートが旅をする真の目的であった。

 

 苦戦を強いられる中、自分の過去を思い出す。

 幼い頃から魔力量がずば抜けていたアルバートは、「王の器になれ」と周りの者達に言われ続けてきた。

 だから、その期待を胸に故郷を離れ、ここまでやって来たのだ。


(僕には才能がある! そう、王の器の才能が!)


 この劣勢の状況下でも、そう信じて疑わない。

 幼い頃から刷り込まれてきた考えは、そう簡単に変わることが無かった。


 しかし、自体は一向に良くならず、ドラゴンに押されたままだ。

 

「早くしろ!」


 そう叫ぶが、サラマンダーには限界が近づいてきていた。

 苦しげに呼吸を繰り返し、生み出す炎も安定しない。

 すると、劣勢のまま耐え忍んでいた炎の攻撃が、ジワジワと暴風に侵食され始める。


(なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ!)


 ここまできてやっと、アルバートの感情に変化が見え始める。

 負けるかもしれない。

 突如として頭の中に、その言葉が姿を現し始めたのだ。


(嘘だ! 認めない! 認めないぞ! 全部、全部、使えない眷属のせいだ!)


「この使えないクズが!」


 アルバートがそう叫んだ時だった。

 風を切る音とともに、もすごいスピードで白銀に輝く何かが、対峙している両者の間に割って入ってきた。

 ドシッドシッという地鳴りを響かせたかと思えば、「グラああああ!」と大口を開けて鳴く。


「は?」


 アルバートは混乱し、思わずそう声を出していた。

 それもそのはず。

 なぜか、目の前に()()()()ドラゴンが加わったのだ。

 どこからともなく現れたその存在に、動揺を隠せない。


「一体、これは……」


 戦いを繰り広げていた両者とも攻撃をやめ、新たに加わったドラゴンに視線を向ける。

 と、次の瞬間、背後から近づいてくる気配を感じ取り、アルバートは慌てて後ろを振り返った。


「なっ!」


 もう一体のドラゴンの出現に気を取られ、完全に隙を作ってしまっていた。

 相手はすぐ側まで迫っており、慌てて攻撃しようとするも間に合わない。 


「すまないが、寝ててくれ」


 聞き覚えのない声と同時に、アルバートの顔に布が押しつけられる。

 

「なんなん……だ…………これ……くそ…………」


 抵抗することもできず、アルバートの視界は閉ざされていくのだった。


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