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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十章

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犯人の正体は

そして迎えた休息日。


これが終われば夏節も草期に突入する。


いやぁ一年早いなぁ。


子供が産まれてから今まで以上に早くなった気がする。


気付けば季節がうつろい、暦が変わり、子供が成長している。


その分俺は老けているわけだけども、老けていられない状況でもある。


まだまだ30代。


やらなきゃならない事が盛りだくさんだからな、家族の為にも頑張らねば。


「無事に到着しそうだな。」


「子供たちを連れて泊りなんて久々です。」


「だからと言ってあの量の荷物は不要です。まったくリア奥様と来たら。」


「仕方ないじゃないですか、あれがもし無かったらと思ったらつい・・・。」


「私もなんとなくその気持ちが分かるようになってきました。今産気づいたらどうしようとか、そうなった時アレがあったら、とか思ってしまいます。」


「そうですよね!」


エミリアの考えにニケさんが賛同したことでいつも以上に笑顔になるエミリア。


リュシアがそれを見て同じように笑った。


「無ければ無いで何とかなる。もちろんあるに越したことは無いが、意外と何とかなるものだぞ。」


「シルビアは引き算で生きていますもんね。」


「その点エミリアは足し算だな、だから二人でちょうどいいんだ。」


そういう考えもあるのか。


荷物の少ないシルビアと、荷物の多いエミリア。


足りないものをエミリアが補充し、その分シルビアが良く動く。


え、お前は何してるのかって?


その足したり引いたりした荷物を持ってるんだよ。


結構重いんだからな。


子連れは荷物が多くなる。


日帰りならまだしも泊りになると余計にだ。


向こうで色々準備してくれているだろうけど、俺も迷惑かけないようにしなきゃとか思っちゃうもんなぁ。


その点シルビアは向こうが了承しているのであればそれは迷惑ではないという考え方だ。


もちろん無用な迷惑はかけないようにするけれど、用意してもらったんだしありがたくつかわせてもらおうという感じだな。


色々な考えがあっていいと思う。


結論だけ言えば、他人に迷惑かけなければいいんだ。


それさえ守れば皆幸せになれる。


「では私は何なのでしょうか。」


「ユーリは両方だな。足りなければ補充し、余れば提供する。自分である程度完結できる感じだ。」


「なるほど。」


「頼る所は頼るその辺割り切っている部分はシルビアよりですね。」


「私からしてみれば用意してあるものを使わない理由が分かりません。」


そういう所だぞ。


まぁ、実際その通りなので非常に合理的なタイプと言えるだろう。


それが子供が生まれてどう変わるのか、ちょっと楽しみだったりする。


「見えてきたぞ、サンサトローズだ。」


「ほらリュシア、今日は良く見えますよ。」


「あい!」


「シルカは・・・外の景色に夢中か。」


「流れる景色が楽しいんでしょうね、普段こんなに早く動くことはありませんから。」


目をキラキラさせて流れる景色を追っている。


今度馬に乗せてやってもいいかもしれないな。


彼女なら喜んで乗せてくれるだろう。


いつもなら城門で降りてププト様のお屋敷へ向かうのだが、今日は馬車に乗ったまま向かう事になっている。


騎士団の兵士が前を誘導してくれるので非常にスムーズだ。


子供がいるからとププト様が気を使って馬車での移動を許可してくれた。


ほんと助かります。


「しかし、何故家族全員なんだろうな。」


「わかりません。決闘の件だけであれば私だけで良いと思うんですけど。」


「懐柔する気でしょうか。」


「懐柔した所で我々は決闘に参加しないぞ。」


「単にお詫びか何かなのではないでしょうか。」


「お詫びと言っても我々は今回の件にほとんど関知していないからなぁ。」


「そうなんですよねぇ・・・。」


だから謎なんだ。


ユーリの言う通り懐柔する気なのであればわかるが、これまでのドーン氏の行動からそれは無いと言い切れる。


となるとニケさんの言うようにお詫びという可能性は高くなるが、何の詫びなのか見当もつかない。


まったく頭が良すぎる人の行動は読めないから困る。


「それと同じことを他の方々も思っていますよ。」


「ですよね。」


「シュウイチさんもその気がありますから。」


「あ、私もその一人ですか。」


「むしろ自分がそうでないと思っていたのがすごいな。シルカ、お前の父親はすごい男なんだぞ。」


「そうですよ。家族の為、たくさんの人の為に頑張ってきたんです。」


突然始まる父親自慢。


あの、恥ずかしいので勘弁してください。


そんなに偉い人間じゃないですから。


馬車なのでそんなに時間はかからないが、ププト様のお屋敷につくまで延々と褒められ続け背中がかゆくなってしまった。


慌てて馬車から降りたのは言うまでもない。


も、もちろん子供をおろすためですよ?


「ようこそお越しくださいました。ドーン様はもうお着きですので、そのままお屋敷にお入りください。」


「おはようございますテナンさん。」


「さあさあ皆さんようこそお越しくださいました。リュシア様もシルカ様も大きくなられましたね。」


「ジジ!」


「ジッジ!」


「こらこら、テナンさんはジジじゃありませんよ。」


先に降りた子供たちがテナンさんの足に絡んでいく。


その頭を優しく撫でるテナンさんの顔はいつもの最強執事ではなく一人の人だった。


「おっと、恥ずかしい姿をお見せしました。」


「とんでもありません、子供達が失礼しました。」


と思ったらすぐにいつもの真面目な顔に戻ってしまった。


だが俺は優しく二人の頭を撫で続けている手を見逃さない。


「ほら、行くぞシルカ。」


「リュシアも、バイバイしようね。」


「バーバイ!」


「バイ!」


母親に抱き上げられ暴れることなく四人はお屋敷へと向かう。


後はユーリとニケさんを降ろせば終了だ。


「有難うございますご主人様。」


「お腹は問題ありませんか?」


「今は寝ているようで静かです。ここでしたら先生がすぐ来てくださいますのでいつ陣痛が来ても大丈夫ですね。」


「それだけは勘弁して下さい。」


この状況でさらにユーリが産気づくとか地獄か?


「有難うございますイナバ様。」


「ニケさんも大丈夫ですか?」


「お腹の張りもありませんし大丈夫です。」


「体調が悪ければお休みされる部屋も用意しておりますので、遠慮なくお声がけください。」


「その時はよろしくお願いします。」


まさに至れり尽くせり。


この状況で一体何を話すというのだろうか。


わからなさすぎる。


ニケさんとユーリの手を取りながら屋敷へと入ると、入り口で早速ププト様が俺を待ち構えていた。


「やっと来たか。」


「今日はお世話になります。」


「今回は場所を提供するだけだ、この街で一番安全かつ他人に聞かれない場所はここしかないからな。」


「そういう話なんですか?」


「聞いてないのか?」


「家族全員で来てくれとだけ聞いていますが・・・。」


「なるほど、そういう塩梅か。ともかくお前は応接室だ、婦人方は食堂に向かってくれ。」


「食堂に?」


「そういうお達しなんだよ。」


お達しって、ここはププト様の屋敷ですよね?


一体何がどうなってそんなに下手なんだろうか。


まさかドーン氏と知り合いなのか?


弱味を握られているとか?


うーむ・・・。


ま、行けば分かるか。


ユーリとニケさんは食堂に、俺とププト様は応接室へと移動する。


道中何か話しかけてくると思ったが終始無言のまま目的の場所についてしまった。


「後はお前達だけでやってくれ、俺は食堂に行く。」


「え、ププト様は?」


「俺は部外者だからな。言っただろ、場所を貸しただけだって。」


「・・・わかりました。」


「別に含みも何もない。今日お前達を呼んだのはお前の可愛い子供達の顔が見たくなったからだ。」


「そういう事にしておきます。」


「せいぜい頑張れよ。」


ポンポンと肩を叩いてプロンプト様は食堂へと来た道を戻って行った。


一体何を頑張れというのだろうか。


「失礼します。」


「どうぞお入りください。」


中からドーン氏の返事が返ってくる。


大きな扉を開け一番最初に視界に入ってきたのは、笑顔のドーン氏。


それからやっと来たという感じのメルクリア女史。


最後に、初めて見る女性が一人ドーン氏の横に座っていた。


俺の席は・・・メルクリア女史の横。


ま、当然だな。


「とりあえず掛けてくれ、今飲み物を・・・。」


「お待たせいたしました。新しい物をお入れしますので皆様どうぞそのままで。」


ドーン氏が指示を出す間もなく、テナンさんが淹れたての香茶を持ってやって来た。


さすがテナンさん。


でもさっきまで馬車を移動させてませんでしたっけ?


何事も無かったあのようにテナンさんが香茶を注いで回り、そして部屋を出て行った。


部屋がいい香りに包まれる。


で、もう飲んでいいんですか?


「遅かったわね。」


「これでも急いだんですけど、エミリアの荷物が多くて。」


「それは仕方ないわね。」


仕方ないで済ませちゃうのもどうかと思うけどな。


「では早速だが始めるとしよう。今日は休息日にもかかわらず集まって貰い感謝する。そして、今回は我がドーン商会がスマート商店連合ならびにシュリアン商店に多大な迷惑をかけたことをここでお詫びさせて欲しい。本当に申し訳なかった。」


ドーン氏が立ち上がり深々と頭を下げる。


だが、横に座る女性はそれに反応することも無く俯いたままだった。


寝ている・・・わけではなさそうだな。


ドーン氏は顔を上げ、その女性を一瞥すると再び話を続ける。


「先日の報告を受け独自に調査をさせてもらった。結論だけ言えば先程お詫びをした通り、ドーン商会が多大な迷惑をかけていた。冒険者の囲い込み、資材の独占、さらにイナバ殿を監視し、襲撃まで企てていた。その全てがここにいる我が妹、パトラの手によるものだったのだ。今日は直接お詫びをさせるべく連れてきたのだが・・・。」


「どう見ても詫びるという感じではないわね。」


「そのようです。」


名前を呼ばれてもうつむいたまま微動だにしない。


それはそれでなかなかの強心臓だと思うぞ。


仮にもドーン家の次期当主が謝罪をしているにも関わらず、我関せずを突き通している。


まるで自分に非が無いとでも言いたいような感じだ。


「パトラ、どうしても考えを改めないのか?」


「考えを改める?冗談じゃありません。私はドーン家の為を思い行動しただけの話、責められることも非難されることも有りませんわ。」


「だがお前は私の決闘に泥を塗ったのだぞ。」


「決闘なんて古臭い事をするからです。スマート商店連合ならまだしも直営の弱小店舗など正々堂々資本に物を言わせて叩き潰せばよかったのよ。」


「なかなか言うじゃない。」


商家五皇ペンディキュラか何か知りませんが、我がドーン商会よりも弱小の家から嫁を取ることが間違いなのです。お兄様であればもっとふさわしい、それこそ王族からでも嫁を迎えることができたはずですわ。」


「お前は何もわかっていない。商家五皇がどれだけの力を有しているか、そしてメルクリア家がこの国でどれだけの影響力を持っているか。もっとも、私は家ではなく人に惚れたわけだがな。」


そういいながらメルクリア女史のほうを見るドーン氏。


これまた面白い展開になってきたな。


てっきり詫びをするために連れてきたと思ったら全然改心してないし。


それどころか決闘なんて古臭いなんて言い出したぞ。


「それが古臭いと言っているのです。商家五皇などともてはやされながら実際は落ちぶれた家ばかりで今の実力に即したものではありません。そんなもの早く無くしてしまえばいい物を。」


「口を慎めパトラ。」


「・・・ふん。」


流石のドーン氏も我慢の限界なのか、先程よりも大分低い声で妹を諫めた。


一応は口を閉じたものの本人は不満たらたらって感じだな。


「なかなか面白い家族をお持ちね。」


「本当に申し訳ない。帰ってよく言い聞かせておく。」


「私は別に構わないわよ、商家五皇のうち三家は落ちぶれ実力に即していないのは事実だもの。この国で成り上がりたいのであればそれこそ王族に取り入るべきだわ。」


「なによ、よくわかってるじゃない。」


「でもやり方が最悪でそして稚拙ね。私達を貶めたいのならもっと外堀から埋めなさい、それこそこの男のようにね。」


「人聞きの悪い事を言わないで頂けますかね。」


いきなり話を振られたかと思ったら、人の事を悪人呼ばわりするなんて。


一体どういう教育を受けているのやら。


「なによ、弱小店舗に何が出来るっていうの?」


「確かにうちはダンション商店の中でも新興で店は弱小かもしれないわ。でも彼が築き上げてきた人脈はそれを遥かにしのぐもの、それこそ貴女の大好きなお兄様を上回るほどにね。」


「お兄様を侮辱することは許さないわ。そんな男にお兄様が負けるはずないもの。」


「じゃあ聞くけど、貴女の大好きなお兄様は領主に知り合いがいて?」


「当たり前よ。この屋敷を借りたのが何よりの証拠じゃない。」


「次に、元老院に顔がきいて?そうね一番上じゃなくても副参謀程度で構わないわ。」


いやいや、ガスターシャ氏を『程度』呼ばわりって、後で怒られても知らないぞ。


「ガスターシャ殿とは何度か会食させてもらっている。」


「ほらごらんなさい!」


勝ち誇った顔をする妹。


いやいや、貴女の手柄じゃないでしょうに。


「そのさらに上、王族はどうかしら。そうね、最近結婚されたレティシャ王女殿下にはお会いになって?」


「結婚式には参加させてもらったけれど、謁見させて頂く機会は無かった。」


「王女殿下にお会いしたから何だったっていうのよ。」


「ならレアード陛下は?」


「え?」


「レアード陛下に名前を憶えてもらった事は?直接褒美をもらい、国に貢献したことはあるのかしら。」


「そ、そんなこと・・・。」


「父上は何度か国王陛下に謁見しているが、私はまだないな。おそらく名前も知って頂けていないだろう。」


妹のすがるような目に兄は首を振って応えた。


国王陛下に謁見したことはあっても、名前を憶えてもらえるのは稀だろう。


ましてや直接褒美を賜ることなど普通はありえない。


そう、普通ならね。


「そうよね。でも、貴女が弱小と見下した彼はその全てを満たしているの。彼はそういう男なのよ。」


「嘘よ!」


「嘘じゃないわ、私の口からでは信じてもらえないのであればもっと偉い人の口から聞いた方がいいかしら。」


そう言いながら後ろを振り返ると、いつの間に部屋に入ったんだろうか壁にもたれて話を聞いていたププト様がいた。


「話は聞かせてもらった。メルクリア殿の言うとり、このイナバシュウイチという胡散臭い男はレアード陛下に謁見し、直接褒美を賜っている。それどころか、その功績を認められ褒美として修繕した街道にこいつの名前を付けたぐらいだ。」


「そ、そんな事あるはずない。だってお兄様は・・・。」


「ついでに言うがこいつはレアード陛下だけでなく隣国の時期国王ミハエル殿にも非公式ながら謁見している。ついこの間、ここでな。」


「ミハエル殿と言えば隣国ハーキネン王国の王位継承者でしたね。そのような方にまで名前が知れているのですか。」


「こんなに胡散臭そうな顔をしているのになぁ。」


「さすがに二回目は失礼じゃありませんか?」


「なに、口が滑っただけだ許せ。」


はははと笑ってごまかすププト様。


そんなに胡散臭そうな顔してる?


イケメンじゃないけど、人畜無害っぽい顔だと思うんだけど・・・。


自分の顔なんて最近見てないから何とも言えないなぁ。


「パトラ、彼はお前が喧嘩を売っていいような相手じゃないんだよ。いくら家柄が凄くても、いくらお金を持っていても、この国の役に立たない人間は不要なんだ。それこそ、名前すら憶えてもらえない。お前のやって来たことは、とても無駄な事なんだ。わかるかい?」


諭すように言う兄(ドーン氏)の言葉にパトラは何も答えなかった。


わなわなと拳を震わせ、やり場のない怒りをぐっとこらえている。


さぁ、この後どう出てくる?


胡散臭い男は少し期待しながら次の出方を待つのだった。

シスコンって結構悪く言われるのに、どうしてブラコンはステータスみたいに言われるんでしょうか。

お兄ちゃん大好き妹。

少々ベクトルはおかしな方向に向いていますが、兄が好きという本質に違いはありません。

縦ロールではありませんが、ツンデレです。

結構好きなキャラですが、ツンデレにはメルクリア女史が居ますからね。

まぁ、最近はツンなんてどこへやらデレデレですけども。


そろそろ物語も佳境です。

犯人が分かり決闘はどうなるのか。

それはまた次回という事で。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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