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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第十二章

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中年(見た目)ダンジョン妖精爆誕!

 子供を救出して村近くまで戻ると入り口は大勢の村人であふれていた。


 予想通りズッコケ三人組が助けを呼んでくれていたようだ。


 それでみんな勇ましい格好で集まっているんだな。


「おい、帰って来たぞ!」


「イナバ様だ!」


「ティオだ、ティオもいるぞ!」


「じゃあ、兄貴の背中にいるのは・・・!」


 森から出てきた俺達を見つけて村の人たちが騒ぎ出す。


 あの感じだとユーリ達は一足早く戻っているようだな。


 よかった、入れ違いにならなくて。


「なんだ、お祭り騒ぎだな。」


「あの三人が村に知らせてくれたんですよ。」


「どんな知らせ方したらあんな風になるんだよ。」


「さぁ、それは聞いてみないとわかりませんね。」


 おそらく穴の中に入っていったとか何とか言ったんだろう。


 危険はないと言っておいたけど、あの調子じゃ間違って伝わった可能性がある。


 子供がいなくなってピリピリしていたし人間悪い方悪い方に考えがちだしね。


「ほら、みんなお前たちを心配して集まってんだ。手ぐらい振ってやれ。」


「うん!」


 無邪気にティオ君が手を振ると村人たちから歓声が上がる。


「お前もだよ。」


 今度はウェリスに背負われていた彼がヒョイと肩に座らされた。


 少し痛そうな顔をするもその顔は晴れやかだ。


 彼もまたティオ君と同じように手を振っている。


 と、あそこに見えるのは彼のお母さんか?


 遠くてよく見えないが口元に手を当てて、あ、走って来た。


 それに合わせるように他の村人たちも駆け寄ってくる。


 それからしばらくは母子の感動の対面やティオへの手荒い祝福などしばし感動的なシーンが続いたわけなんだけど・・・。


 はて、何か忘れているんだよなぁ。


 なんだろう。


 そんな光景を少し離れて見ていると、子供の母親が人混みを掻き分けてこっちにやって来た。


「イナバ様本当にありがとうございました。」


「無事に見つけられたらよかったんですけど・・・。」


「生きて帰ってきただけで十分です。ティオ君も本当にありがとう。」


「えへへ、だって友達だもん。」


 友達だから助けるのは当たり前か。


 男前だな。


「さすが兄貴っすね!」


「俺達も聞きたかったなぁ兄貴のセリフ。」


「馬鹿野郎見せもんじゃねぇんだよ。」


「いやいやあれは是非皆さんに聞いてほしかった。」


「お前まで何言ってるんだ?」


「いやね、あのウェリスがここまで変わるのかと感動したわけですよ。」


 そこにティオがいるなら助けにいかない理由はない。


 かっこいいじゃないですよ。


 よ、お父さん!


「感想だぁ?自分からいくって言い出したくせによく言うぜ。」


「そりゃあ見つけるって約束しましたから。」


「それと俺と何が違うって言うんだ?」


「背負ってるものじゃないですかね。」


 一家の家長として責任を背負っているウェリス。


 新しく生まれてくる家族もあって俺とは明らかな違いがある。


 もちろん俺にだってエミリアやシルビア様、ユーリやニケさんを食べさせていき店を大きくするという責任はあるけれど、やっぱりそれとは違うものがあるよね。


 俺もいずれそれを背負う日が来る。


 その時までよき先輩として見習わせてもらうとしよう。


「お帰りなさいなさいませ御主人様。」


「ユーリもお疲れ様でした。」


「てっきり森の奥深くに行ったものと思っておりましたので南側は思いつきませんでした。」


「ユーリ達が北側を探してくれているお陰で南を探そうと思いきれたんです。」


「これからは南側も巡回しなければなりませんね。」


「あくまでダンジョンの運営が本業ですから、程ほどでお願いしますよ。」


 そう、俺達の仕事はダンジョンの運営だ。


 人助けが仕事というわけではない。


「これでダンジョンの影についてはわかりましたし、森で確認された影も子供を助けてくれた方と判明致しました。魔物でなくて本当に良かったですね。」


「それだ!」


「なにがです?」


「何か忘れているなって思ってたんですよ!」


 そうだった!


 最初は森に怪しい影が出るってところから始まったんだった。


 そしてその影が商店にも出てきてそれで・・・。


 あれ?


 おかしいな。


 今の手札じゃ全部のピースを埋める事はできないぞ。


「忘れ物ですか?」


「違います、森の影については判明しましたがまだ村の中で起きている不可解な現象については解決していません。」


「その方がやったのではないのですか?」


「あの方は見た目を気にされていてこの村に入った事はありません。」


「では一連の騒動はまだ・・・。」


「えぇ、未解決のままです。」


 そうだよ。


 これを忘れていたんだ。


 子供の悪戯かと思われた不可解な現象はどんどん過激になってきている。


 最初は影について解決すれば万事解決と思っていたけれど、村もダンジョンも別の人が犯人だった。


 じゃあ村の悪戯は一体誰がやっているんだろうか・・・。


「ユーリ、私達がティオ君を助けに行っている間に何か変わったことがあったとか聞いていませんか?」


「私たちも先ほど戻ってきたところなので。」


「そうですか。」


 ですよねー。


「それなら知ってますよ!」


 と、横から会話に加わってきたのはずっこけ三人組の前衛君だ。


「村への伝達有難うございました。それでどんな事ですか?」


「さっき村に帰ってきたら突然地鳴りがして、堀の柵が左右に揺れたんですよ。」


「地鳴りですか。」


「俺だけじゃないんです、ほかの二人もちゃんと聞いてたんですから!」


「そういえばお二人は?」


「さっきのを気にして堀の点検をしてます!」


 自主的に点検してくれているのか、えらいな。


 エミリアの依頼は俺の手伝いだけだったと思うけど、成果があったらちゃんと評価してあげないとなぁ。


「他に村の人は何か言っていませんでしたか?」


「今日は甕の水がなくなっていて朝から汲み直すのが大変だったって言ってました。」


「他には?」


「えーっと、そうだ用意した朝ごはんもなくなってたそうです。」


 それは誰かが食べたとかじゃないんだろうか。


 今日も子供の悪戯程度だが引き続き起きていて、しかもさっきは塀が揺れたと。


 あのアリの攻撃にも耐えたんだ、そんな簡単に倒れるような物じゃないはずだけど・・・。


 これはさすがに子供に出来るようなことじゃないな。


 いよいよわからん。


 まるで目に見えない何かに攻撃されているようだ。


「塀の調査が終わったら引き続き情報収集をお願いしたいところでは有るんですけど、本業のほうは良いんですか?一応依頼は私の警護だとおもいますのでそれは完了していますが・・・。」


「いいんです!」


 いいんだ。


 まぁ、本人たちがそれで良いんなら俺は何も言わないけれど。


 これも経験か。


 情報収集は冒険者の基本スキルだし、細かな異変に気付くのも重要だ。


 そういう意味では立派な訓練といえるのかもしれないなぁ。


 今度初心者向けに何か依頼を作ってみようか。


 注視しなければわからないような何かを用意して、発見できたら報酬を出すみたいな。


 そうすれば初心者の鍛錬にもなるし、それが珍しい素材とかならうちも決してマイナスじゃない。


 うん、良いかもしれないぞ。


 あとでみんなの意見も聞いてみるとしよう。


「さて、こっちはウェリス達に任せて帰りましょうか。」


「ですがよろしいのですか?」


「どうやら影のようにすんなり解決できる状況ではなさそうです。とりあえず今は自分に出来る事を済ませてしまいましょう。」


「ダンジョン妖精の契約ですね。」


「そうです。」


「また何かわかったら連絡しますね!」


「依頼料の受け取りも忘れずに、それと今日の夕食はお肉だそうですよ。」


「え、肉!」


 晩御飯が自分の好物だった子供のような目をしている。


 わかる、わかるよ。


 お肉美味しいもんな。


 ひとまずウェリスとドリスのオッサンに後を引き継いで俺達は商店に戻る。


 今頃バッチさんはどうしているんだろうか。


 契約はしていないから自由に動けるわけだけど、まだ倉庫で待機しているんだろうか。


「ただいま戻りました。」


 やれやれやっと着いた、と扉を開けたその向こうでは・・・。


「いらっしゃいませシュリアン商店へよく来たのだ!」


 〇ライさんかと思ったが良く見たらオッサンだった。


 ビックリした。


「イナバ様!オラ留守の間にもしっかり仕事が出来たぞ!」


「あ、はい、そうですね。」


「バッチさん倉庫からポーションとって来てもらえますかー。」


「少し待ってくだせぇ!」


 帰ってきた俺達を迎えてくれたのは小さいオッサン。


 そのオッサンがニケさんからのお願いに素早く反応し、裏の倉庫へと消えていく。


 と、おもったらすぐに帰ってきて今度は机の上を片付けだした。


 おかしいな、ダンジョン妖精になりたくてここに来たって言ってたのに何で雑用までしてるんだろうか。


 ダンジョンのことしか出来ないって言ってなかったっけ。


 あ、家事も得意って言ってたからこれもその一部?


 そんな都合の良い解釈で良いんだろうか。


「シュウイチ遅かったな。」


「ただいま戻りました。」


「それで大丈夫だったのか?」


「えぇ、ひとまず無事に片付きました。一時的に子供が居なくなってしまいましたが森で怪我をしていた所を親切な人が助けてくれたようです。」


 セレンさんに心配を掛けない為にワザと詳細は濁しておく。


 お腹の子のためにもビックリさせるのはよろしくない。


「そうだったのか。」


「明日にでも挨拶に行くつもりなんですが・・・ってこれはどういうことなんでしょうか。」


 シルビア様と話している間にも慣れた手つきでバッチさんが机の上を片付け、冒険者の食べこぼしを素早く掃除し、それでいて汚れた食器を洗い場まで運んでいる。


 あまりの素早さにおっさんが分身したようにも見えるのだが、さすがに錯覚だろう。


 小さいおっさんが増えるとかホラーでしかない。


「よく働くだろう?お前が帰ってくる間何か仕事は無いか言ってきたのでやらせてみたらこの調子だ。彼といいユーリといいダンジョン妖精はこうも働き者なのか?」


「さ、さぁ・・・。」


 確かに今してくれている仕事はいつもユーリがしてくれている内容と同じだ。


 ダンジョン整備の傍ら日中は主にセレンさんの手伝い。


 商店の手が足りなくなればそっちも手伝ってもらっている。


 でも本業はダンジョン整備のはずなのでこっちは手抜きでも良いんだけど・・・。


 惚れ惚れするようなバッチさんの動きに目を奪われていると突然横からすごい圧を感じた。


 慌てて隣を見ると真顔でそれを見つめるダンジョン妖精がもう一人。


「ユーリ?」


「ご主人様、これは私への宣戦布告と取ってもよろしいでしょうか?」


「いや、違うと思います。」


「ですがこれは私の存在理由を否定しているのと同じ事。これは由々しき自体です。」


 ユーリが対抗心に燃えている。


 確かに仕事内容は被っているけれど、もともとそれを承知の上で雇うって話しになったんじゃなかったっけ。


 え、違うの?


「ユーリには今までどおりダンジョンの管理運営をしてもらってですね。」


「私の仕事はセレン様を補佐する事です。」


「あの、ユーリさん?」


「身重のセレン様を補佐してこそのダンジョン妖精!その仕事を奪われてなるものですか!」


 ユーリがバッチさんが取り掛かろうとしていた洗い物を奪うかのように台所へ滑り込む。


 こらこら威嚇しないの。


 それにしてもユーリにこれほどの感情があるとは思わなかった。


 魂を持つ人造生命体(ホムンクルス)


 彼の思い通りユーリは着々と人と同じようになってきているというワケか。


 喜んであげるべきなんだろうけど、貴女の仕事はダンジョンの管理なんですよ。


 そこは忘れないでくださいね。


「オラ、何か悪い事をしちまったべか。」


「バッチさんは何も悪くありませんよ。すみませんね、ダンジョン管理以外の仕事までさせてしまって。」


「オラ働くのは好きだ。それにここはダンジョンとつながっているみたいだしこれも立派なダンジョン管理の仕事だべ。」


「頼りになります。」


「ここの人は優しいな、オラを見ても蔑んだり笑ったりしねぇ。何をしても喜んでくれる天国みたいだ。」


「そう思いますか?」


「もちろんだ!ダンジョンに入る人を助ける為に道具を売るイナバ様も神様みてぇだな!」


 俺が神様か。


 てっきりダンジョンに入る冒険者に道具を売りつける悪魔みたいな感覚でいたけどそういう見方もあるんだな。


「仕事は好きですか?」


「オラみたいな出来損ないに出来る仕事ならどんな仕事でも好きだ!」


「行商の方も頑張っていただかないといけません。」


「ようはイナバ様みてぇにダンジョンで困った人を助けてお金を貰えば良いんだろ?それなら大丈夫だ。」


「契約をする以上勝手に人を助けてはいけません。ダンジョンに入るのはあくまでも自己責任、バッチさんにお願いするのはそんな人をお金で助ける仕事です。それを重々理解しておいてくださいね。」


「タダで助けちゃダメなんだな。」


「仮に助け無かった事でその方が亡くなってもそれはその人が選んだこと。その方の死はダンジョンの魔力となってちゃんと私達に戻ってきます。」


 バッチさんは根っからの良い人なんだろう。


 良い人っていうか良い妖精?


 そんな人が冒険者を見殺しにする。


 それは大変な苦痛を伴うだろうけど、そこはしっかりと割り切ってもらわなければいけない。


 冒険者の死はダンジョンの糧だ。


 ダンジョンが大きくなる為には彼らの魔力が必要不可欠、それはダンジョン妖精を目指していたのならば百も承知だろう。


 その心の拮抗を俺達は見守るしかできない。


「ダンジョンを大きくすることがオラの仕事だ。大丈夫、恩返しするためにもオラはもう間違えねぇ。」


「その言葉を聴けて安心しました。それじゃあ行きましょうか。」


「いくって何処へだ?」


「何処ってもちろんダンジョンですよ。正式に契約する為にはオーブに触れなければいけません。」


「い、今すぐ用意するからちょっと待ってくれ!」


 何を用意するのか分からないが大慌てで店の裏へといってしまった。


「と、言う事ですのでユーリも同行願います。」


「しかし私の仕事は・・・。」


「そんなにワザとらしくやってもダメですよ。」


「残念、ご主人様にはばれていましたか。」


「先輩ダンジョン妖精としてこれからしっかり指導してあげてください。」


 ユーリが洗い場に入って威嚇したときその顔は笑っていた。


 最初は感情表現豊かになったなとか思ったけど、おそらく仲間が増えることの照れ隠しだったんだろう。


 それであんなふうに大げさに振舞っていたのだ。


 まぁそういう部分も含めて感情表現が豊かになったと言えるかもしれないな。


「こっちは任せておけ。」


「申し訳ありませんが宜しくお願いいたします。」


「お、お待たせしました!」


 と、バッチさんも戻ってきたようだ。


 恰好は一緒だけど手には何か不思議なブレスレットをつけている。


「それは?」


「契約に使用するブレスレットですね、ダンジョン妖精はこれを解してダンジョンから魔力を受け取ります。」


「ユーリにはありませんよね。」


「私は体内に組み込まれていますので必要ありません。」


「オラたちは契約するたびにこれを新調していくんだ。沢山身に付けているとそれだけすごいダンジョン妖精だって証明になる。オラ、これが最初の一つ目だけど精一杯頑張るからどうか宜しくお願いします!」


 なるほどなぁ。


 ブレスレットが多ければ多いほどベテランの印になるのか。


 ダンジョンをまたに掛けるベテランダンジョン妖精。


 なんだかカッコイイな!


 その後無事に契約を済ませ、うちに新たなダンジョン妖精が誕生した。


 見た目は小さなオッサンだけど、中身はもっとオッサンのダンジョン妖精。


 さぁ、これからドンドン大きくしていくぞ!

ダンジョンの主がオッサンなら、ダンジョン妖精もオッサンである。

むさ苦しいように感じるが周りいる女性陣が美人なのでバランスは取れていると思われる。

男なんてどうでも良いんですよ。

女性が綺麗ならそれで良いんです。

え、女性冒険者からしたらイケメンが良い?

そんなもん知るか!

イケメンは敵だ!

なんて馬鹿な事を言っているのは作者だけかもしれません。

世のなかにはイケメンを必要としている人が沢山います。

むしろオッサンのほうがいらない扱い?

不用品扱いされないよう日々頑張って執筆しますので、これからもどうぞ宜しくお願いいたします。


話しは綺麗に終わったように見えますが、まだまだ謎は残されたまま。

後半戦はそれを解決するお話です。

はてさてどうなる事やら。

ここまでお読み頂きありがとうございました。

また次回もよろしくお願いいたします。

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