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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第十二章

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そこにいるのなら行かない理由はない

ウェリスと共に森を行く。


このあたりはもう調べ終わっているらしいのでとりあえず子供たちが遊んでいたという岩場の方へと向かった。


森の北部、泉よりもさらに奥深い所にその岩場はあった。


まるでそこだけ下から山がせり出してきているようなそんな場所だ。


「ここで遊んでいたようですね。」


「あぁ、周りは開けていて見晴らしもいい。ガキ共が遊ぶには絶好の場所だな。」


「登りやすいように溝も掘ってあります、私も子供だったら毎日通ってますよ。」


子供は高いところが好きだ。


登れるとわかったらどこまでも行ってしまう。


たまに降りれなくなって泣く子もいるけれど何だかんだ良いながらも結局一人で降りて、それがまた自信になる。


元の世界ではそんな場所は少なくなったし、ゲームで遊ぶ子の方が多いんだろうなぁ。


「さっきの話じゃここで影かなんかを見てティオが剣を抜いたんだったな。」


「そしてその剣が見つかったのもここ。血はついてなかったんですよね?」


「そう聞いてる。」


「戦わなかったのには何か理由があるんでしょうか。」


「戦えないほど強い魔物だったのか・・・。」


「あるいは戦う必要の無い相手だったのか。」


「それでも剣を置いていく理由がわからねぇ、寝る時も肌身離さず持ってるようなやつだぞ?」


確かにその通りだ。


仮に戦う必要の無い相手だとしても剣は持っていて良いはずだ。


自衛の為には必要なもの。


そうやってシルビア様に教えられているはず。


それをわざわざ置くという事は相当の理由があるはずだ。


いなくなったもう一人を人質に取られ置いていけと脅されたとか?


まさか、こんな森の奥で誘拐するやつなんているだろうか?


「なんにしても情報が少なすぎます。」


「影が出てきて慌てて逃げた、影には角があっただけじゃなぁ。」


「影の正体が魔物じゃないとすると一体何なのか・・・。角のある人なんていましたっけ?」


「角なぁ、亜人なら可能性はあるがこの辺りにいるって話は聞かないな。」


「ですよねぇ。」


サンサトローズならまだしもこの近辺は亜人が非常に少ない。


もちろんシャルちゃんやティオ君の例もあるし冒険者にも何人かはいるけれど、それでも角がある人はいないなぁ。


まぁ四方を森に囲まれて人がいるような環境じゃないってのもあるけれど、冒険者にも少ない事を考えればかなり可能性は低いだろう。


そうなると思いつくのは魔物しかないわけで・・・。


参ったなぁ。


「あ、やっぱりここにいた!」


「イナバ様!手伝いに来ました!」


「あれ、貴方達は・・・。」


「エミリアさんに依頼を受けてやってきました、人探しでしたらお任せください。」


突然の声に後ろを振り返るとそこには見覚えのある顔が。


そう、おなじみ初心者三人組だ。


依頼を受けたって言ってるけど、なるほどエミリアが気を利かせてくれたんだろう。


「助かります。」


「この森の事はユーリさんに聞いてますからね、任せといてください!」


ドンと胸を張る姿が心強い。


森の中を探るとなると魔物が出た時の事を考えないといけないのだが、どうやらその心配はなさそうだ。


「とりあえず奥にいくのか?」


「そのつもりですがもう少しだけ調べさせてください。」


某〇ィッチャーなら現場の足跡から何処に言ったのか探し出せるんだろうけど、こうも色んな足跡があると素人には判別つかない。


最初足跡を追いかけたけどすぐにわからなくなったって言ってたし・・・。


とりあえず調べてみるか。


「俺達も手伝います。」


「ひとまずこの岩山を中心に辺りを探って見ましょう、慌てて逃げたのであれば服などを引っ掛けているかもしれません。」


「わかりました!」


各自分かれて円を描くように捜索を始める。


葉が落ちて見通しは良くなっているものの、逆に足元は落ち葉のせいで見えにくい。


半刻ほど探してみたけれど案の定何も見つからなかった。


「やっぱりこの辺りには何もねぇな。」


「そうみたいですね。」


「すみません何も見つけられなくて。」


「いえいえ、護衛も兼ねていただいていますから助かります。」


「でも、これだけ探したのに薬草の一つも落ちてないんだな。この前は抱えられないぐらい色々あったのに。」


ん?


どういうことだ?


「何もありませんでしたか?」


「ちょっと、子供を探してたんでしょ?何で素材を探してるのよ!」


「真剣に探してたって!でもこの前あれだけあったからまたあるかもってつい。」


「そういえばそうですね、これだけじっくり探しているんですから薬草の一つでもありそうなものですけど・・・。」


この森はドリちゃんやディーちゃんの加護があるのか薬草や木の実などが豊かに実っている。


その森で薬草だけならまだしも他の物まで見つからないっていうのは少しおかしい。


もちろん誰かが根こそぎ拾って行ったってことも考えられるけど、じゃあ一体誰が?


ナーフさんか?


「ティオ君はよく薬草を持って帰ってくるそうですが、他にも何か拾ってました?」


「そうだな薬草や毒消しハーブなんかは見分けて持ち帰ってくる。」


「つまりそれ以外は拾っていないことになりますよね。」


「この辺はユーリさんに案内してもらってないんで僕等じゃないですよ!」


「ってことはこの辺に来た奴がいるってわけか。」


「魔物が薬草を拾っているって話は聞きませんからおそらくは。」


他の冒険者が来た可能性は非常に少ない。


うちのダンジョン目指してきてくれているのに、わざわざ街道を離れてこんな森深くに来る理由が無い。


となると、俺達の知らない誰かがこの森の中で薬草などを採取している事になる。


「可能性が出てきたな。」


「影の正体が魔物でないのであれば剣を使わなかった理由になります。」


でもおいていく理由が分からないんだよなぁ。


使わなかったのなら腰にぶら下げたままで良い。


よほどの理由があってなんだろう。


「ねぇ、ちょっと見て!」


話しこんでいると三人組の紅一点が何かを見つけたようだ。


って、何でそんなところにいるのかな。


「お前そんなところで何してるんだよ!」


「どのぐらい高いのかと思っただけよ、じゃなくてここに血痕があるの。」


「「「血痕!?」」」


え、確か最初に来たときは何も見つからなかったって。


驚いてウェリスを見ると本人も同じく驚いた顔をして俺を見てきた。


いや知らんがな。


慌てて岩を登っていくとちょうど岩の端っこにまだ新しい血痕があった。


返り血というよりも何かに引っかかってついた感じだ。


「なんだか指の形に見えますね。」


「わかる、落ちそうになって慌ててしがみついたらこんな感じだよな。」


「指を引っ掛けたがそのまま落ちた、そんな感じか。」


「ということは・・・。」


高さは3mほど、下はちょうどティオ君の剣が落ちていたところだ。


「普段ここで遊んでいるのに落ちるかなぁ。」


「いきなり脅かされたら落ちるかもよ。」


「ワッ!って大声出されたらビクってなってそれで落ちたとか?」


「アンタじゃないんだからそんなわけ無いでしょ。」


「それ、当たりかもしれません。」


「「「えぇ!?」」」


なんだこのズッコケ三人組。


名推理じゃないか。


「なるほどな、影を見つけたあの兄弟が大声を出して、ティオが剣を抜くも上の奴が落ちそうになって剣を捨てて助けたようとした。」


「それなら辻褄が合います。」


「けどここから落ちたら怪我しますよね。」


「するだろうな。」


「じゃあすぐに村に戻りませんか?」


「一人連れて行けないぐらいに酷い怪我だったんじゃない?」


「そうなると誰かに来てもらうとか、手伝ってもらうしか・・・ってまさか!」


「いるじゃねぇか、この辺をうろついていた奴が。」


これはあくまででも想像の話しだ。


実際は違うかもしれないけれど、状況からするとそう考えることが一番自然だ。


「でも何で村に行かないだろう。」


「村にいけない理由があるんじゃない?」


「犯罪者とか?」


「バカ、犯罪者が怪我した子供を助けるわけ無いでしょ。」


「えー、子供好きなんだって。」


あー、うん。


次はその問題があるよね。


議論してくれてありがとう。


実際なんで村に行かなかったのかって言うのが重要なんだよな。


村にいけない理由が何かあった。


もしくはより近い場所に何かあるとか?


思いつく事は沢山あるけど・・・うーむ、ありすぎて逆に困る。


「仮にだ、もう一人のガキが怪我をしていて村にはいけない。お前ならどうする?」


「そうですね、村に行けないなら自分で何とかしないといけません。幸い薬草などはありますから、落ち着ける場所に行くでしょうか。」


「落ち着ける場所、つまり寝床かなんかか?」


「村に行けずうちの店にも来れないとなればそこしかないでしょう。わざわざ街まで子供を連れて行くぐらいなら村の近くに放置しますよ。」


「でも、そんな場所あるでしょうか。」


「僕達この二日間かなり奥まで探しましたけどそんな場所ありませんでしたよ。」


そもそもそんな場所があったら真っ先にユーリが気付いているはずだ。


森の奥はユーリのテリトリー。


にも関らず気付かないとすれば、それは森の奥ではなく・・・。


「森の奥に無いのならその逆はどうでしょうか。」


「まさか」「うそ!」「まじかよ!」


「おいおい、村の北側じゃなくて南側だって言いたいのか?」


「可能性はゼロじゃないでしょう。奥に行っていないのならその反対しかありません。」


「でも、わざわざ街道を横切って行くなんて。」


「村に寄れないのであれば街道を横切ってでも行くしかありません。」


そんな事をするのなら街道に放置すれば良いとも思ったが、ここは元の世界のような平和な森じゃない。


魔物がうろつく危険な森なんだ。


そんな場所に怪我をした子供を放置できるか?


普通の神経なら出来るはずがない。


それに、ユーリがいつも巡回しているのは街道を挟んで北側の森。


冒険者を派遣したのも、今捜索隊が探しているのも北側の森。


そこにそれらしい場所がないとすれば、必然的に導き出されるのは街道の南側というワケだ。


「こいつがそういうんだ、間違いない。」


「いや可能性の話でして。」


「だがそこしかないんだろ?」


「えぇ、まぁ。」


「じゃあ行くしかないだろ。」


怪我をしたと仮定してそのまま南へ下ると予想通り村と商店を結ぶ街道に出た。


ほぼほぼ村よりの場所ではあるが、ここからは村の門は見えない。


「おい!これ見ろよ!」


「何かを引きずった痕が森の南側に続いていますね。」


「足跡も小さいわ、これは魔物じゃない子供の足跡よ。」


そしてそこにあったのは街道を横切るようにうっすらと走る一本の線。


それを挟むように小さな足跡とそれよりも少し大きな足跡が一つずつ続いている。


「微妙な大きさだな。」


「子供とも大人とも言いづらいですが靴を履いている事に間違いありません。これで魔物の線はなくなりましたね。」


「じゃあこれを追っかけていけば良いんだな!」


「もぅ、森の中じゃ足跡なんて見えるわけ無いじゃない。」


「怪我人を連れて複雑な道は行かないでしょう。このまま真っ直ぐ、障害物があればそれを避けて進むに違いありません。」


「お前達は線の右側、俺とイナバが線の左側を探す。」


「「「はい!」」」


魔物じゃないと分かっても出来るだけ早く見つけたい。


もう一人が怪我をしているのであれば更に急がなければ。


二手に分かれさらに横に広がって奥へと進んでいく。


ここからはローラー作戦だ。


横一列になり怪しいところを隙間なく探していく。


身体を休めるとなるとそこそこ大きい場所が必要になるだろう。


そんな場所が森の中にあるんだろうか。


世界樹ぐらい大きければ可能だろうけど、この森にそんな大きな樹があるとは思えない。


となると残されたのは洞窟かもしくはダンジョンのような洞穴。


地下に潜っていくタイプなら十分考えられるだろう。


この前ダンジョンに潜った所なのにまた地下に行くのか・・・。


イヤだなぁ。


ローラー作戦を続ける事しばし。


「おい、あったぞ!」


俺の予想通りというか、折衷案というか。


朽ち果てた大樹の根元にぽっかりと開いた穴が一つ。


ちょうど大人が一人入れるぐらいのそれが俺達を迎えてくれた。


御丁寧にもその穴の上には雨避けの屋根まで作られているところを見ると、それなりの知性はあるようだ。


魔物じゃない。


となるとやっぱり亜人なんだろうか。


「どうする?」


「どうするって行くしかないでしょう。」


「でも、魔物が出てきたら・・・。」


「屋根まで作るぐらいです、こちらから刺激しなければ恐らく大丈夫です。」


「本当ですか?」


「たぶん。」


絶対なんてありえないのだよ、よく覚えておきなさい。


「こんなとこで油売ってても仕方ねぇさっさと行くぞ。」


「先行は譲りますよ。」


「そりゃどうも。」


「あ、ちょっと!」


ずっこけ三人組を置いて俺達だけで穴の中に入っていく。


入り口は樹の匂いがすごかったが今はもう土の匂いの方が強い。


中は緩やかな下り坂になっていてゆっくり進めば問題なく降りれた。


傾斜が緩やか過ぎてどのぐらい下ったのかはわからないけれど、底まで行くと立って歩けるぐらい大きな空間に出る。


すごいな、本当にダンジョンみたいだ。


「気を付けろよ、どこから何が出て来るかわからねぇ。」


「そっちこそ丸腰なんですから。」


「いざって時はお前の武器を取り上げるさ。」


代わりに戦ってくれるなら喜んで差し出そう。


え?穴の中なのにどうして見えるのかって?


壁の所々に穴が掘ってあってそこに明かりが灯されているからだ。


これで魔物の巣ですって言われても俺は信じないからな。


村にもダンジョンにも近い場所にこんな空間があったなんて・・・。


「待て。」


と、前を行くウェリスが急に立ち止まる。


「これは・・・声?」


穴の奥、明かりが揺らめくその先から声らしき音が聞こえて来た。


「誰かいるのは間違いないみたいだな。」


「行きますか?」


「この先にティオがいるかもしれないんだ、俺の命に代えても連れ帰るさ。」


もうすっかり父親だな。


俺だってここまで来て引き返せるわけがない。


上に残した三人が入ってこない所を見ると、おそらく誰かを呼んできてくれているんだろう。


なら大丈夫だ。


ここは村からも商店からも近い。


仮に何があっても助けは来る。


俺達は頷き合うと声のする方へ静かな一歩を踏み出した。


すっかりお父さんキャラになったウェリスさんでした。

最初は主人公の額に刃物を突き付ける様なただのチンピラだったんですけどねぇ。

今やなくてなならない重要キャラとなりました。

わからないものです。


そしていよいよ穴の奥へと進んでいきます。

そこにティオ君はいるのか。

彼らを連れて行ったのはいったい。

それはまた次回という事で。

え、相変らずダンジョン商店じゃない?

ちゃんと冒険者と冒険?してるじゃないですか!

でもまぁ名前詐欺と言われても仕方ありませんよねぇ。

申し訳ありません。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。


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