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20章
わたしは、バカだ。どうして、傘も差さずに、こんな所まで来ちゃったんだろう。
財布も持っていないので電車もバスも使えなかった。だから、自転車を漕いだ。
肺が痛い。サンダル履きだから足も痛い。全身はとっくにずぶ濡れ。ガチガチと歯が鳴って、震えが止まらない。うっすら目の前がぼやけて、体がなんとなく熱い。ひどい頭痛がする。
でも漕いだ。ペダルを漕ぐしかない。道は判ってる。判ってるけど、でも何で漕がなきゃならないんだろ。こんなになりながら、どうして。
何度も、あそこへは通った。いつまでも執着しちゃいけないって思うけど、それでも、あの場所はわたしにとって大事な場所なのだ。
はねた泥が、体中を覆う。でも、わたしは気にしない。道路脇すれすれを走る。ガードレールのそのすぐ横の川は、増水し濁った流れが渦を巻いていた。大荒れの天候、最悪の状況だ。
でも、道は開けている。ふと傍らを見れば、もう、ゴツゴツとした山肌が見えてきた。目的地は、もうすぐだ。




