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21章
新倉は、一人電車に揺られていた。スーツは、水を吸ってしまった。もう、オーディションどころではないだろう。しかし、もう心に決めていた。賀上は確実にそこにいるだろう、という確信があった。自分らしさを既に演技で達成できているから自信を持て、そう言ってくれた賀上を、今度はこちらが助ける番だ。
新倉は花束と包みを握りしめ、すう、と息を吐いた。
あれから一度、賀上の家に寄った。みんな、手分けして探してくれているという。そして、その場で賀上が免疫抑制剤を飲んでいない事を聞いた。
「新倉くん、もし賀上に会ったら、これをその場で飲ませてあげてくれ。命に関わるんだ」
賀上の父親は、深く深く新倉に頭を下げた。彼自身も車を走らせ、そこら中を必死に駆け回っているようだ。
ばかやろう。新倉にとっては、賀上が何かの理由で免疫抑制剤を飲んでいなかった賀上が、許せなかった。




