序章
戦争に対等は無い。奪うか、失うか、この違いだけだ。人々は奪われる恐怖に駆られ、他を搾取する運命にあるのだ。しかしどの世界にも、その摂理を理解しない者たちがいる。その一人である少年は、戦火の中ただ立ちつくしていた。周囲には積み上がって層になった瓦礫や半壊した建物が広がっていた。田舎だが、活気のある町だった。もうその面影はどこにもない。もう誰か分からない沢山の死体と、炎が渦巻く地獄がそこにあった。少年は故郷を失った。家族を失った。友も、財産も、何もかも全てを戦争で失った。その痛みと悲しみは、6歳になったばかりの少年が耐えることができるはずのないものばかりであった。その証拠に、いつしか冷たい一筋の水滴が、少年の頬を伝い、消えていった。それに呼応するかのように炎は激しく燃え上がり、心を、視界を、世界を黒く黒く染めていく。まるで自我を持つように、少年を見つめていた。
きこえる。またきこえる。まだきこえる。渇いた叫びが、嗚咽が、ナミダが…ふと見上げた空は、紅く黒く燃えている。暗く、重く、響いているのに、なぜかよく見えないナニかが見える。そこになにもかも吸い込まれていくような感覚を覚える。いや、むしろそうしてほしいぐらいだ。そうすれば…このイタミも…行き場のないカナシミも…全て…すべてー。
「気二イッタ。ソノ哀シミ、其方ノチカラ二シテヤロウ。」
その漆黒は、この言葉を残して少年を優しく包み、少年の胸に吸い込まれていった。生き残ったのは少年だけだった。涙は枯れ、笑いが込み上げてきた。喜でも楽でもない、哀しみと憎しみの笑いだった。
「ハハハ…」
人は絶望に直面すると笑う。そんな話を何処かで聞いたことがある。少年は絶望していない。でも笑った。そうするしかなかった。それ以外、なにもできなかった。
少年はただ一人、戦場で笑うことを覚えた。これは世界で初めて人間が黒淵となった日のことである。
皆さんこんにちは。なろう初投稿のひしがたくんです。序章を見てくださりありがとうございます。不定期で投稿する予定なので、第一話がいつ投稿できるかは私も分かりません…気ままに待ってくれると幸いです。
次回
第一話 運命の扉/邂逅する二人




