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鎖につないだ女

 幸也の目が覚め、起き上がり自分の視点の高さに驚く。


「ここはどこだ」


 あたりを見渡し下を見ると正人がいた。


「おいなんで俺のことおぶってんだ」


「お前覚えてないのか? 急に寝だしたんだよ」


「そうか」


 幸也は大きく息を吸い込み頂の気分を味わいガッツポーズをする。


「あれは、夢だったんだな」


「夢じゃないぞ」


 ケントが秒で突っ込む。


「お前は、夢に出て来た悪魔」


「悪魔でもないぞ」


 ケントは起こったことを反論ができない程、事細かに説明し幸也を絶望の淵に叩き落とす。


「思い出したか」


「思い出しました、全て現実です」


 ギルドに付き剛力と恵梨香の帰りを待つ。


「帰ってるって伝えたのか?」


「お前が寝てる間に伝えてる」

「それよりケント、お前に一つ大事なことを伝えないといけないことがある」


「何だい?」


「さっきお前の家でおれは金欠と言ったな」


「ああ、覚えているよ」


「借金六十万ある、だからすぐに給料は渡せないんだ」


「そんな事かい?」

「それなら全然かまわないよ、貧乏生活なら慣れているからね」


「本当か、良かったー」


 その後剛力たちが帰ってくるまで借金を抱える経緯をケントに話した。


剛力たちが戻る、そして恵梨香は幸也達と一緒に座っている見慣れない小さな頭を見つけ駆け寄って来た。


「スカウト出来たんですか!!!」

「しかもこんなかわいい子」


「出来たぞ、お前らはどうだった?」


「できませんでした」


「そうか、まぁ初めてだから仕方ない」

「やってみてわかっただろ、おれの大変さ」


「はい」


 剛力も戻り全員集合した。


「あれ、ケントじゃないですか」


「よう、驚いたか彩人、今日から僕、は仲間だよ」


 親しそうに話してる二人を見て正人たちは目が点になる。


「嬉しいですけど、どうしたんですか?冒険者には向かない能力でしたよね」


「ああ、けど幸也がサポート役に見出してくれたんだ」


「そういう事ですか」


 二人の当たり前のような空間に正人が耐えられなくなる。


「お二人は、どういう関係で」


「友達だね」

「友達です」


「そうなんですか」


 剛力とケントの会話が終わり、ケントと恵梨香の自己紹介を終え、正人が本題に入った。


「それでは今から、借金返済の計画を立てて行こうと思います、意見がある人は挙手を」


 ケントと幸也と剛力が手を上げる。


「はい一番早かったケント」


 ケントは立ち上がるが座っている剛力と同じぐらいの高さだ。


「もう、スカウトはやめるのか?」


「お前が仲間になったからもうおしまいだけど?」


「話を聞いた限り、前衛を探してたんじゃないのか、自分で言うのもなんだが僕、は戦闘力はゼロだぞ」


 幸也と剛力を交互に見る。


「俺も同じこと言おうとしていた」

「僕もです」


「足りないのか、前衛?」


「足りない、お前ら後衛にモンスターが行かないようにするのが役目、残念ながら俺一人じゃ不可能だ」


「そうか、それなら明日もスカウトに行くか」


「それともう一つ、今日スカウトした奴の名前を教えてくれ、名前が分からないなら特徴を、元情報屋の力を見せてあげるよ」


 翌日まだ誰も起きていない時間に皆で集合する。


「ファー、眠っむ、おはようケント、どうしてこんな朝早くにしたんだ?」


「ああ、正人、おはよう、一番の狙い目が朝にしかこの町に居ないからだ」


「狙い目?誰なんだそいつ?」


「この町で一番強い、と噂の人さ」


「もしかして、レヴァエル師匠か」


「違いうよ、君たちの要望に応えてちゃんと日本人にしているよ」


「じゃあ、松田か、おれあいつは嫌だな」


「松田でもない、あれはランキング二位だからね」


 恵梨香が話に割って入る。


「ランキングなんてあるんですか?」


「ああ、実績と僕、が知っている噂をもとにランキングを付けていたんだ」


 正人は興味深々らしく速攻で自分の順位を聞いた。


「君は、三十九位だ」


「日本人だけなんだろ、低すぎないか?」


「妥当だと思うけど」


「じゃあ恵梨香と剛力と幸也のランクは」


「幸也君は噂だけでどれだけか判断しかねるね、恵梨香君は三十七位、剛力は十二位だ」


「ちょっと待て、なんでおれが恵梨香より低いんだよ」


 恵梨香はほくそ笑む。


「見苦しいですよ正人」


 ケントは正人が勘違いをしていることに気付き訂正をする。


「これは前衛の適正があるランキングだ、弓しか打てない君が下から三番目なのは妥当だよ」


「そうだよな、おれが不利なランキングだよな」


 正人は胸をなでおろす、があることに気付きなであげた。

「おい、おれは恵梨香に負けるほど弱そうなのか」


「そうだね、レベル的にも見た目的にも弱そうだよ」


 正人はケントに飛びかかろうとするが剛力と幸也に止められる。


「落ち着きたまえ、このランキングの最下位は僕、だよ、なにせデコピン一発で負けるからね」

「それに総合的に見たランキングなら君は三位だ」


 三位と聞いた瞬間態度を変える。


「うんうん、まぁこれでも、元S級冒険者ですから、当然と言えば当然だよな」


 悦に浸っている所に幸也が水を差す。


「本当か、なだめるために着いた嘘だろ」


「こればかりは本当だよ、正人君は強いよ」


 真剣な顔をしているケントを見て、幸也は思い返してみる。


(確かに実力は凄いな、いつものあれで忘れてた)


「それでその前衛一位の奴は何位なんだ?」


「変わらず一位だよ、それに日本人以外を含めても一位だね」


「そうかそれなら、いなくならないうちに誘わないとな」


 日本人軍団は正人と幸也、剛力と恵梨香、ケント、と手分けして、一位の人を探しに出かけた。


 人を見かけるほうが珍しい程の静かな町で人探し、眠気が増大されていく。


 正人は眠気をごまかすため会話を始める。


「全然いないな」


「見ればすぐわかるって言われたけど、もうこの時間に町を出てる日本人なんじゃないか」


「そうかもな、日本人見つけたらこれならしちまうか」


「ケント達を見かけて間違えて鳴らすなよ」


 のんびりと歩き回り、眠気が少し冷めてきた頃、手足が鎖に繋がれ、大きな入れ物を差し出すように何かを買っている日本人の女を見つける。


「あの人じゃないか、正人、一応鳴らしてくれ」


 正人が魔法道具に魔力を送り、丸い球体が振動し音もなく破裂した。


「これでいいんだよな、ケントに伝わってるんだよな?」


 ケントが正人から借りている魔法道具が起動しケントの顔が映し出される。


「本当に伝わった」


「見つけたんだろ、どこにいるのか教えてくれ」


 女の方を指さす。


「あの人で間違いないよ、スカウトに行ってきな、僕、も恵梨香君と剛力に伝えてからそっちに向かう」


「了解」


「幸也それじゃあ早速」

 

 気づいた時には幸也は女の方に向かっていた。


「おい、待ってよ」


***************


 幸也は奴隷が嫌いだった、人の尊厳を踏みにじっているから。


 幸也は奴隷が大嫌いだった、それは獣人達が奴隷人される漫画などを多く見て来たからだ。


 鎖に繋がれた女を見て幸也は我を失った。


 幸也は女の正面に立つ。


 ハーフサイドポニーテール、ジト目の長いまつ毛、幼くも美しい顔が絶望で歪んでいるように見えた。


 幸也は剣を抜き女の鎖を断ち切った。


「何するんですか」


 女は一歩引き幸也から離れようとする。


 その時に反射で出してしまった手が幸也の顔にかすり、幸也は三十メートル程吹き飛び正人の隣を通過して壁に激突した。


 その光景に正人は口を開けただ固まることしかできなかった。


「また」


 女は、幸也の元に駆けつけようとしたが、これ以上の被害を出さないために何もせずその場にとどまる。


「何が起きたんだ、死んではないが」


 あたりを見渡す、幸也が激突した壁が木端微塵になっていた。


(まさかこの壁代とか請求されないよな)


 ケントが駆けつけ、幸也の現状を見て何かを察する。


「大丈夫かい」


 手を差し出す、幸也はそれを握り起こしてもらう。


「君、もしかしてぶっ飛ばされただろ、文字通りの意味で」


「ああ、多分ぶっ飛ばされた」


「何をしたんだ、スカウトする人を怒らせて」


「鎖を斬ったんだ、奴隷だと思って」


「そうか、知らない人が見たらそう見えるか」

「いいかい、彼女、早乙女 火ノ江(さおとめ ひのえ)はね強大な力を抑えるために自ら鎖で縛っているんだ」

「力を使わないように、誰も傷つけないように、こんな時間に活動をしているんだよ」


 幸也は何も言わず火の江の元に歩む。


「どうするんだ、もう無理だろ」


「無理だろうが、一回謝らないと、悪いことをしちまった」

「それにあの力、諦めるには早いだろう」


 幸也が近づき火の江が無傷の幸也を見る。


「傷がない」

 涙を流し幸也に飛びつき抱き着いた。

「やっと現れた、私の運命の人」

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