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49話 銀狼からのギフト

 報告に合った敵兵の数が、正確であったことはすぐにわかる。

 眼の前に溢れる漆黒の軍隊、ピースメイカー軍を飲み込まんと広がって布陣している。

 

「はっはっは! これは絶景だな!」


「どこを見ても敵だらけ、ひりつく空気が刺激的ですな!」


 バーゼルとマギウスが敵陣を眺めながら軽口をたたきあっているが、その瞳は真剣だ。

 ファーンも並んで必死に策を考えている。

 3人が考えていることは唯一つ、なんとしてもアルテを護り抜き、そしてピースメイカー軍が治める領土まで連れ帰る方法だ。


殿(しんがり)は譲らんぞ」


「流石にお一人ではもう息が続かないでしょう。ファーンはアルテ様を連れて行くという大事な仕事がある、殿の伴は譲ってもらう」


「……わかった。命に変えてもアルテ様には生き延びていただく」


「やっぱりそういう考えになるんだね」


「アルテ様!? いつの間に!」


「見張りまで立ててコソコソしているからこんなことだろうと思ったよ。

 隠形は結構得意なんだよ」


「我らの背後を取るとは、さすがはアルテ様……しかし、我らの気持ちは変わりません」


「そうです。なんと言われても私がアルテ様をお連れして逃げます」


「今回はアルテ様だろうが引く気はないっす、俺たちは貴方のために壁になっても悔いはない」


「うーん、皆の気持ちはありがたいけど、大丈夫だよ。

 感じるんだ。ウォルが……今こっちに向かっている。

 そして、ウォルが来れば、負ける気がしないんだ」


「いくらウォル殿が強くても、この数の差では……」


「それに、敵の多くが黒の力を持っている可能性が高いと報告も……俺たちだけで相手は……」


「それも含めて……ほら、聞こえてきたでしょ?」


 アルテ言葉で周囲の気配を探ると、3人は大地が小刻みに揺れていることに気がつく。

 その揺れはどんどん大きくなり、ピースメイカー軍の兵士たちもざわざわと落ち着かない空気が流れ始める。


「な、なんだアレは!?」


 帝国軍とピースメイカー軍の間を、何かの群れが捻んで来た。

 よく見れば、犬や馬、熊なんかも混じっている。更には上空に追随するように鳥の群れがついてきている。


「ウォル殿が率いている! こちらに向かってくるぞ!」


「全員、陣の前に集合するように伝えて」


 アルテの命令で兵士たちと動物たちが向かい合うように並んでいる。

 ピースメイカー軍に向かって来た集団は綺麗に一列に広がっていく。

 鳥たちもそれぞれ並んだ動物たちの頭に止まっていて、悲壮感に包まれたピースメイカー軍の空気を温かいものに変えてくれた。


「ウォル、おかえり後ろの子たちは仲間のかな?」


「ウォン!」


 ウォルが短く大きく吠えると、背後に並んだ動物たちが完全に揃った動きで地面に伏せる。

 鳥たちも頭を下げて、まるでアルテに傅いているように見える。


「ありがとう……やっぱりウォルは自分の仕事をしてくれていたんだね」


 アルテがウォルの頭を撫でると、二人の体が淡く光りだす。

 同時に動物たちも光り輝いていく、動物たちは立ち上がるとトコトコとピースメイカー軍の兵士に一匹、また一匹と近づいていく。

 一人の兵士に対して一体の動物がまるで相棒のように向かい合う。

 そして、動物の光が兵士たちにも伝播していく……


「一緒に戦ってくれるのか?」


「そうか、闇の魔獣たちに虐げられていたのか……」


「ユニコーン……実在していたのか……」


「幻獣に、神獣もいるのか……」


 兵士と動物が光りに包まれるとまるで長年の相棒のように相手の気持が通じ合っていく。

 

「ふむ、お主の名はバオウと言うのか……これからよろしく頼むぞ」


 巨大な熊がバーゼルの前に伏せていた。ガイアベアという種族の神獣だ。

 マギウスの前には二本の角が生えた巨大な馬、ユニコーンでありながら漆黒の体を持つ変異種でユニコーンを率いる王だ。オーギュテスという名を持っている。

 ファーンの肩には神々しい金色の鷹が止まっている。光の神獣で霊峰を守る鳥たちの女王、名をフェルメイラという。

 美しい深い青の毛並みを持つ豹のようなしなやかな聖獣は今この場にいないペステとペアリングされていた。

 それぞれの部隊の特色にあった動物たちが兵士とペアリングしていく。

 そして、この光りに包まれた兵士たちには、黒の兵士と戦える力が与えられていく事になる。

 バオウにまたがるバーゼルの部隊は重装歩兵団のような、体が大きく力の強い動物が所属する。

 オーギュテスとマギウスの部隊は騎兵隊、ただの馬とは別レベルの能力を持つユニコーン部隊を主力としている。野生で鍛えられた馬たちも以前の比較にならないほどたくましい。

 フェルメイラとファーンの部隊は鳥類が多く所属している。

 持ち前のスピードと、神獣が精霊と語らうことで行使される精霊術が持ち味の部隊で、敵の隙を的確に突くことができる技術派な部隊となった。

 ウォルとアルテの部隊は狼による完璧な規律による協力な部隊行動を特異とする部隊になった。

 全ての兵と動物がアルテの光の加護により超人的な能力を得ることになるのであった。


 協力な援軍を得て、意気消沈していたピースメイカー軍に希望の光が見えてきた。

 しかし、未だに数の上では圧倒している帝国軍の有利は動かない。

 ピースメイカー軍の将兵さえもそう思っているものが多かった。


 そして、知るのだった。帝国軍、ピースメイカー軍両軍が……


 光と出会った神獣の力というものを……

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