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ちょっと変わった日常(12)

30日午後3時ごろ、こう思ったのです。

小説書く前に少し昼寝するか!

起きたら31日午前6時でした! 30日に更新(暗黒微笑Ver2)

「ん」

 探索も終盤に差し掛かった頃、エレオノーレはその音を聞いた。

 粘性を伴った何かが地を這いずっている音だ。

「ん~?」

 だがその音は遠く、更に篭っているような音質であり、正確な位置の判別は難しい。

「どうかしたんですか?」

 アルフォンスが聞く。音の出所を突き止めるために集中しようと彼の唇に人差し指を当てて黙らせる。

 視界不良な場所は音が生命線だ。アルフォンスの〝神術〟で辺りは照らされているが太陽の如き光度は無く、岩の壁がある場所は当然ながらその先を見据える事も出来ない。故に音で判別する。

 エルフの耳朶は横に長いが獣や獣人のような聴力はない。今彼女が聞いている音も、本来ならばエルフや人間には聞こえようもない音だ。だがエレオノーレの耳はそれを捉えていた。

 フードの中に手を入れ、耳に手の平を当てて音を集めながら周囲を伺う。

 聞こえてはいる。それも近い。更には複数の気配もする。探索していた部屋を出て通路に行く。

 音が近くなる。だが、それでも篭っている音は解消されない。少しずつ、ゆっくりと音の方向を確かめながら歩を進めると巨大な壁に当たった。

「はて? こんなところに壁ありましたっけ……?」

「俺に聞かれても……ここ始めてだしそもそも冒険者になってまだ三時間も経ってないし」

 エレオノーレの眼前には巨大な壁があった。岩石と泥で塗り固められたような壁だ。自然そのものの回りにある壁と作りが違うそれはどうみても何者かに作られたものである。

「この奥から聞こえるんですよねぇ……」

 手の甲で叩けば岩と同じ手応えと音が返ってくる。頭の中の地図はこの奥が最後の部屋であり、盗賊の祠がそう名付けられた理由である義賊が祭られている大部屋があるはずなのだ。

「しょうがない。崩しますか」

「え? 崩すって道具もないのに?」

「道具ならありますよ。正確には道具というより薬品ですが」

 エレオノーレは腰に下げてある目当てのそれを手に取る。

 それは店の不良在庫の一つだ。わざわざそれを使うぐらいならより安全で制御が利く〝神術〟を使う。故に〝神術〟が使えないエレオノーレしか使うものが居なかった。

 手にしたそれは拳大の大きさの丸い硝子瓶。中にある液体は透明で色が無い。口は布で封がされており、更にその上から蝋を垂らして密封している。

「それは?」

 アルフォンスが聞く。エレオノーレはその瓶を上下に振りながら事も無く言った。

「爆薬ですよ。飛竜だってこれを食らえば無事では済まないでしょうね」

「ば―――!?」

 アルフォンスは実際にその脅威を見た事はないが冒険者が話すのを聞いた事がある。

 爆薬は〝神術〟と違って使う気配もないし威力が半端ではない。〝神術〟ならばいざというときに妨害が出来るがそれはただ投げるだけでいいと。使用者の安全は確保されないが隠密性と十分な殺傷能力があるその薬は、主に盗賊や、隠密が使うものであった。

 そんな物をエレオノーレは事も無げに扱う。

「ああ、大丈夫ですよ。暴発はないです。昔散々やって死に掛けましたんでもう扱いは慣れました」

「死に掛けたって……」

 アルフォンスが絶句する。聞いた話が間違っていなければ爆薬は人を吹き飛ばして余りあるものだ。至近距離で食らえば粉々になるとも聞いた。それを何度も食らって生きているとは信じがたい。

「じゃあ投げますよ。離れてて下さいね」

 そう言ってエレオノーレが爆薬を振りかぶった時、その声は聞こえた。

 あああああぁぁぁぁぁ……

 今にも投げようとしていた動作が中断される。くぐもったその声はエレオノーレが探していた人物のもので、苦痛や恐怖が込められており、更に言うならば壁の向こうから聞こえた。

「なんだ今の……女の人の声?」

 アルフォンスが壁を見ながら呟く。

 聞こえた声には痛みがあった。恐れがあった。戦うような音も聞こえない。何かしらの動けない事情があり、更には死の気配を孕んでいる。

「リンゼ! 返事をして下さい! リンゼ!」

 返事はない。危険な状況だ。リンゼがどこにいるか分からないので迂闊に爆薬を投げる事も出来ない。エレオノーレ特製の爆薬は対物が基本で巻き込みでもしたら命の保障はないのだ。

 どうしようか迷う己にエレオノーレはどうしようもない苛立ちを感じる。現役時代は即断即決であったのに今はどうしようか迷っている。

 そんなエレオノーレに活を入れるようにそれが聞こえた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ! 助けて! 誰かぁ! 助けてぇ!」

 壁越しでもはっきりと聞こえるその悲鳴はエレオノーレの迷いを吹き飛ばした。身を引き締め、心に覚悟を刻む。 

 最適の行動を。

 最善の行動を。

 最良の行動を。

 深く考える事はない。ただ、何もかも救うために動けばいい。後先考えず、自分の身を省みず、ただ大事な誰かを護る為に、

「あああぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 エレオノーレは動いた。

次回は4月1日更新の予定です。でも来客があるのでもしかしたら出来ないかもしれません。

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