第一話 RGGV、基本の4色⁉︎
「陽向くん、大学決まったんだって?」
食品スーパー極彩のバックヤードで陰山木葉はバイトの後輩である陽向天晴に問いかける。
「はい!そうなんですよ!遂に決まりました!」
驚くほど元気な声で答える天晴。力強い瞳に光が灯る。
季節は冬。12月。
「今の時期に決まるってことは…推薦か」
「そうです!いや、マジで大変だったんですよ!?」
「誰も楽してるだなんて言ってないでしょ。まぁそういう風に言う人は結構いるんだけどね。」
木葉は少し微笑み、続けた。
「合格おめでとう。ふふ…こういう時なんて言うんだっけ?」
「アッパレだな!」
天晴の大きな声が響く。
「やっぱりそれだよね。なんか安心する。
じゃ、あんまり話してるとサボリだと思われちゃうし?仕事しよっか!」
木葉が落ち着いた声で言う。天晴より少し背の高い木葉。メガネの奥に見える瞳は優しさを帯びていた。
「そうしますか!」
またも天晴の大きな声が響く。
「アッパレうるさい!」
従業員から突っ込まれる。
今、発されたアッパレはあだ名のようなものだった。名前が天晴でてんせいと読むが、本来一般的な読みはあっぱれ。そこから派生したあだ名だった。
謝罪をしつつも店内へと向かいながら話し続ける2人。
「いいよね。陽向くんの『アッパレ』っていうあだ名。」
「はい!小さい頃はてんせいだ!って言ってたんですけど、段々好きになってきました!」
「ふーん。陽向くんらしいね。」
「そういえば陰山さんは俺のことアッパレって言いませんよね。」
「そうだね。まぁ…陽向くんは陽向くんかな。わたしの中では」
「そうですか。なんでもいいですよ!」
「ほらまた声が大きい。いいところだけどね、そういうところ元気いっぱいって感じで」
「ありがとうございます!」
「もう…。でも出会って一年くらい経ったから慣れたよ。それが陽向くんだもん。」
時刻は21時を過ぎていた。高校生である天晴は木葉よりも先に仕事を上がり、帰路に着いていた。
「くはー!寒いっ!」
天晴の吐く息は白くなっていた。家に向かうための電車に乗るため駅へと向かっていた。
駅前は栄えておりまだ活気付いている。仕事帰りの人、食事を終えた人、今からどこかへ向かおうとする人、色々いる。そこをネオンや電気看板、街頭などの光が彩っていた。
ん…?
何か違和感を覚える。なんとなく後ろを振り返ってみる。人々が歩いている、なんの変哲もない景色。気を取り直し前を向き歩き始める。
またも違和感。
ふと、電気看板に目をやると、光がグニャリと捻れていた。
なんだ…疲れてるのか?俺…。
目を擦り、もう一度確認してみると捩れは消えていた。
「気のせいか…」
深くは考えず歩みを進めた。
捩れの中から誰かが見ている…。
翌日…
学校に登校すると、クラスがざわついていた。
「すげー!宝城、ホントにあの大学に受かったんだ!」
クラスは大騒ぎだ。
「勿論。そのための努力は惜しみませんでしたから。」
嫌味なく答える女子生徒が騒ぎの中心だった。宝城玲花、宝城家というこの地域では割と有名な家の一人娘だ。正にお嬢様…というべきか。
「おっ、アッパレテンセイも来たのか。聞いたか?宝城が…」
「どうやらアッパレなことになってるみたいだな」
被せ気味に返答する。
「わかってんのか!じゃあさ、宝城にいつものアレ言ってやれよ」
いつものアレ…天晴にはわかっていた。
「宝城!アッパレだな!おめでとう!」
天晴の大きな声がクラス内に響く。それを聞きクラスメイト達は大盛り上がりだ。
「出ました!アッパレ!」
やっぱりコレだよと言わんばかりの盛り上がり。いつものアレを聞いた宝城玲花はこう返してきた。
「最初から言ってもらえるつもりだった。貴方のその言葉、待ち侘びていました。」
自信に満ち溢れた顔でこう続ける。
「ありがとうアッパレ君。」
「うお、珍しい宝城が人をあだ名呼びするなんて」
別のことで盛り上がり始めるクラスメートたち。そこへ担任の教師が入ってくる。
ホームルームの始まりを察知し、自分の席へと皆、散っていく。
天晴と玲花は席が隣だった。皆が席につくまでの間少しの会話。
「どういたしまして!いやでも宝城はすげぇよ。ホントアッパレだ」
少し笑う玲花。
「2回も言われた。私、少し得してしまったかもしれません。」
「ん?何回でも言えるぞ俺は…いつも言ってるし」
「ダメ。特別感がなくなるでしょう。本当は一回が良かったけど…2回目は私自身へのご褒美として受け取ることにします。」
「特別…?」
思い返してみると天晴は玲花に対してはアッパレとは言った記憶がなかった。覚えていないだけかもしれないが…。
「あんまり褒められ慣れてないんです。くすぐったくて。」
「…ふーん、じゃあ慣れたほうがいいんじゃね?アッパ…」
「申し訳ないですが3回目はいりません」
学校が終わり、皆帰路に着く。人によっては部活、塾、遊びに出かけるもの皆それぞれだ。
今日の天晴は予定が無かった。バイトもシフトに入っていないので真っ直ぐ帰るつもりだった。
クラスメートたちに別れを告げ家路につく。
それにしても…
もうすぐ冬休みだ。終わればもう高校生活も終わり。どう過ごそうか…。大学生活もあんまり想像つかないし…。
「ま、どうにかなるか。盛り上げれば皆着いてきてくれるし」
帰り道、学校近くの公園に1人の少女がいた。…中学生くらいか?
その少女は1人ぶつぶつと木の前で喋っていた。気になった天晴はベンチで本を読むフリをして何を喋っているのか聞き耳を立てる。
「この未明刀の錆にしてくれよう。悪人どもこの剣士"十六夜"が貴様らの罪を断ち切ってくれる…」
何かポーズの様なものをとっている。
「いや…違うよ…こんな感じじゃなくてもっとクールでカッコいい…」
天晴にはそのセリフに聞き覚えがあった。前にテレビで放送されていた映画だ。
役者目指してるのかな?
と思うが彼女の目はいわゆるマジだった。もしかして…厨二病というヤツ…?
不意に少女がこちらを向く。
どうやら自分の世界に入り過ぎてこちらには全く気づいていなかったようだ。
「見てた…?」
少しの沈黙。
「ちょっと」
また沈黙
天晴が沈黙を破る
「演技の練習とか?アッパレだな!凄く迫真っていうか本物みたいな迫力?みたいなの感じたよ!」
天晴の答えに少女は顔を赤くしたが、すぐに凛とした表情になった。そして
「ふっ…この十六夜紫電の背後を取るとは…。中々の手だれと見た。」
シデン…?
映画の主人公って十六夜ってだけだったと思うけど…
「少し…試すか」
「えっ…試すって?」
少女がこちらに突っ込んでくる。
「ちょちょちょっと待て!」
ヤバい!この子ヤバい子だッ!
逃走の体制に入る天晴。
「覚悟ッ!」
瞬間、2人の間に捩れが起きた。天晴が昨日見たのと同じ捩れ。だがそれは昨日のよりも大きく深い捩れだった。
意識が遠のく…。
目が覚める。
「何が起きたんだ…?」
天晴は倒れていた。しかし、公園ではなかった。周りを見渡す。
「どこだよここ」
その空間は現実の世界とは思えない場所だった。地面は真っ白。上を見上げると様々な色が交わり捩れたり、例えるなら絵の具を溶かした水のような風景だった。
地面は果てしなく続くように見えた。所々、小規模な岩山のようなものが見える。果ては見えない。異質な空間。
「さっきの女の子は!?」
彼女もここにいるのだろうか。明らかに自分よりは幼かった少女。彼女の身が心配だった。
天晴は身を起こし叫ぶ。
「おーい!」
返事はない。誰もいないのか?
名前…名前を呼んでみるか。
取り敢えずさっき聞いた名前を呼んでみる。
「おーい!十六夜ちゃーん!」
下の名前で呼びたかったが忘れてしまった。かんでん?えのでん?じてん?
「いないのか…?」
瞬間、不安に襲われる。少女を心配している場合ではない。自分を心配すべきだった。
ここはどこなんだ?なんでこんな所に?さっきまで公園にいたはずだろ?帰れるのか?
足がすくみ始める。
どうする…
「出口…出口があるはずだよな?」
こんな時、天晴は取り敢えず動くタイプだった。じっとしているのは性に合わない。
歩き始めようとした時、自分の足元に何かが落ちているのが見えた。
右の手に取ってみる。
「なんだコレ…絵の具?」
落ちていたのは絵の具のチューブのようなものだった。赤色…だということはわかった。
下の方に数字の10が刻印されている。
後ろのほうに何か気配を感じた。異様な気配。慌てて振り向く。
「なっ、なんだお前!?」
透明な影?のようなもの、輪郭はおぼろげだ。
こちらへ近づいてくる!?
「うおおおお!…来るな!なんなんだよ!?」
イロ…イロ…
何か言ってる…色々?
何言ってるんだ俺は色々なことが起きて今困ってるんだ!
手に力が入る。はずみで、チューブの蓋にあたる部分を捻ってしまう。
蓋の先から赤い突起が出てくる。丁度、リップクリームみたいに。そして赤い閃光が迸る!
「なっ、なんだこれ!?」
透明な影は怯んで後退りした、閃光が走り天晴の左手に赤い輝きが灯る!
「なんだ、槍か?コレ!?」
気がつくと左手には槍が握られていた。身長170cmの天晴よりも少し大きな赤い槍。
不思議とあまり重いとは感じない。呆気に取られていると、透明な影が襲いかかってきた!
「うわっ!」
反射的にかわす。この存在は明確に敵意を発していた。
「ど、どうする…。どうしたらいい。」
焦りから言葉が口から出てしまう。
槍を振ればいいのか?
何か飛んできた。それは透明な影にぶち当たり、吹っ飛ばした!
「くそっ!今度は!?」
飛んできたものに目をやると紫色の衣装を纏った人間だった。
「ぐっ…この十六夜紫電を追い詰めるとは…中々やるな…!」
顔には半透明の紫のバイザーを付けているがわかった。さっきの女の子だ。
「さっきの!無事だったのか…っていうかその格好は何!?」
「むっ…先ほどの手だれか…。これは十六夜紫電としての真の姿。天啓だ…先ほど拾った絵の具でこの力を解放したのだ!」
手には刀が握られていた。
「絵の具の形をしておるのだ解放の仕方は明白」
「いや、確かに絵の具って蓋開けて使うけど…」
自分は槍を手に入れたが姿は変わっていない。どういうことなんだ?
「来たかっ!」
少女の目線の先を見る。
そこには人型の異形がいた。
先ほどの影とは違う。輪郭もはっきりとしている。ドギツイ青の炎のようなシルエットをしていた。コイツは…なんだ?
「手だれよ!手に持っている絵の具を武器に挿すのだ!」
「えっ…あっ、なんて?」
「絵の具を武器に挿す!」
一瞬、普通の女の子のような喋り方。
「挿すったって…」
と言っていると槍の付け根あたりに穴があるのがわかった。ここか?
「早く!怪物はそこまで来ている!」
「わかった!」
絵の具を穴に装填する。槍の先端が赤く光りだした。
「そうしたらボタンが武器のどこかにある!そこを押すのだ!」
「えっと…ここか!」
槍の持ち手上部分にあるトリガーを引いた、先端から赤い奔流が流れ、天晴を包む!
「叫べ!彩色顕媄と!」
少女が言う
「サイショクケンビ!」
言われるがままに天晴は叫ぶ!
天晴の姿は変わっていた。衣装は先程の少女と一緒だが、赤い。
「なんだこれ…いわゆる変身ってやつか?」
「考えている場合ではない戦うぞ」
「…どうやらアッパレなことになりそうだな」
異形は突っ込んでくる!少女も突っ込み、刀で斬りつける!
激しく火花が散る。
「今行くぜ!」
突っ込む天晴、槍は身体の一部のように自在に触れた。敵を一閃!
唸りながら吹っ飛ぶ敵。
「やるな…流石、私の背後をとっただけはある…」
少女からの賞賛。
「俺からも君はアッパレだって言っておくぜ」
「何それ?」
キョトンとした顔
「すげぇってことさ」
「ふっ…当然だ」
また凛々しい顔つきに戻った
叫び声が聞こえた。
「おいおい…まだ倒せてないぞアイツ!」
「中々手強い」
なんと…叫びに共鳴するかのように透明な影が湧き出してきた。
「多いぞ!」
「全てこの未明刀の錆にするまで」
武器を構える
瞬間、後ろから緑の閃光と金の閃光が走り、透明な影たちに襲いかかる!
消し飛ぶ影たち
「なんだ!?」
少女と共に振り返ると岩山の上に2人の人影が見えた。緑と金の衣装に包んだ…女性?
「その声…もしかして陽向くん!?」
緑が叫ぶ。
「えっ、陰山さんですか!?」
岩山の上から2人が飛び降りてくる、
「まさか陽向くんも変身してるなんて」
「陰山さんこそ…って宝城!?」
金の衣装の女性に目をやると宝城玲花だった。
「えっ、2人知り合いなの?」
木葉が困惑する。
「陽向くん貴方も…」
「ああ…だけど…」
敵の方に向き直す天晴。
「話は後だ。」
青い炎の怪人はまだ立っていた。
「とにかくアイツを倒そう!」
「きっと、アレが親玉だよね。透明なのは簡単にやっつけられてるけど中々アイツはしぶとい」
木葉の分析。
槍を握り直す。先程まであった恐怖心は薄れていた。今は盛り上げていく!
「アッパレに行くぞ!」
天晴の掛け声に他の3人も戦闘体制に入る。
一斉に敵に突っ込む。とにかく敵を倒すことを考えた動きだ。
紫の少女が誰よりも早く敵陣に切り込む!
「1人は危ない!」
木葉が叫ぶが聞こえていない。
「何やってんだ!」
天晴は加速する。
木葉の武器は弓、とにかく少女を襲おうとする影を射抜く!が、1発だけ天晴の頬を掠めた。
「ごめん!陽向くん!」
「やはり、武器は皆ある程度扱えるようですね」
玲花が、呟きながら武器であるステッキを敵にかざす。先端から金の光線が放たれ影を吹き飛ばす!少女は爆風を、時折ぶつかる透明な影をものともせず青い炎の怪人に突っ込む!追いつく天晴、共に怪人に武器を突き立てる!
怪人の身体から青い炎が吹き出し、2人は吹き飛ばされ、体制を崩す。2発目が来る!
炎は放たれた…しかしなんとも無かった
金色のオーラが2人を守ったのだ。
「こういう使い方もあるわけですか」
玲花のステッキから発生するバリアだった。
「ナイス宝城!」
体制を立て直す天晴と少女!一気に距離を詰める!
「行くぜ十六夜ちゃん!」(本名なのか?)
「無論!」
2人は武器を振りかざした!
『アッパレストライク!』
『十六夜流剣技 落雷!』
とにかく叫んだ、敵を吹き飛ばす2人の一撃!
「ぐおおおおおおお!」
叫びながら怪人は爆散した。
影達も消えていく…。爆発の中から薄い青がどこかへ飛んでいった。
「よっしゃぁ!アッパレ!」
景気良く槍を振り回す。
…と少女の刀にぶつけてしまった。
「ごめん」
謝るが少女は気がついていないようだった。
自分の世界に入っている?空を見上げているようだった。
天晴たちの元に木葉と玲花が追いつく。
Red.Green.Gold.Violetの4色。
「終わったんだよね…?」
木葉の問い。声が震えている
「どうやらそのようです」
答える玲花、その声も少し震えていた。
「なんか…とにかく勝てたな!」
天晴は疲れていた。が、勝利を盛り上げようと思った。
「初陣にしては私も貴様らも中々の出来であったな」自分の世界から戻ってきたのか少女が言う。
「えっ…初めてなの君!?」
「勿論。私は十六夜紫電。この程度のこと造作もない。」
得意げな少女。
「結構、危なかったと思いますが。陽向くんが追いかけていかなければどうなっていたかはわかりません」
玲花は淡々と言った。
「ふん…」
少女は気にしていないようだった。
「まぁ取り敢えず勝てたんだから…ね?」
木葉が場を取り持つように話す。
「取り敢えず…どうにか…ですね。」
玲花は何か考えているようだ
「いや、結構いけるもんだよな!で…帰れるのかこれ?」
光に包まれた。
何も見えない。
意識が遠のく。
気がつくと公園だった。
戻ったのか…?
横を見ると少女が倒れていた。
「大丈夫か!?」
駆け寄ると
「ふふっ…私は十六夜紫電…ふふ」
どうやら眠っているようだ。
夢だったのか?
違った。
天晴の手にはあの絵の具が握られていた。
「夢じゃ…ない」
驚きと困惑の表情を浮かべる天晴。
「アッパレじゃんか…」
戦いが続くことを予見する。
絵の具を…握りしめた!
次回ッ!
第二話 謎の世界、失われる色!




