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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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67.仕立て屋の視察

 トロッコと馬車を作り終わり。

 俺は今アラクネの仕立て屋に来ている。




「おや、来てくださったのですね、代表様! ふふ……このまま忘れ去られたらどうしようと思いましたわ」


 いや、流石に忘れ去るなんてことは……。


「ふふ。冗談ですわ。お気になさらず」


 仕立て屋の前。

 そんな会話をしながらクトネーが迎えてくれた。


 さて、俺がなぜ仕立て屋に来ているかというと理由は二つある。

 まあ別にそんな大層なモノじゃないが。


 一つは時間が出来たからだな。


 馬車とトロッコを作り終え、俺は早速走らせてみようとした……が。


「ふむ、トロッコはまだしも線路は少し時間がかかりますな。やはり量が必要になりますから」


「馬車の方はそうでもありませんが、車軸部分はハイドワーフたちに作ってもらわなければならないので、やはり時間がかかります」


 イアンとルシュにそう言われ、走らせるのは断念。

 というか線路のこと頭から抜けてた。

 本体づくりが楽しくて。


 まあそういうわけで時間が空いたというのが一つ。


 そしてもう一つはクトネーたちの誘いに乗るためだ。


 この仕立て屋を建築したときクトネーにぜひ来てくれと誘われた。

 その時はいきなり来ても何もないだろうから、商品がいくらかストックが出来たタイミングで訪れようと思っていたのだ。

 ……いや、別にお金と引き換えにする訳じゃないんだから、商品じゃなくて作品か?

 人口をどんどん増やしていくなら貨幣も早めに導入しておきたいな……。


 話が逸れた。


 とにかくそういうわけで仕立て屋に来させてもらったわけだ。

 それなりに時間も空いたし、あの時のクトネーの様子だったらもう結構な量の作品が出来ているんじゃないか? と思って。

 迎えてくれたクトネーの自信満々な顔を見る限り、俺の予想は当たっているみたいだが一応聞いておくか。


 それで……仕立て屋の調子はどうだ?


「ふふ、それはもちろん……絶好調ですわ!」


 はじけるような笑顔で俺にそう言ってくるクトネー。

 分かってはいたがやはりそうか。


 あの機織り機のおかげか?


「ええ! その通りです! あの機織り機は素晴らしいですわ――イメージは出来ていたもののその作成の手間から諦めていた代物すら簡単に作り上げることが出来て! 本当に次から次へと作りたい服のイメージが増えていきますの!」


 そう勢いごんで言い寄ってくるクトネー。

 圧が凄い。


 正直まあわかる。

 あれだけテンションを上げていたのだから、端から見ていても興奮は見て取れた。


「あっ……あれは……っ! 忘れてくださいませっ……! あんな代物を見せられて……つい……優雅さを忘れてしまったのですわっ……!」


 そんなに恥ずかしがることでもないと思うが……何かに熱中する姿って言うのは魅力的に映るだろう?


「それは……まあ、そうかもしれませんが……。とにかく、お忘れくださいませっ!」


 うん、まあ。

 クトネーがそこまで言うんなら、もう話題には出さないようにするか。


 それじゃ……中を見せてもらって構わないか?


「ええ、もちろん。……入口で長々と申し訳ありませんでしたわ」


 そう言うとクトネーはスカートの端をつかんで一礼。

 見る度に思うがやはり絵になるな。


 こっちも話し込んでしまったし、気にしないでくれ。


「ありがとうございます、では中へどうぞ」


 そして俺はクトネーの先導に従い、仕立て屋の中に入る。




 仕立て屋の中。

 そこは以前来た時とはまるで別空間だった。

 一瞬違う建物に入ったかと勘違いしたくらいだ。


 まず目についたのは空中に浮いた多くの服とマネキン。

 それは空中で様々なポーズをとっていて、まるで服でできた星座を見ているような印象を受ける。

 ……よく見てみればその服やマネキンたちは浮いているのではない。

 その上の方にキラリと何かが光っているのが見える。

 これは、糸で吊ってあるんだな。


 そして次に店の地上部分を見る。

 そこは前回と大きく印象は変わっていなかった。

 棚や台、試着室。


 だが……棚や台にはこんもりと服が積まれている。

 かなりの量だ。

 下手したら今レースピアに居る全住人に一着ずつ渡してもまだ余るんじゃないか?

 そう思うほどの量。


 俺は仕立て屋内を一通り見渡し感嘆の声を上げる。


 いやぁ……凄いな。

 ここまでになってるとも思わなかった、正直驚かされたよ。

 特に上から吊り下げられたマネキンと服。

 正直度肝を抜かれた。


「ふふ……ありがとうございますわ。アラクネを代表し、クトネーがその賛辞を受け取らせていただきます」


 そう言うとクトネーは誇らしげに胸を手に当て一礼。

 ……ちょっと目のやり場に困る。少しね。


「仕立て屋の上部に服を飾ろうと言ったのは私ですの。私たちは蜘蛛。上部に薄い巣を張れば飾ることも取ることも簡単にできますもの」


 なるほどな。

 自分たちの特性を活かしているって訳か。

 なら……もっと天井の高い仕立て屋を用意するのもいいかもしれないな。


「まあ! ここだけではなくまだ他にも建築してくださると?」


 ああ、人口を増やしていったらアラクネたちも増えるだろうし……そうしたら仕立て屋がここ一軒じゃ足りなくなるだろうしな。


「それは……ふふ。とても楽しみな未来ですわ」


 クトネーは手を口に当てとても嬉しそうに笑う。


「ですが今は未来ではなく、現在に目を向けなければなりませんわね」


 クトネーはそう言うと手元で何か……よくは見えないが恐らく糸……を操る。

 すると上からいくつかの服が降りて来た。

 本当に簡単に取れるんだな。便利だ。


 そして俺は降りてきた服を見る。

 どれも……ファンタジー風といった服だな。

 簡易的なシャツとズボン、ファンタジーの一般的な平民のような服から、マントがついた冒険者風の服、手首や足首にフリフリの飾りがついた貴族風の服まで。


「ふふ、こちらはすべて代表様の為にお作りした服ですわ」


 俺の?

 ……確かに見た限り俺のサイズにぴったりなように見える……ん?

 俺……クトネーに自分の身体のサイズなんて教えてないと思うんだが……?


「サイズはハイラ様にお聞きしましたわ」


 ハイラ!? 何で俺の身体のサイズを知ってるんだ!?


「それはもちろ……いえ、いえいえ! そんなのイイではありませんの! さ! ぜひ試着してみてくださいませ!」


 え、いや、気になっ――。


 俺は無理やり試着室に押し込められた。




 はぁ……はぁ……疲れた……。


 その後。

 俺は最初に降りて来た三種の衣装以外にもいろいろな衣装を試着することになり、かなり気疲れしていた。

 いや……流石に途中で断ろうと思ったんだけど。

 クトネーだけじゃなく他のアラクネたちも集まってきて……、「とてもお似合いだ」、とか……「あの服は私が作った、代表様が来ているところを見られて嬉しい」、だとか……「次は私の服だ! きっと似合う!」だとか。

 そんなことを言われては途中でやめることなんてできるわけもなかった。


「ありがとうございますわ、代表様。最後まで付き合ってくださって」


 心なしかクトネーの顔がつやつやしているような気がする。


「ふふ、自分が作った服を誰かが着ている姿を見る。これはアラクネにとってとても満ち足りることなのですわ。代表様のおかげで、私どももさらに気合が入りましたわ!」


 まあ、それなら良かった。

 着せ替え人形になった甲斐は……あ……あ……あったな!


 半ば自分を騙すように強く思う。

 にしても……。


 ファンタジー風の衣装を着るのも楽しかったけど、やっぱり着慣れている服も欲しいな……。


 そうぽつりとつぶやくと。


「着慣れている服? ……それは何でしょうか私どももかなり幅のある衣装を作ったつもりなのですがそれらでもないとなるともしや私たちの知らない様式の服なのでは一体どんな服なのかくわしく教えていただきたく――」


 いや近い近い近い近い!!


 蜘蛛の下半身を勢い良く動かし俺に迫ってくるクトネー。

 その迫力に俺はつい後ずさってしまうもクトネーはそれ以上のスピードで迫ってくる。


 俺はそのプレッシャーに負けて、前世の……現代風の衣装のイメージを伝える。

 すると……。


「なんっ……ということでしょう! この世界にはまだ! まだまだ私共の知らない服が! ……こうしてはいられません! 皆さん! 早速作りますわよ! 代表様に再びご満足いただきましょう!」


「「「おぉーーーっ!!」」」


 うん。

 なんだかアラクネたちに火がついてしまったみたいだ。

 メラメラメラメラと燃えている。


 えぇと……確かに作ってもらいたいのはやまやまだけど……ほ、ほどほどにな?


「分かってますわーーーーっ!!!」


 分かってなさそう。

 ……なんか前もこんな風なことあったな。


 そんなことを思いつつ、俺は仕立て屋を後にした。


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