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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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61.アラクネ、ケンタウロス、マイコニンの戸籍

 さて、戸籍づくりも大分佳境って感じだな。


 あと作ってないのは裂け目近くの仮拠点の警備をしている少数と……アラクネ、ケンタウロス、マイコニンの三種族。


 これらの戸籍を作り終えたら記念すべき戸籍台帳バージョン1が完成する。

 というわけで気合を入れて、俺はアラクネ区画へ。




「お待ちしておりました。私共アラクネ族、もちろん代表様にご協力いたしますわ」


 迎えてくれたのはアラクネ族代表のクトネー。

 前に見た姿は仕立て屋の機織り機でハイテンションに糸を織っていた姿だったが……だいぶ落ち着いているように見える。


「あ……あれはその……あまりにも良い機織り機でしたのでつい理性を失ってしまい……お忘れいただきたいですわ……」


 赤くなった頬を隠しながらクトネーはそう言う。


 まあ、そう言うのであれば……早速戸籍を作ろうか。


「そうしてもらえるとありがたいですわ……」


 というわけで早速クトネーから戸籍を作った。


 名前:クトネー

 種族:アラクネ

 性別:女

 生年月日:-二十二年、五月十二日

 家族構成:母、父


「ふむ……必要性は理解しておりますが淑女としては年齢を暴かれることに少し抵抗を感じますわ……」


 暴くって。


 悪用とかはしないから安心してくれ。

 俺もすぐ忘れるように努力するし。


「ありがとうございます、ですが構いませんわ。ちょっとした愚痴のようなものですから」


 そうか?

 それならよかった。


 それじゃあこのまま他のアラクネたちの戸籍も作っていくが……。

 ……どうだ? 移住してしばらくたったけどこの街の住み心地は?


 我ながらちょっと口下手だと思うが、不満なんかがないか聞いておきたい。


「……ふふ。住み心地は素晴らしいですわ。とても美味しい食事に安全な寝床、さらにはとても質の良い機織り機に大きな仕立て屋……いまだにこれはすべて夢なのではないかと錯覚するほどに素晴らしい生活を送れています」


 ……それは良かった。


 正直嬉しい。

 頑張って仕立て屋を建築した甲斐もあったというものだ。


「まあ……一つ不満があるとするなら……。不満というほどじゃございませんけれども、代表様が仕立て屋を訪れてくれないことですわね。感謝も込めていろいろと用意していますのよ?」


 あー……それは……申し訳ない。


 どうしてもいろいろと忙しいからな……住人の受け入れとかすると。


 暇が出来たら必ず行くから許して欲しい。


「うふふ……そう焦らずとも気が向いた時で構いませんわ。ですがその代わり……後ろの方々も連れてきてくださいませんこと?」


「? 私たちもですか?」


 戸籍を作り終わったのだろう、話していた俺たちに近づいてきていたリネイアとシエルにクトネーがそう言う。


「ええ! ええ! 天使族と悪魔族……リネイアさんとシエルさんとおっしゃいましたか?とても素晴らしい素材ですわ! 今からでも私どもの服を着ていただきたいほどに!」


 いきなりクトネーのテンションが上がった。

 服のこととなるとよく我を忘れるなこの淑女。


「え? あ、いえ服は別にあまりこだわってはいな――」


「こだわっていない!? それはもったいなさすぎますわ! こんなに良い素材ですのに! よろしければ今から服というもののすばらしさを教えて差し上げますわ! シエルさんも!」


「うぇ!? こっちにも飛び火してきた!? ……いやー興味はあるけど…ね? いつか……そういつかね?」


 そう言いながらシエルがチラチラと助けを求めるように視線を投げてくる。

 リネイアも同様だ。


 あー……クトネー。

 今はまだ戸籍づくりが残ってるからこのへんで。

 時間が出来たら仕立て屋に寄らせてもらうから。


 そう言って俺たち三人はそそくさとアラクネ区画を後にし。


 ……絶対ですわよーー!


 という声を聞きながら次の区画へ向かった。




「おう、代表さん! 話は聞いてる、好きに作っちまってくれ!」


 次にやってきたのはケンタウロス区画。

 迎えてくれたのは代表フリストル。

 開口一番そう言ってくれたその言葉に甘え早速作らせてもらう。


 名前:フリストル

 種族:ケンタウロス

 性別:女

 生年月日:-十四年、四月十二日

 家族構成:母


 ふむ……若いな!?


 フリストルも俺が思っていたよりだいぶ若かった。

 まだ十代って……十代で集団の代表やらなきゃいけないって……やらざるを得ないってことなのか?

 分かってはいたが、皆苦労してるんだな……。


 ……フリストル、不自由とかしてないか?

 何か欲しいものがあったりは?


 俺の口からついそんな言葉が漏れる。

 いやまあ、どうせ住み心地とか不満とかもあったら聞くつもりだったしな。

 別にいいだろう。


「え? う~ん……特にねぇな!」


 少しだけ考え込んだかと思うとフリストルはそう返して来た。


 本当か?

 俺に気遣う必要はないぞ?


「いや、マジでねーから大丈夫だよ代表さん。メシはうめーし、好き放題走り回れる場所もある。さらには運送も任せてもらえると来たもんだ。これで不満あるほうがおかしいぜ」


 フリストルはこっちも真っ直ぐ見ながらそう言ってくる。

 ……どうやら嘘ではないようだ。

 というかフリストルは嘘つくならだいぶ挙動が不自然になるだろうしな。

 短い付き合いでも分かる。


 そうか、それならいいんだ。

 でも……何かあったらその時は何でも言ってくれ。

 遠慮なんてしなくていいからな。


「ああ! もちろん! 代表さんも何かあったら言ってくれていいぜ? 例えば……背に乗せて欲しい、とかな?」


 そう言って豪快に笑うフリストル。

 正直言ってケンタウロスの背中には乗れるのであれば乗りたいが、乗るにしてももっと信頼関係を築いてからにしよう。


 俺たちがそんな話をしている間に、リネイアとシエルはケンタウロスたちの戸籍を作り終えてくれ。

 フリストルに別れを告げ次の区画へ向かった。




 仮拠点の方へ行っている者たちを除けば最後。

 マイコニンたちの戸籍を作りにマイコニン区画へ。


「いひひ……お好きにどうぞぉ……」


 ここでも快く了承。

 さっそく代表のニチャから戸籍を作る。


 名前:ニチャ

 種族:マイコニン

 性別:女

 生年月日:-五十四年、四月十二日

 家族構成:母、姉、妹


 ふむ。

 さっきは年齢の低さで驚いたが……こっちでは高さで驚く羽目になるとは。

 ニチャの見た目はどう見ても十代のそれ。

 まあ童顔でそう見えてるだけで二十代くらいだろうと思っていた俺の予想を覆す五十代。

 さすがに外見と年齢の不一致には慣れたが、慣れる前にこっち来てたら二度見どころか三度見くらいしたかもしれない。


「いひ……どうしたのぉ……? 問題でもあったぁ……?」


 いや、大丈夫だ、問題ない。


 俺は話題を変えるためにも、他の二人にもした質問をする。


「不満……? ないよぉ……特には……。明るくて優しい人が多いってくらいかなぁ……?」


 無いって言いながらも普通に言ってきたな。

 しかもどうにもならないことを。


「でも貰った区画はいい感じにジメっとしてて過ごしやすいしぃ……発酵食品? づくりも楽しいしぃ……いいことばっかりだよぉ……」


 そう言ってくるニチャの目はキラキラと輝いていた。

 いや比喩とかじゃなく物理的に。

 え? マイコニンって目が光るの?


「おぉっと……イケナイイケナイ……テンション上がりすぎて明るくなっちゃうとこだった……」


 別になってもいいのでは?


「ダメだよぉ……マイコニンはじめじめしてないとねぇ……」


 よく分からないこだわりだな。

 まあいい。

 それと話に出たから聞いておきたいんだが……発酵食品づくりはどうだ? 順調か?


「いひひひ……もちろん順調だよぉ……もう少ししたら最初の試作品を代表様に届けられるかも――」


 本当か!?


「わぁ……やっぱり食いつきすごぉ……」


 当然だ。

 発酵食品……醤油、味噌、納豆等々。

 日本人なら食いつかない方が嘘だ。


 それで具体的に何時、どれをどのくらい――。


 と、俺が勢い込んでニチャに詰め寄ったところで。


「代表様、マイコニンたちの戸籍、作り終えました」


「抜けはないよー。しっかり確認したからー……って、どしたの?」


 あ、ああ……終わったのか……こほんっ!

 いや、何でもない。

 ちゃんと仕事はこなさないとな。

 ニチャ、楽しみに待ってるから出来たらすぐに持ってきてくれ。


「いひひ……了解いたしましたぁ~……」


 その返答を聞いて大分後ろ髪を引かれながらも……ほんと、かなり引かれながらもマイコニン区画を後にする。

 そして――。




 ふぅ……完成したな、戸籍。


 俺は屋敷に戻ってきて一息つく。

 そう。

 戸籍台帳バージョン1は無事完成した。


 マイコニン区画を後にした俺は、そのまま創造神器の蹄鉄を使い、仮拠点へ。

 飛んで着いてきたリネイアとシエルと共にパパっと戸籍を作り終え帰ってきたのだ。

 ルシュには後日作ると言っていたのについ行ってしまった。

 発酵食品のことを聞いて上がったテンションが戻り切ってなかったな。

 ルシュには後で謝っておこう。


 それと、リネイア、シエル。

 戸籍づくりのサポート本当に助かった。

 ありがとう。


「いえ、補佐役……秘書として当然のことをしたまでです。お気遣いなく」


「お礼ぐらい素直に貰っとけばいいのにねー? というわけでどういたしましてー。お礼はお休みでいーよ」


 リネイア、シエルの言う通りだ。

 ホントに助かったからな。

 感謝を受け取ってくれ。


「代表様がそうおっしゃるのであれば……ありがたく」


 そしてシエル。

 申し訳ないがお休みはまた今度で頼む。

 もう一つ頼みたいことがあるからな。


「え~? もう一つ? 何~?」


 ああ、これは秘書というより代表としての二人への頼みだが……。

 会議に参加してほしい。


 俺はこれから種族の代表を集めた……代表会議を開く!


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