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ゆるっと街づくりin異世界~すべての種族が住む街を作れ!?~  作者: 下河スズリン


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42.違和感と倉庫の中にいたもの

 ぷにっ……ぷにぃっ!ぽよっぽよっ……!


 ある日の朝。

 そんな感覚を顔に感じながら起きる。

 もう慣れっこだからな。

 誰の仕業かすぐわかる。


 おはよう……ムイ。


 俺の顔の上で跳ねていたムイは挨拶を返すようにぷるぷると震える。


 第三次調査団を送り出してから二週間ほど経った。

 彼らは街に帰ってきていない。

 いやまあまだ期間が残っているのに帰ってくるってことは何かが起きたってことだから、帰ってこないってことは順調だってことだ。

 便りがないのが良い便り……これは少し違うか?


 そしてまあ街の方も順調だ。

 調査団の方に人を取られて少し作業量は減ったものの問題というほどではない。

 皆、調査団メンバーの穴を埋めようと頑張ってくれているしな。


 そんなことを考えながら伸びをする。

 俺の上からぽてっとムイが落ちた。

 ころころ転がって行き……再び俺に上ろうとぽよんぽよん跳ねだす。


 シロが長い間、街の外に行ってしまうのちょっと寂しいな、と俺が内心でそう思っていたのを察してくれたのか、こうやってちょこちょこスキンシップを増やしてくれている。

 正直とても癒されている。


 いやまあ、それでも今日みたいに一緒に寝てくれるのはルシュとハイラが俺の寝室には来ない夜だけなんだが。


 どうやって察知しているんだ?

 お陰で俺はもうムイがいない=ルシュかハイラが来る、と条件反射で理解できるようになってしまっている。

 いやそっちも嬉しいんだけどな。

 もちろん。


 そうやってムイとスキンシップを取っていると。


 こんこん……。


 と扉をたたく音が俺の耳に届く。


「代表様、朝から申し訳ございません。少々お耳に入れたいことがございまして……」




「作物が減っている?」


「いえ、かもしれない……という話でして」


 朝。


 訪ねて来たハイラが俺に持ってきた話は作物が減っているかもしれないという話だった。


 どういうことか、と詳しく話を聞く。

 すると、こんなことらしかった。


 この街には作物を保存しておく用の倉庫がいくつかある。

 結構な量が取れるしな。


 その倉庫の管理は今はエルフがやっている。

 まあ管理といっても搬入と搬出に関わるだけ、といった感じだが。

 ……うち、まだ紙とかないし……記録とか出来ないしな……。


 それで前回の食事会から……つまりおよそ三週間ほど前から、管理しているエルフが少し違和感を感じていた。


 その違和感が……作物が減っているかもしれない、ということ。

 だが自分の気のせいかもしれないし、そのうちこんな違和感も覚えなくなるかもしれない、とそう考え静観。


 だがどれだけ日が経っても違和感は消えず……今日、ハイラに報告した。


「申し訳ありません、代表様!こんなに大事なことを報告するのにここまで時間をかけるなんて……!」


 いやいや、大丈夫だって。

 話を聞く限り、明確になくなっているわけじゃなく、あくまで違和感どまりだったんだろ? むしろ褒めたいほどだ。


「……褒めたい……ですか?」


 ああ、自分の思い違いかもしれないのに報告するなんて、かなり勇気を必要としただろう。

 俺に怒る気はないよ。

 だからハイラもあまり強く言わないでやってくれ。


「……分かりました。寛大なお心に感謝いたします、代表様」


 ああ。

 それじゃあ早速だけど案内してくれるか? その倉庫に。




 そして。

 ハイラに案内されたのはエルフ区画の端っこにある倉庫だった。

 来たのは俺とハイラ、そしてムイ。


 倉庫の前には違和感を感じて報告したのだろうエルフがいる。


「あ……代表様!本日もご機嫌うるわしゅう!そっ……そのっ……報告が遅れまして誠に申し訳ありませんっ!」


 俺の姿を見たエルフが顔を青くして勢いよく頭を下げてくる。


 頭を上げてくれ。

 怒るつもりはない。

 むしろ感謝したい。


「かっ……感謝ですかっ……?」


 俺の言葉に頭を上げたエルフは困惑したようにそう言う。


 ああ、ただの違和感なのによく報告してくれた。

 ありがとう。


「いっ……いえっ……っ!過分なお言葉ですぅ~~っ!」


 エルフは泣き出してしまった。




 その後。

 泣き出したエルフを何とか落ち着かせて話を聞いた。


 新たに聞けたことは。


 違和感を感じた倉庫はこの倉庫のみ、他の倉庫では感じなかったということ。

 予想通り十人分とか二十人分とか……分かりやすく明確に減っているわけではない、仮に本当になくなっていたとしてもせいぜい一~二人分だろうということ。

 倉庫には閂が備え付けてあるが、それが触られた形跡はないこと、閂に小さい木の枝を挟んで調べたらしい。

 そして倉庫に抜け穴などは存在しないこと。


 ……意外といろいろ調べてたんだな。


 そのことを聞いてみると。


 どうやら違和感を覚えた当初まさか? と思って調べてみたらしい。

 だが調べてみても特に問題はなく……どうやらそれもあって報告が遅れたようだな。


 さて、どうするか。

 この三週間ほど何回も調べていたって言っていたし、いまさら俺が調べたところで何も出てこないだろう。

 そもそも本当に気のせいって可能性も……ないわけじゃない。


 まあとにかくまずは自分の目で確かめてみるか。

 そう考え俺は、皆を連れ倉庫の中に入る。




 倉庫の中は普通の木の小屋、といった感じだ。

 ところせましと作物が置かれていること以外は何の変哲もない。

 軽く見まわしてみるが、何も問題はないように見える。


 管理エルフの話によれば抜け穴などはなく閂を触った形跡もない。

 ということは部外者は入っていないということだ。


 ふむ。

 これは本当に気のせい説濃厚か……?

 そう俺が考えた時。


 俺の肩に乗っていたムイがくいくいと俺を引っ張る。

 その誘導に従い倉庫の奥の方へ歩いていく。

 そして倉庫の奥、作物で少し影になっているところにたどり着いた。

 もしかしてそこに何かあるのかと思いのぞき込んでみるも何もない。


 んん? 別に変わったところもないようだが……。


 俺がそう首をかしげていると。


 ムイが急に光り出した。

 いつも俺が採掘するときにそうするみたいに。


 ムイ? 別にそんな光源が必要なほどこの倉庫は暗くない……


 と、俺がそう言いかけたとき。


 俺が何もないと判断した倉庫の奥の影になっている場所。

 そこにボヤぁ……と何かの姿が浮かび上がってきた。


 驚いてそのまま見ていると……。

 その姿は完全に浮かび上がった。


 そこにいたのは……女の子だった。

 青みがかった銀髪に真っ黒な服。

 狐の耳と尻尾が生え、シルクハットも被っている。


 彼女は尻尾を抱き、ぐっすり寝ているようだ。

 寝息が聞こえる。


 ……いや……え?


 正直混乱から立ち直れてない。

 ムイが急に光ったと思ったら空間から染み出すように狐耳の女の子が出てきた……。

 異世界のもろもろに慣れてきた俺でもちょっと衝撃がデカい。


 だけどあまり呆けてばかりもいられないな。

 状況からして……作物が減っている違和感の犯人は目の前の彼女の可能性が高い。


 とりあえず話を聞かせてもらおう……。


 と、俺がそう考えたところで。


「代表様? 何かございましたか?」


 入り口近くに待機していたハイラと管理エルフが俺に近づいてきた。

 そして……目の前の彼女に気づく。


「っ!? これは……どういう?」


 ハイラも衝撃を受けている。


「えっ!? そんなっ……私が調べたときはこんな人……!」


 管理エルフも同じだ。

 こっちはより衝撃がデカいみたいだな。

 何度も調べたって言ってたし、それで見つけられなかったんだから衝撃も一入だろう。


 俺は二人にムイが光ったと思ったら、彼女が見えるように? なった、と説明する。


「……ふむ……なるほど。確証はありませんが……おそらく、彼女はこの倉庫に姿を隠す魔法を使って忍び込んでいたのでしょう。そしてその魔法の効果をムイ様が解除した、と。そういうことだと思われます」


 姿を隠す魔法か。

 魔法でやるステルスみたいなものか?

 それをムイが解除した、と。


 ムイの光ってそんな効果あったのか……?


 俺はムイをまじまじと見るもムイはぷよぷよと震えるだけだ。

 ムイも大概謎の多い生物だな……。


 まあいい。

 今はこっちだ。


 とりあえず……彼女に話を聞こうと思うんだが。


「賛成です、代表様。姿を隠す魔法まで使っていたとなると、彼女が犯人である可能性が非常に高い。ですので……」


 ああ、だからとりあえず起こして話を――


「もちろん、分かっております。縛り上げて裁きにかけましょう」


 聞く……って、え?

 裁き?


「はい、裁きです。代表様の作物に勝手に手を付け、己の欲を満たすなど大罪と言ってもいいでしょう。今すぐ連行いたします」


 いや……え? ハイラさん? ちょっと落ち着いて……


 と、俺がなだめる暇もなく、ハイラは倉庫にあったロープで犯人? をぐるぐる巻きにして連れて行ってしまった。


 ……なんだか大事になっちゃいそうだな……。


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