213.帰宅要請
「酷い目にあったのじゃ……」
自業自得では?
超巨大フロストフラワーを溶かして解決した翌日。
大量のシャーベットを食べお腹を壊し、丸一日部屋に引きこもる羽目になっていたリーアに俺はそう言う。
というかあれだけ食べてたのに一日で復活したのか……。
流石ドラゴン。
「まぁ、本来ならいくら氷を食べたところで腹を壊すことなぞ無いからな……」
俺の言葉にそう返してくるリーア。
だけどお腹壊してたよな?
「うむ……あの雪妖精のおかげでな」
ふむ。
どうやら本来であれば氷などいくら食べたところで体に影響は出ないらしい。
しかし昨日大量に食べたのは進化した雪妖精であるフィノウがその力を存分に注いだフロストフラワーのシャーベット。
その冷気はドラゴンの腹すら冷やし、破壊に追いやったらしい。
「大したものじゃ。ドラゴンの腹を下した雪妖精など彼奴が初めてであろう……」
しみじみとそう言ってくるリーア。
でも腹を壊したのはリーアが大量にバクバク食べたせいでもあると思うが……。
「仕方あるまい。美味だったのじゃからな。それに……あれほどの氷花は久々に見たのじゃ。つい高揚してしまうのも仕方あるまい」
ほう、なるほど。
流石は黒龍王というべきか、住民皆がかなり驚いていたあの巨大フロストフラワーも既知だったと。
「まあ流石に一日であそこまで成長したと聞いた時は驚いたがのう……大きさだけならあれ以上の氷花も見たことがあるぞ。真実かは知らんが、我の十代前の黒龍王は大陸と同じ大きさのフロストフラワーを見たとか。まあ流石に嘘じゃろうがな!」
そう言ってからからと笑うリーア。
腹の不調はもう完全に回復しているようだな。
にしても、大陸並みのフロストフラワー……か。
フロストフラワーはフィノウ曰く、咲き続ければ成長していくらしい。
つまり、溶けるような気温が訪れなければどんどん成長していくということだ。
もし……もしもこの異世界にも氷河期があったとしたら、大陸サイズのフロストフラワーもあながち嘘じゃないんじゃないか?
フロストフラワーがそれほどまでに成長するほど長く続く氷河期とか正直体験したくはないが、そこまで大きく育ったフロストフラワーはちょっと見たいような気もするな。
「ならばあの雪妖精に世話をさせればいいじゃろ。おそらく見られるぞ」
それやったら街が氷で閉ざされるからダメ。
リーアとそんな会話をしながら屋敷の中を巡っていく。
昨日のフロストフラワーが関係しているかどうかは知らないが、今朝になって寒さが一気に厳しくなった。
屋敷に訪れる住民たちも流石に減っている。
今来ているのは室内球技や遊戯にとてつもなくハマっている者たちだ。
数は減っているのに熱気はそれほど減っていない。
「我もやったがなかなか楽しい遊びじゃったな!」
ああ。
聞いてる。
凄く楽しそうにスパイクしてバレーのボールを破裂させたとか。
「うぬっ……あれはつい興が乗り過ぎて……」
打つたびにボール破裂させられたらすぐにボール無くなるから気を付けては欲しいが……まあ、少しくらいなら構わない。
また作ればいいしな。
「お主~!」
それでまあ、リーア以上に熱中している者たちも正直寒くなったら素直に家にこもっていて欲しいんだが……まあ、楽しみに水を差すことも無いだろう。
まだギリギリ雪も降ってないし……。
と、俺がそう考えたところで、窓から見える景色が変わる。
冬景色から……雪景色へ。
ちらちらと、少しずつだが雪が降り始めている。
うん。
前言撤回。
総員帰宅してくれ。
「意外と素直じゃったのぉ……」
本当にな。
帰宅要請を出した後、がらんとした玄関ホールを見ながら俺はそう言う。
雪が降り始めた後、俺は屋敷銃をめぐって遊びに来ていた住民に声をかけて回ったわけだが、俺の言葉に従って皆とてもてきぱきと帰宅してくれた。
ちょっとくらい渋る者もいるかな? と思ったが一人もいなかった。
きっちり片付けまでやっていったな。
皆が帰った後に外を見ると、さっきよりも雪が強まっているような気がする。
まだ本降りってわけじゃないが、これまでの経験から行くならこの後かなり雪は激しくなって行くだろう。
帰宅してもらう際皆には改めて不用意な外出は控えるようにと忠告しておいた。
まあ皆も、もうそれなりの経験はあるから大丈夫だとは思うが……。
「心配性じゃのうお主は。備えはしたのじゃから後はなるようになるじゃろうに」
まあ、そうなんだけど。
やっぱり心配しちゃうんだよ。
「心配などいらんと思うがのお、この街なら」
そんな会話をしながら、日々が過ぎ。
俺の予想通り、降り始めた雪はどんどんと勢いを増して、もう毎年恒例になっているが吹雪が街を襲った。
外からは囂々という音が鳴り響き、景色は真っ白で数メートル先も見通せない。
これ去年より雪の勢い強まってないか?
俺はそんなことを思いながら室内で過ごす。
外出は控えるようにといった俺が外出したらあれだしな。
そうやって過ごしていると……。
「主様、申し訳ありません。少々肌寒く……良ければ一緒に眠れればと……」
「代表様。良ければベッドを暖めさせていただきます」
「代表様ー翼で包んであげるー」
夜。
代表女性陣がかわるがわる俺の部屋に訪れるようになった。
口ではこう言っているがその目的は……うん。
あれ。
あれだった。
どうやら今年の秋……出産ラッシュがあった影響か、かなりかかっているみたいだ。
俺はやんわりと断ろうとしたが……うん。
押し切られて一緒にベッドに入ることになった。
まあこれはいい……ん、だけど。
えぇっと?
「あるじ~一緒に寝よ~」
「頭、自分もっ……」
「あー、その……まあ、なんだ……頼む」
「ふふ。真っ赤になっておかわいらしいことですわね。代表様。恐れながらどうぞお情けを」
「いひひ……私も……」
……なんか増えてない?
いや……ちょっと、まっ……。




