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チートな神様はハズレ姫。  作者: 秋春じゅん
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5.ノンビリな毎日の終了のお知らせ。

ハズレ姫と呼ばれる姫の、のんびり生活が終了を迎えそうな事件が!?

 

 今日は月に一度の父皇帝と兄イーサンと共にランチを楽しむ日だ。


 多忙を極める父皇帝と長男であり、皇太子であるイーサンはリゾレットとランチをとる日を毎月楽しみ公務に勤しんでいたのだ。


 最近、魔物の動きが活発になってきたとの報告が上がってきており、魔物の数を減らす事と調査の為の討伐隊から戻ってきたばかりのイーサンは久しぶりに可愛い妹姫のリゾレットと共にランチをとれる事をとても楽しみにしていた。


 父皇帝は魔法塔のルンダ魔法士から東の森の奥、アンドアン山地の麓から、最近に於いて魔素だまりが出来てきているとの調査報告を受け、調査隊派遣が必要か議会にかける案件か精査にかかり切りになっていた。


 それは東の森がこのルーシア皇都と隣接している為、早急な対処が必要となった為だ。 


 元々東の森は〝()()()()()の森〟と呼ばれ、人の使う魔力素の元となる魔素量が多い場所だった。豊富な魔素は森の恵みを豊かにし、森に暮らす動物や訪れる人々にその恩恵を与え、その代わりに人々は代々森の自然を守り、それは国の公務としても、民自身も森の自然を大切に守ろうと何百年も間、続いていたのだ。


 豊かな魔素は人の魔力も活発にし、身体の魔素の循環を良くする。森の奥に住むエルフ達も人より魔力量が多い為、〝魔素揺らしの森〟の恩恵を受け暮らしていた。


 そのエルフ達からエルフ達の住む村よりさらに奥、アンドリアン山地の麓から通常ではありえない程の量の、魔素溜まりが出来ているとの知らせをうけた。通常は魔素溜まりが出来ても、自然と森や山に吸収され長い間留まる事は無いという。


 だが今回の様にいつまでも魔素溜まりが消えずに、大きさも徐々に拡張しているという報告が上がってきたのだ。


 豊かな魔素も〝魔素溜まり〟が辺りに吸収されず拡大していく程の魔素量となると話は別で、それはやがて付近に住む魔物達が活発化し、新たな魔物の出現を呼んでしまうといわれてきた。それを放置し続けると魔物が増え、森から魔物が溢れ返る状態、つまり〝スタンビート〟が起きる事を意味する。父皇帝はその状況を恐れていたのだ。


 魔素溜まりを元の魔素量まで減らすには〝魔素散らし〟が必要不可欠だ。散らす方法は色々あるが、最近その有効方法として空の魔石を大量に集め、魔素溜まりに吸収させるという方法がよく使われている。


 魔法を使える者が日常的に多いルーシア皇国には自身の生活魔法を使う事もあるが、一般的には平民は魔力量があまり多くなく、その代わりの魔石は街の灯りやトイレや川の浄化、台所のコンロ等、その使用方法にはキリがない。


 ハズレ姫と呼ばれるリゾレットも魔石のおかげで生活に困る事はなかった。彼女は空の魔石に魔力を充填する事は出来ないが、気がつけば侍従や女官達が魔石交換や充填を行っており、皇族なので何不自由なく生活は出来ていた。


 彼女が平民で魔石を買えぬ程、貧しい生まれでなかった事だけは幸いといえよう。

 でなければのほほんとボウッとする暇も、惰眠を貪る事も出来なかっただろうからだ。





 ──しかし、その平穏な時が崩れる時は唐突にきた。




「ぎゃああぅぁああああっうぁああああだー!?」




 何の予兆も感じなかった。常に寝起きの悪いリゾレットが早朝に起きているはずがない。


 いつもの様にのん気に涎を垂らしながら、深い眠りに落ちいっている無防備なリゾレットは、ソレに備える事も立ち向かう準備すらも何も出来ていなかった。



 ──リゾレットは突如として身体中を貫く様な激しい痛みに襲われた。その激痛は体勢を変えて痛みを逸らす事も許されない。


 骨まで軋む様な、業火に焼かれる様な、剣で身体中を切り刻まれる様な、息を吐くのも絶え絶えに、到底人が耐えられるのか?と疑問に思う程の痛みに、突如としてリゾレットは襲われたのだった。




「あがぁぁぁ〜あ!うぐあうー!!」




 早朝のルーシア帝国。常春の国なのに、その日はいつもより少し気温が低かった。


 空は雲に覆われ、雨が久しぶりに降るのかと城のメイド長が若いメイド達に洗濯を控える様に伝える。そんな朝食の準備に追われるメイドや、主人達の支度の準備に取り掛かる侍従や侍女達の雑作の音を掻き切る様な叫び声に、誰も彼もが慌て出す。


「誰の声だ!!?」


 執事長のセインが慌てて、叫び声の主を皆に問いかけた。


「・・・方角的に!リゾレット様の部屋からではないですか?」


 侍女長のマインがセインに声をかけて、2階の廊下を慌てて駆け出す。


 まるで獣の雄叫びの様な、リゾレットの叫び声は屋敷中にこだまし、父皇帝も兄や姉達も慌てて飛び起きると、リゾレットの部屋を目指して走り出す。


 リゾレットの部屋の扉を開けると、既にリゾレット付きの侍女のアーシャがリゾレットの体を揺さぶり、リゾレットに声をかけていた。


「リゾレット様!どうなさったのですか!?どこが痛いのですか!?」


 家族がリゾレットの寝室に飛び込むと、手足をバタバタと動かしながら、口を大きく開けて喉の奥から叫び続けるリゾレットが居た。


「ギャァァァァ!痛い!グアァー痛い!苦しいー!ウガァァァァ」


 そこには今まで、呑気な表情しか見せたことの無いリゾレットの苦しみにもがく姿だった。目は血走り、身体中の血管が青く浮き出て真っ赤に腫れ上がる皮膚。全身が弓形に逸れたかと思うとのたうち回る様に回転する。


 そして、徐々に仄かに体が光だし、それと共に少しずつ辺りの気温が上昇していくのが分かった。


「何だ!どういう事だ!リゾレットはどうしたのだ!」


 長男のイーサンはリゾレットの体に触れようとしたが、威圧魔法をかけられたのかと思う程の圧がリゾレットから発していた為、触れることはおろか近付くことさえ出来なかった。


 やがて眩しい位に部屋中を照らす程光始めたのだ。



「・・・!これは!?・・はっ!・・ま・・まさか魔力暴走か!?」


 その症状は魔力量の多い者が子供の頃にかかる魔力暴走の前兆に似ていた。だがリゾレットは魔力の無いハズレ姫と呼ばれる姫だ。


 魔力暴走が起きる程魔力があるわけがない。

 慌てて呼ばれた魔法士のルンダが皇帝に進言する。


「これは!?確かに魔力暴走に似てはいます。ですが、魔力計を見ても魔力量が感じられません。」


 魔力のある者が感じとる魔力量は魔法を使う時であり、普段は魔力計で測るのが一般的だ。しかし、リゾレットの体から溢れる光や威圧感には魔力が感じられない。むしろ、魔力というより神聖力とか神に近い聖力の方が近いのかもしれない。普通の人は神力も聖力も感じる能力はない。怪我を癒す為に神殿で聖力を使われた時や光の回復魔法を使われた時に時々神力が混ざる時がある。


 この世界の神は気まぐれで、時々人々に神力を使われる時があるのだ。神殿で祈りを捧げた時や婚姻で神に誓いをした場合に祝福等で神の力のカケラを垣間見る時もあるという。



「イーサン!!離れろ!魔力なのか聖力なのか判らんが、何かの力の暴走かもしれん!皆のもの!この場から離れるんだ!・・・ルンダ!魔法塔に連絡して誰か優秀な魔法士を呼べ!!セイン!神殿に連絡して神殿長を呼べ!!」



 ──もはや誰も立っていられぬ威圧感と、目を開けられぬ程の眩しい光がリゾレットの体から溢れだす。


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