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「はい、では次は八軍昇格候補プレイヤーの試験を開始するので準備をお願いします」
霧ヶ峰の合図で全員がウインドウを操作してフィールドへと移動。
ヨシナリもさっさと移動を開始。 次は九軍からの昇格候補となるのだが、人数は50人。
一気に三分の一になったが、質としては向上している筈だった。
少なくともさっきの連中よりはマシだろうなと思いながら切り替わった風景を確認すると今度は山岳地帯。 連なった山々に底が見えない谷と起伏が激しい地形だ。
ヨシナリ、タヂカラオは前回と同じ立ち回りで問題ないだろうが、密迹はそうも行かない。
この辺りは霧ヶ峰の領分なので彼女に任せておけばいいだろう。
「動きとしては前回と同じでいいでしょう。 ヨシナリさんは空中、タヂカラオはフォロー。 密迹は地上から削って行ってくだ――」
「待ってください!」
割り込んだのは別のプレイヤー。 ソルジャー+使いで前回あっさり撃墜された奴だった。
プレイヤーネーム『アスレイ』。 ランクはC。
「今回は俺に前衛をやらせてください! 名誉挽回のチャンスを!」
「……私の指示に不満でも?」
「大ありです! 四軍でランカーの密迹さんはまだしも部外者を攻撃の要に据えるのはどうなんですか!? ここは正規のメンバーである俺達で充分でしょう!?」
霧ヶ峰の顔から表情が消える。
ヨシナリとしてもこのタイミングで大ありと言える胆力だけは評価したかったが、こいつマジかといった思いが強い。 主張としては分からなくはなかった。
部外者を人数にカウントせず、自分達だけで処理したいといった話は最初から言ってればあぁそうですかと言って引く事も考えたのだが撃墜された後でそれを言ってしまうと恥の上塗りといった感想しか出なかった。
それ以上に表情が完全に消えている霧ヶ峰が怖くてヨシナリは何も言えずに沈黙。
密迹はいつの間にか離れた位置に移動しており、タヂカラオは既に空中。
イソシンもヤバヤバと言いながら物陰へと入った。
あまりの動きの速さにアスレイも雰囲気を察したのか「あの、その」と取り繕おうとしていたが、それよりも早く霧ヶ峰が小さく笑う。
「分かりました。 では、あなたにお任せしましょう。 他に前に出たい人は居ますか?」
アスレイに乗っかろうとしていた者達は揃って沈黙。
「居ないようですね。 では、ついでに選ばせてあげますよ。 地上と空中、どっちがいいですか?」
「く、空中で」
「分かりました。 では、ヨシナリさんは地上で密迹のフォローを、タヂカラオは彼の援護をお願いします。 あぁ、無理はしなくていいです」
暗に過剰に援護しなくていいという事だろう。 恐らくは同じ条件でやらせるつもりだ。
タヂカラオは特に何も言わずに「了解」とだけ答えた。
ヨシナリとしては仕切りが霧ヶ峰である以上はどのようなポジションでも文句を言うつもりも逆らうつもりもなかったのだが、無表情の彼女を見て逆らうのは不味いと本能的に察してしまった。
恐らく逃げた面子はこれを知っていたのだろうと理解はしたが、せめて事前に警告して欲しかったというのが本音だ。
ヨシナリとしては密迹の戦い方に興味があったので、地上に振られるのは悪い話ではない。
話が纏まった所で試合が開始された。
「よろしくお願いしますよ」
「――――うむ」
ヨシナリはアスレイとポジションを交代するという事もあって密迹の後ろに付く形になる。
基本的に後ろの仕事は密迹の取りこぼしの処理と霧ヶ峰達後衛の守りとなるので前に比べるとかなり楽な立ち位置だ。
密迹が山肌を這うように移動を開始。 ヨシナリは少し離れた位置から追従する。
敵の動きだが――半数が空に残りは地形を利用して接近という形のようだ。
流石に前の相手と違って動きに冷静さがある。 手柄よりも勝利を優先しようといった姿勢が見て取れる。
それは布陣の形で顕著に表れており、アスレイとタヂカラオが上がった瞬間に一斉射撃が始まった。
実体弾による弾幕を張りつつ、上からは多弾頭ミサイル。 シックスセンスによる探知でロックオンされている事も分かった。 恐らくは狙撃手もいるだろう。
正面と上から圧をかけて本命は狙撃といった所だろう。
一応はどれでも決まれば撃破される攻撃という事で対処せざるを得ないレベルにしているのは流石だ。
――まぁ、物量差が五倍だからなぁ。
十軍の連中は何故これが出来なかったのか。
できたのなら物量で遠巻きに削るという分かり易く効果的な戦い方が出来たというのに。
空を見るとタヂカラオがミサイルをエネルギーリングで処理。
撃墜と遅延の二つの効果が見込める彼のリングはこういった場では非常に効果的だ。
守る優先順位としてはアスレイ、自分、霧ヶ峰達の順番で攻撃を捌いていた。
アスレイの機体はソルジャー+。 エネルギーウイングに武装は突撃銃と腰にグレネードランチャー。
霧ヶ峰から貰ったアップグレードキットのお陰で武装の名称を始め詳細まで参照できるようになっていた。
「これ滅茶苦茶便利だな」
既存装備に関しては情報が出回っている代物という事もあってかなり詳細に閲覧可能なのだが、このアップグレードキットの凄い点はジェネシスフレームの武装に関しても形状、エネルギー流動からある程度機能を推測してユーザーに提示してくれる点だ。
試しにタヂカラオのトガクシにフォーカスすると武装の名称などは「unknown」――要は不明と出るが、形状と検知された重力変動から機能を推測。
そして実際に使用しているのを観測すると情報が更新されている。
単なるライブラリーではなく、自前で情報の更新を行うのだ。
ヨシナリからするとヤバすぎると思えるレベルの代物だった。
初見の相手でもある程度の武装の正体が割れるのは大きすぎる。
霧ヶ峰もよくこれを寄越す気になったなと思わず震えてしまう。
逆の立場なら絶対に手放さないぞと思えるほどの便利機能だったからだ。
小さく振り返りギリギリで観測できる位置に居る霧ヶ峰にフォーカス。
武装、機体の形状から装備構成、機能を推測。 記録されていく。
滅茶苦茶面白い。 相手の正体を推測するというタスクが削られる利便性もそうだが、見ているだけで情報が集まる。 視野が広がったような感覚。
初めてシックスセンスを使った時に近いちょっとした万能感すら感じる程だった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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